社福経理20年が、お盆に自分で止めていた支払いの失敗ベスト3
社会福祉法人で会計とICTを20年やってきた経理実務家です。
8月は、事務室がいちばん薄くなる月だと感じています。現場は交代で回っていても、承認する人、確認する人、決裁を出す人の誰かが、日替わりで休みに入る。
同じことは年末年始にも起きます。ただ私は、お盆のほうが危ないと思っています。年末年始は世の中ごと止まるので、引き落としも提出物も日程が前にずれて、周りも「休みに入る前に」と動いてくれる。お盆は違います。金融機関は暦どおり開いていて、期日はひとつも動きません。全員が同時に休むわけでもないので、外から見ると平常運転にしか見えない。薄くなっているのは、こちらの事務室の中だけです。
今日は、私が夏に「やらかしかけた」支払いの話を3つ書きます。どれも実害が出る手前で止まったものばかりですが、止まったのは段取りが良かったからではなく、たまたま気づいたからでした。
なぜ「止めているのは自分のほう」と言えるのか
先に結論を書きます。夏の支払い事故は、相手が捕まらなくて起きるのではなく、「休みの人に回すのは気が引ける」とこちらが止めた分が、あとでまとめて返ってきて起きます。
支払いという仕事は、経理だけで完結しているように見えて、実は他人の時間をいくつも借りています。請求書を回してくる現場、内容を見る担当、承認する人、資金を動かす人。以前は、その誰かが席にいないだけで往復が2日も3日も伸びていました。いまは電子決裁で、相手が席にいなくても回せます。この20年で、いちばん楽になった部分かもしれません。
ただ、回せるようになった分だけ、回すかどうかを自分で決める場面が増えたとも感じています。休んでいる人に通知を飛ばすのは気が引ける。急ぎでもないし、戻ってからで十分だろう。そう判断して手元に置いたものが、夏は思ったより溜まります。しかも溜めた本人は、溜めている自覚が薄い。期日のほうは、こちらの遠慮とは関係なく進みます。
私が20年見てきた夏の事故は、道具が変わってもこの形をしています。ここから紹介する3つは、その代表例です。どれも私が、休みを取る前後の段取りを詰め切れなかった側の話です。
夏にやらかしかけた失敗ベスト3
① 「戻ってからでいい」と手元に置いた書類が、期日の2日前に出てきた
いちばん肝が冷えたのがこれです。
紙で回していた頃は、書類が承認の手前で止まっていても、こちらからは見えませんでした。机の上で数日眠っていたと気づいたのは、期日の2日前です。そこから代理の承認をもらって、支払いは間に合いました。
いまは電子決裁になって、この形の事故はかなり減りました。どこで止まっているかは画面を見れば分かるし、急ぎなら電話でもチャットでも届きます。20年前の自分に見せたい変化です。
それなのに、同じ「期日の2日前」を、私はもう一度やりました。今度は止まっていたのではなく、私が回していなかったからです。相手が休みに入る週だと分かっていたので、緊急でもない書類を通知で追いかけるのは気が引けて、戻ってからにしようと手元に置いた。そして、置いたこと自体を忘れました。
問題は、手元に置いた瞬間、その書類がどこの進捗にも載らなくなることでした。
回してさえあれば、少なくとも相手の画面には残ります。気を使って持っている書類だけは、自分の記憶にしか存在しない。道具は変わったのに、冷や汗をかいた場所はほとんど同じでした。
この件で学んだこと:気を使って手元に置くなら、「いつ回すか」を先に決めて書いておく。決められないものは、遠慮せずにその場で回す。
行政への提出物は抱えずに早く出す、と決めた話を少し前に書きました。相手が行政のときは抱えないと決めたのに、身内相手だと同じことをやっていたわけです。
② 残高の確認を後回しにして、資金移動が間に合わなくなりかけた
ふたつ目は、金額ではなく、お金がどこにあるかの話です。
引き落としの日は分かっていました。金額も合っていました。足りなかったのは、その口座に必要な額が入っているかを事前に見る一手間です。普段なら前日に見て、足りなければその日のうちに動かせば済む。夏はその「その日のうちに動かす」が効きませんでした。
問題は、残高の確認だけは、こちらの都合で後ろにずらせないことでした。
金融機関のほうは開いているので、動かそうと思えばその日に動かせます。ただ、移していいかどうかの判断は、私ひとりでは出せません。前日に気づいて、休んでいる相手に「これは急ぎです」と連絡を入れて、ぎりぎりで間に合いました。
情けないのは、ひとつ目では気を使って書類を手元に置いたのに、この件では休んでいる人の時間を平気で削っていることです。遠慮するかしないかを、そのときの緊急度だけで決めていました。急ぎでなければ気を使い、急ぎになったら気を使わない。相手からすれば、こちらの都合で休みを削られただけです。
