ドビュッシー「喜びの島」リズムでの感情表現って意外と難しい。ヴェルナー・ハース
作曲者:ドビュッシー
曲名 :L'Isle joyeuse 「喜びの島」イ長調
演奏者:ヴェルナー・ハース
この曲は、色々な演奏を聴いたけども、
「喜び」という感情をどう解釈して表現するかが
難しい曲だなと思った。
Debussy: L'Isle joyeuse
ヴェルナー・ハースのこの演奏は再生数から見るとそれほど評価されていないのかもしれない。だけどもこの演奏は大事なことがちゃんと出来ている。それは愛からくる「喜び」の表現ができているということだ。
この演奏は良く聴いていないと分かり難いかもしれないけども、喜びを縦軸つまりリズムで表現している。
だけども他の人たちの演奏では横軸の旋律を強くして、喜びを表現しようとしてる。確かにこの作品はドビュッシーの初期のものだということもあって縦軸のリズムじゃなくて横軸の旋律で喜びを表現するのが時代的な解釈から言っても正解じゃないかと考えるのかもしれない。だけどこの演奏ではハースは横軸よりも縦軸のリズムを強く使って喜びを表現している。そしてそれがこの曲の場合はとてもマッチしてるように思える。
ドビュッシーと関わりの深いサティの「ジムノペディ」を例にあげるとリズムというのは精神状態を表現するのに向いている。そしてあの曲は旋律で感情を表現している。だからこの曲でも精神状態をリズムで表現して感情の機微を旋律で表現するのはベルガマスク組曲と同時代の作品であろうと間違いではないのではないかと思う。
この曲は横軸の旋律の表現だけで喜びを表現しようとすることが多いけども、そこまで上手く横軸だけで表現できる構造になっていないのだと思う。だからリヒテルの演奏でさえ喜びという感情を上手く感じることができなかったのだと思う。いくら頑張っても旋律だけでは喜びが弱いのだ。
だからハースは縦軸のリズムを強くして喜びの表現を強化しようと考えたのではないだろうか。リズムは旋律ほど単純な分かりやすさが出ないけども、喜びを表現するには感情である旋律と共に精神を揺さぶる強いリズムが必要だと考えたのではないだろうか。
ある意味でこの曲はドビュッシーの感情を表現しようとした初期作品と言えるのかもしれない。ジムノペディのようにわかりやすいものではまだ無いからだ。だけども立体表現へと向けた中期への実験作だったと考えると貴重なものなのではないだろうか。
音楽の記事を書いているとショパンにはショパンのベートーヴェンにはベートーヴェンの音楽の仕組みがそれぞれにあることを思い知らされる。ドビュッシーの音楽の仕組みなんて考えるのは楽しいけれど、なかなかにして難しい問題だなと思う。
