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監査対応が憂鬱だった社福経理20年、AIで楽になった準備ベスト3

社会福祉法人で会計とICTを20年やってきた経理実務家です。

算定基礎届と源泉所得税の納期特例、7月の山をひとつ越えると、次に机に届くのが監査関係の通知です。決算が固まってほっとしたのもつかの間、所轄庁の指導監査や会計監査の日程が見えてくる。この「監査」の二文字を見た瞬間の、胃のあたりが重くなる感じ。20年やっても、正直まだ少しあります。

今日はその監査対応の準備について、AIを使うようになって本当に楽になったものを3つ、自分の実感として書きます。


なぜ「監査対応はAIで楽になる」と言い切れるのか

最初に結論を書きます。

監査対応の憂鬱の正体は、監査当日ではなく「準備」にあります。

もう少し分解すると、憂鬱の中身は2つです。ひとつは、規程や通知や証憑を「探す時間」。もうひとつは、「聞かれて答えられなかったらどうしよう」という不安。監査人の質問そのものより、この2つが監査シーズンを重くしていました。

そして、この2つはどちらも「大量の文書から必要な情報を探す・読み解く」作業です。以前の記事でも書いたとおり、ここはAIがいちばん得意な領域です。逆に、数字を1円単位で確定させる作業はAIに任せません。監査資料の数字はあくまで人間が責任を持つ。でも、その手前の「材料を揃えて、説明できる状態を作る」工程は、思い切りAIに任せていい。

監査は、疑われる場ではなく説明の場です。説明の材料集めがAIで軽くなると、監査対応は別の仕事になります。ここから紹介する3つは、その代表例です。

AIで楽になった監査準備ベスト3

① 規程を読み込ませて「根拠は?」に即答できる状態を作る

監査でいちばん冷や汗をかくのが、「この処理の根拠は?」という質問です。

経理規程、給与規程、旅費規程、減価償却、退職給付。頭では分かっているつもりでも、「規程の何条に書いてあるか」まで即答できるかは別の話で、以前は監査の前の週に規程ファイルを一式めくり直すのが恒例行事でした。半日仕事です。

いまは、自法人の規程類をまとめてNotebookLMに読み込ませてあります。「この出張費の処理、規程上の根拠はどこ?」と聞けば、該当条文つきで返ってくる。監査前には「監査人になったつもりで、規程との整合を突っ込んでください」と模擬質問までしてもらえます。

監査対応は記憶力の勝負ではなく、「すぐ引ける状態」を作れるかの勝負でした。規程を全部覚えている必要はなくて、根拠にたどり着く速さがあればいい。ここに気づいてから、規程まわりの憂鬱はほぼ消えました。

この使い方の元になった話は、こちらに書いています。

② 決算書の前年比から「想定問答」を作らせる

監査人が必ず聞くことのひとつが、「前年より増えていますね。理由は?」です。

未収金が増えた、事務費のこの科目が跳ねた、引当金の残高が動いた。理由はちゃんとあるのに、当日その場で記憶をたどると、しどろもどろになる。答えられるはずの質問に詰まるのが、いちばん悔しいやつです。

いまは、決算書の前年対比(数字は法人が特定されない形に整えたもの)をAIに渡して、「監査人が質問しそうな項目を10個挙げて。増減率が大きい科目を優先して」と頼みます。出てきたリストに自分で回答を1〜2行ずつ書き込むと、A4一枚の想定問答メモができあがる。

このメモが手元にあるだけで、監査当日の心拍数がまったく違います。不安の正体は「何を聞かれるか見えないこと」なので、質問が先に見えていれば、監査はただの確認作業になります。

決算の数字の整合チェックそのものは、こちらの記事の後半にまとめています。

この想定問答メモを、その年限りで終わらせず毎年の台帳にしたものを、実物ごと置きました。


③ 事前提出資料の一覧を「潰せるチェックリスト」に変えさせる

指導監査の通知に付いてくる、事前提出資料の一覧。あれを見た瞬間が、監査準備でいちばん気が重い瞬間かもしれません。

議事録、規程類、決算書類、契約書、通帳の写し。項目は多いのに、書式はただの羅列で、どこまで集めたか分からなくなる。以前は一覧に手書きでチェックを入れながら、「これ誰が持ってたっけ」を思い出す作業に時間を溶かしていました。

いまは、その一覧をAIに渡して、「提出書類のチェックリストにして。担当・保管場所・準備状況の列をつけて」と頼みます。数分でExcelに貼れる形が返ってくるので、あとは埋めて潰していくだけ。ついでに指導監査のガイドラインを読み込ませておくと、「この資料はどの指摘事項と対応しているか」まで整理できます。

書類集めを「思い出す作業」から「潰していく作業」に変える。これだけで、準備期間の消耗が目に見えて減りました。

そもそも私が監査対応にここまで向き合うようになったのは、会計監査人監査が入って苦労した経験が原点です。その話はこちらに書きました。

監査準備で決めた、自分の3つのルール

AIに任せる範囲が広がった分、線引きも明確にしました。

ひとつ目、提出する資料の最終確認は、必ず自分の目でやる。AIが作ったリストや要約をそのまま出すことはしません。監査で説明する責任は、私にあります。

ふたつ目、個人が特定される情報はAIに貼らない。規程や通知文書のような「文書」を読ませるのはいい。利用者や職員の個票・名簿の類いは入れない。ここは便利さより先に守るところです。

みっつ目、準備の途中で「答えられない質問」が見つかったら、むしろ喜ぶ。想定問答を作っていて詰まった箇所は、当日指摘される前に見つかった穴です。準備段階の穴は、いくら見つかっても痛くありません。

このルールにしてから、監査準備は「怖い作業」ではなく「淡々と潰す作業」になりました。

実際に使っている監査対応まわりのプロンプトは、こちらにまとめています。

それでも、監査が嫌いじゃなくなった理由

監査の話を3つも書くと、「やっぱり監査は大変」と読めてしまいそうですが、私の実感はむしろ逆です。

監査は、年に一度、自分の仕事を棚卸しできる機会でした。

説明できる状態を作る過程で、自分の理解が曖昧だった処理や、なんとなく前年踏襲していた判断が必ず見つかります。以前はその発見が「準備の苦役」に埋もれていました。AIで苦役の部分が軽くなったいま、棚卸しの価値だけが手元に残った感じがしています。

監査対応が憂鬱だったのは、性格の問題ではなく、道具の問題だったのかもしれません。

おわりに

「探す」「読む」「備える」をAIに渡すと、監査は怖い場から、ただの説明の場に変わります。数字に責任を持つのは変わらず人間ですが、そこに至るまでの消耗は、もう抱えなくていい時代になりました。

「監査の憂鬱は、準備の見えなさから来る。見える化できれば、半分は消える。」

20年目の監査シーズンを前にした、いまの実感です。今年の監査が終わったら、実際に聞かれた質問と想定問答の答え合わせも、また書いてみたいと思っています。

無料のExcelテンプレも置いています

社福経理の現場で「あったら助かる」と感じたExcelテンプレを、無料で配布しています。ダウンロードはnoteの記事から直接できます(登録不要)。

  • 拠点別予実管理表

  • 給付費突合せ管理表

  • 月次決算チェックリスト

  • 給与計算チェックシート

  • 資金収支予算管理表

監査準備の土台になるのは、結局ふだんの月次の積み重ねです。月次決算チェックリストあたりから、よかったら使ってみてください。


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