残高は、見た瞬間に対処できるとは限らない。見てから動かすまでに誰の時間を借りるかまで含めて、はじめて残高確認になります。
この件で学んだこと:気を使うなら、気を使わずに済む前倒しとセットにする。夏の残高確認は前日ではなく夏に入る前。月末までの出入りを一枚に並べておけば、休んでいる人を呼び出さずに済みます。
③ 休み明けに処理が集中して、計上が1本抜けかけた
みっつ目は、休みの後に来ました。
休み明けの数日は、止めていたものが一斉に動きます。回さずに置いていた書類、戻ってきた決裁、遅れて上がってきた請求書、現場からの問い合わせ。私はそれを、いつもの順番でいつもの速さで処理しようとしました。
問題は、溜まった仕事を「量が増えただけ」と考えていたことでした。
実際には、量が増えると処理の順番が崩れます。急ぎの支払いを先に片づけているうちに、期日が先の分の記帳が後回しになり、月をまたぎかけた。気づいたのは締めの直前で、そこから遡って埋めました。
金額はどれも小さいものでした。少額の経費は翌月精算に回してよいと決めているので、金額だけ見れば急ぐ話ではありません。怖かったのは、抜けたことに自分が気づいていなかったほうです。翌月に回すと決めて回すのと、忘れて残っているのは、見た目が同じで中身が違います。
急ぎから片づけるのは正しいのですが、急ぎでないものが消えるわけではない。休み明けに要るのは速さではなく、残っているものが見える状態でした。
この件で学んだこと:休み明けの最初の30分は、処理ではなく棚卸しに使う。何が溜まっているかを紙かExcelに書き出してから手をつける。
締めを軽くするために手放した作業は、別の記事にまとめています。
3つのやらかしかけから決めた、夏前の3つの決めごと
3回ヒヤッとして、夏に入る前にやることを決めました。どれも1時間あればできることばかりです。
ひとつ目、8月の期日を、1枚のカレンダーに落とす。支払い、引き落とし、提出物を日付順に並べるだけです。並べると、自分が休む週にいくつ期日が乗っているかが一目で分かります。分かれば、前倒しするか、後ろにずらすかを選べます。
ふたつ目、「休み中でも回していい」の線引きを、休みに入る前に決めておく。期日まで何日を切ったら通知を飛ばしてよくて、どこからは戻ってからでいいのか。私は「3日を切ったものは休み中でも回す」と決めました。線が引いてあると、気を使って手元に置く判断そのものが減ります。
みっつ目、自分の不在は、日付ではなく「期日」で伝える。「何日から何日まで休みます」ではなく、「この支払いは何日が期日なので、それまでにこれをお願いします」と伝える。休みの日付だけを伝えていた頃は、戻ってきたら何も進んでいませんでした。
この3つを夏前にやるようになってから、休み明けの最初の1時間の空気が明らかに変わりました。
それでも、経理が夏に休む理由
ここまで3つ並べておいてなんですが、私は「経理は夏に休みにくい」とは思っていません。むしろ逆で、休むと決めるから段取りが直る、と感じています。
自分がいなくても回る形は、自分が抜ける予定を入れない限り、作られないままでした。
席にいるあいだは、手元に置いた書類も残高の不足も、その場の勘で拾えてしまいます。拾えるうちは仕組みになりません。休むと決めて初めて、どこが自分の記憶に依存しているかが見えてきます。期日カレンダーも「休み中でも回していい」の線引きも、私が休みを取ると宣言した後に慌てて作ったものです。慌てて作ったわりに、いまも使っています。
夏の段取りは、休むための準備であると同時に、来年の自分への準備でもあると思っています。
おわりに
道具が良くなって、席にいない人にも仕事を回せます。それでも夏に肝が冷えるのは、回せるかどうかではなく、回さないと決めた分を数えていないからでした。
「遠慮して止めた分は、休み明けの自分に返ってくる」
気を使うこと自体は、たぶん間違っていません。ただ、気を使った分は記録に残す。まずは8月の期日を1枚に書き出すところからで十分だと思います。私も毎年、書き出してから「これは無理だ」と気づいて前倒ししています。
無料のExcelテンプレも置いています
社福経理の現場で「あったら助かる」と感じたExcelテンプレを、無料で配布しています。ダウンロードはnoteの記事から直接できます(登録不要)。
拠点別予実管理表
給付費突合せ管理表
月次決算チェックリスト
給与計算チェックシート
資金収支予算管理表
このうち資金収支予算管理表は、資金収支ベースで予算の消化状況を追うものです。夏前に一度この数字を見ておくと、8月にどれくらい出ていく月なのかの見当がつきます。
