Excel職人20年が、AIで本当に楽になった社福経理の作業ベスト5
社会福祉法人で会計とICTを20年やってきた経理実務家です。
正直に言うと、AIが出てきた当初は「Excelが20年で積み上げてきたものを置き換えられるのか?」と懐疑的でした。でも、実際に1年使ってみて、考えが変わりました。
AIは「Excelの代わり」じゃない。Excelの隣に置く相棒でした。
任せていい作業と、絶対に任せちゃダメな作業がある。それを切り分けてから、本当に楽になりました。今日はその5つを、現場目線でまとめます。
AIに「任せていい軸」と「任せちゃダメな軸」
最初に結論を書いておきます。
社福経理の仕事って、大きく分けると2種類あります。
① 大量の文書から必要な情報を探す・読み解く作業(加算の手引き、通知文書、自法人の規程類、議事録、過去のExcel)。ここはAIが圧倒的に強い。
② 数字を1円単位で合わせる作業(仕訳、月次決算、給付費突合、加算の実績集計)。ここはAIに任せちゃダメ。最終的な責任は人間が持つ世界。
この線引きをすると、何をAIに任せていいかが見えてきます。
経理は「1円でも間違えたら全部やり直し」の世界です。でも、その前段の「情報を整理する」工程には、AIを思い切り使っていい。むしろ使わないと損です。
ここから、私が実際にAIに任せて「これは本当に楽になった」と感じた作業を5つ紹介します。
本当に楽になった社福経理の作業ベスト5
①「この加算、うちの法人に該当する?」をNotebookLMに聞く
社福経理の最大の苦行のひとつが、加算の手引きを読み込む作業です。
処遇改善加算ひとつとっても、令和8年度の手引きは300ページ近い。さらに障害福祉や介護のサービス種別ごとに別のQ&A、自治体からの追加事務連絡、改定の経過措置……読むだけで半日が消えます。
ここをNotebookLMに任せました。
具体的には、厚労省の処遇改善加算の手引きPDF、自治体のQ&A、自法人の現行加算届出書をまとめてNotebookLMにアップロードして、「うちの法人はこの加算に該当するか?該当する場合の要件と必要書類は?」と聞く。
すると、該当箇所を引用しながら答えてくれます。300ページの中から3行を見つける作業がなくなりました。
時間の節約というより、「読み飛ばしの不安が消えた」精神的な余裕の方が大きかったです。
② 前任者から引き継いだ「宝探しExcel」をChatGPTに解読させる
経理職あるあるで、前任者のExcelが意味不明というのがあります。
色分けの意味が書いてない。コメントもない。SUMIFが3段ネストになっている。シート間参照が複雑に絡み合っている。「これを見れば分かる」と言われて渡されたファイルが、開いたら宝探しだった――何度経験したかわかりません。
ここはChatGPTやClaudeが優秀でした。
Excelをコピー&ペーストして、「このシートで何を計算しているか説明して」「セルC15の数式が何をしているか日本語で書いて」と聞くと、解読してくれます。
特に重宝するのが、色分けセルの意味を逆推定してもらう使い方。「赤いセルに共通する数値の特徴は?」と聞くと、「マイナス値、または前月差が10%以上のもの」など、ルールを推測してくれます。
宝探しに半日かかっていた作業が、30分で終わるようになりました。
③ 理事会議事録から「経理がやること」を抽出させる
理事会・評議員会の議事録、長くないですか。
10ページの議事録の中に、経理として動かないといけない事項が3行だけ埋まっている、ということがよくあります。「来期から〇〇拠点を新設」「△△の寄付を受け入れ」「××の積立金を取り崩す方向で検討」――この3行を見落とすと、後で詰みます。
ここをClaudeやNotebookLMに任せました。
議事録をアップロードして、「この議事録の中で、経理担当者がアクションを取る必要がある事項を箇条書きで抽出して。締切がある場合は明示して」と頼む。
