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【地方創生 番外編⑦】1ヶ月の空白!さんしん班が挑む、仕込みの秋と「おばぁ」の懐

◆ 完璧な「正解」を捨てる衝動(前回のあらすじ)

さんしん班は、一度、完璧な答えを手にしていた。

「沖縄キクラゲ」。すでに100点満点でビジネスが自走している、超優良資源だ。手離れがいい。リスクが少ない。誰が見ても、賢明な選択だった。

その正解を、彼らは手放した。

代わりに選んだのは「読谷山花織(地元ではゆんたんざはなうい)」。自分たちが最も大きく貢献できる余白がある、そちらの道だった。

「自分たちが応援したい」という、理屈を超えた情熱。これこそが、彼らの魂に深く刻まれた変化の証明である。


◆ 議事録の最下部に潜む「一抹の不安」

しかし、運命の地域資源決定という大きな山を越えた直後、提出された議事録の最下部に記された一文が、指導者である私を微かに不安にさせた。

「次回会議日時:2026年9月11日(予定)」

8月12日に読谷山花織への注力を正式に決定してから、次の公式な会議まで、実に丸1ヶ月の空白がある。

チャットグループのリアルタイムな動向は見えない。地域資源が決まったことでホッとしてしまい、この貴重な期間、彼らの足が止まってしまっているのではないか。そんな心配が頭をよぎるのも無理はない。

しかし、この「空白の1ヶ月」のスケジュールを冷徹に紐解くと、これが停滞などではなく、むしろ爆発的な自走を可能にするための、極めて重要な潜伏・仕込み期間でなければならない理由が見えてくる。


◆ 牙を研ぐ精鋭たち。水面下で走る専門性の掛け算

さんしん班のメンバーの顔ぶれを見れば、彼らが「ただ休むだけの大人の集団」ではないことが分かる。

旅行業界のMICEマネージャー、自治体の役場係長、通信インフラのネットワーク課長、ITシステムのスペシャリスト、インフラ・建設業界の管理職、金融業界のアナリスト、物流業界のロジスティクス課長。各業界の最前線で「動くこと」を叩き込まれてきた精鋭たちだ。

週1回の定例会議という形式をあえて脇に置き、1ヶ月の期間を空けたのは、全員で集まってダラダラと議論する時間を排し、それぞれの専門領域で圧倒的なスピードをもって「個のタスク」を完了させるためだ。彼らはすでにパラレル(同時並行)で動き出している。

デジタル・SNS担当は、Instagramのビジネスアカウント化によるデータ分析や、消費者を「当事者」として巻き込むアンケートフォームの設計を進めているはずだ。

新商品企画担当は、制作時間や材料を抑えつつ若年層に届く日常小物のアイデアを練り上げている。

IT・システム担当は、1回1時間・10名という伝統工芸のキャパシティ課題を解決すべく、待ち時間を有効活用するAIやタブレットを活用した「学習型エンターテインメント」の設計図を引いている。

商工会やメディア、地元の飲食店やホテルとの連携をにらんだプロモーションや見積もり取得も、この期間に進んでいるだろう。

そして、講師である私からは、すでに明確な基準を投げかけてある。

「イベント実施チェックリストの『仕込み期』に基づき、開催場所の仮選定を、9月11日の次回会議までに、組合側にぶつけられる具体案としてスピード感を持って仕込んでいきましょう」

彼らがこの1ヶ月でやるべきことは、山のようにある。


◆ 心で惚れ込んだ者だけが仕掛ける、9月の戦略

優秀なビジネスパーソンほど、現場に入ると分析者の顔になり、「何か困っていることはありますか」と理屈で課題を探しに行ってしまう。

しかし、さんしん班はすでに、平均年齢70歳、最高齢93歳という職人たちの「みんな楽しいから、この織りが好きだから」という笑顔と情熱に、心で惚れ込んでいる。

それを証明するのが、彼らが9月中に開催を計画している「懇親会」の存在だ。

これは単なる飲み会ではない。

公式の会議体では決して出てこない、職人たちの「本当のこだわり」や「もし何でもやっていいなら挑戦したいこと」という、声なき声をリラックスした空間でじっくりと「聴く」ための、最大の戦略的リサーチの場である。

おじぃやおばぁの懐に飛び込み、徹底的に心を開いてもらうこと。これこそが、彼らの提案を「よそ者の机上の空論」から「自分事」として受け止めてもらうための土壌を創り出す。

過去の塾生の中には、研修終了後の打ち上げの席で、組合からサプライズで感謝状を贈られて男泣きした者もいた。この懇親会は、その固い絆の第一歩となるはずだ。


◆ 9月11日、仕込みの答え合わせへ

9月11日。第4回講義の日は、単なる「座学の日」ではない。

午前中は地域活性化プラン前半部分の執筆に向けた講義に加え、外部講師による商品開発のレクチャーが行われる。そして午後は、フィールドワークへ繰り出す者と、残ってプラン作成に没頭するメンバーに分かれての、実践的な作業が待っている。

さんしん班の時計は、止まってなどいない。

10月14日の「プラン前半合格」という最初のマイルストーン、演習を伴う10月の合宿講義、そして実証実験(イベント実施)に向けて、この空白の1ヶ月でどれだけ実務家としての牙を研ぎ、おばぁたちの懐に飛び込めたか。

彼らが水面下で仕込み続けた具体案を引っ提げて、9月11日の第4回かりゆし塾へ戻ってくる瞬間を、指導者として、静かに、しかし熱い期待を込めて待っている。


議事録の空白は、不安ではありませんでした。

平均年齢70歳、最高齢93歳の職人たちの懐に、彼らがどこまで飛び込めるか。

その答えは、まだ誰にも分かりません。

9月11日、さんしん班が何を持ち帰ってくるのか、私も楽しみに見届けたいと思います。

本日もお読みいただきありがとうございます。

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