10分かけて読んでいた議事録が、3分で要点だけ拾えるようになりました。
もちろん最終チェックは自分でしますが、「見落としゼロ」を担保する保険としてとても強い使い方です。
④ 自法人の規程を読み込ませて「この処理の根拠は?」を即答させる
社福経理は規程ベースの判断が多いです。経理規程、給与規程、旅費規程、減価償却規程、退職給付規程……何かの処理をするたびに「これって規程ではどう書いてあったっけ?」となります。
ここもNotebookLMが効きます。
自法人の規程類を全部NotebookLMにアップロードしておけば、「この出張費の処理、規程上どこに根拠がある?」と聞くだけで、該当条文と一緒に答えてくれます。
監査の場面でも強い。監査人から「この処理の根拠は?」と聞かれたときに、規程のどこに書いてあるかを即答できます。
「探す時間」がゼロになるだけで、月単位で時間が浮きました。
この使い方を監査対応に広げた話は、こちらに書きました。
⑤ 科目判断の壁打ち相手にする
「これ、租税公課?それとも法定福利費?」「この補助金、サービス活動収益でいいの?特別収益?」
5分悩んで、結局は前年の仕訳をコピペで決着――社福経理の科目判断、半分は伝統芸能でできている気がします。
ここをChatGPTに壁打ちさせるようになりました。
「社会福祉法人会計基準で、〇〇という性質の支出を計上する科目は?」と聞いて、根拠と一緒に答えてもらう。完全に鵜呑みにはしませんが、「自分の判断の裏取り」として使うと、迷う時間がほぼゼロになります。
科目判断は一見些細な作業ですが、月次でこれが10〜20件発生するので、積もると大きい。年間で数十時間は浮いた感覚です。
逆に、絶対AIに任せない3つ
任せていい作業を5つ紹介しましたが、絶対に任せないと決めている作業もあります。
ひとつ目は、仕訳の確定。AIに下書きはさせても、計上ボタンを押すのは必ず人間です。
ふたつ目は、給付費・加算の実績集計。1円単位で正しいことが要求される世界で、AIの「だいたい合ってる」は許されません。
みっつ目は、監査人や所轄庁への回答。AIが生成した文章をそのまま提出すると、聞かれた瞬間に根拠が答えられなくなります。
経理は最後の砦です。AIに任せられないラインは、最初に決めておくのが鉄則です。
ここで紹介した使い方を、そのままコピペできるプロンプトにしてまとめたものはこちらです。
今すぐ試せる3ステップ
これからAIを経理業務に取り入れたい方へ、最初の3ステップを書いておきます。
ステップ1:NotebookLMの無料アカウントを作る(Googleアカウントだけで使えます)
ステップ2:自法人の経理規程・直近の処遇改善加算の手引き・自治体のQ&Aの3点を読み込ませる
ステップ3:「来月の月次決算で気をつけるべきことを教えて」と聞いてみる
たぶん、想像していたより具体的な答えが返ってきます。そこから「あ、こういう使い方ができるのか」が分かってきます。
無料のExcelテンプレも置いてます
20年の現場経験から、社福経理が「あったら助かる」と感じるExcelテンプレを無料で配布しています。
・拠点別予実管理表
・給付費突合せ管理表
・月次決算チェックリスト
・給与計算チェックシート
・資金収支予算管理表
AIで楽になった作業の「土台」になるExcelたちです。ダウンロードはnoteの記事から直接できます(登録不要)。
おわりに
AIを使い始めて1年、Excelが嫌いになったかというと、まったく逆でした。
Excelに任せていた「考える時間」をAIに振り分けたら、Excelで本来やりたかった「判断と設計」に時間が戻ってきた。
これが、20年Excelをやってきた経理が、AIで本当に楽になった感覚です。
社福経理は、まだまだ「人がやらないといけない」仕事の塊です。だからこそ、任せていい部分はAIに渡して、人にしかできない部分に集中したい。
そう思っています。
