忘れもの大王は一夜にしてならず ~親の話~
息子の検査結果を聞いたとき、
私は心のどこかで、こう思ってしまった。
「ああ、やっぱりね」
——いや、
「やっぱり」と思っちゃいけないのかもしれないけど。
でも正直に言うと、
ちょっとだけ、腑に落ちた。
なぜなら——
忘れもの大王は、息子だけの話じゃないからだ。
私もそうだし、
元夫は、もっとそうだった。
■ 私も忘れもの大王である
私は昔から、ちょっとした“やらかし”が多い。
スーパーのカゴを家まで持って帰ったのは、
さすがに人生で一度だけだが、
スーパーに車を置いて歩いて帰ることなら、
年に一回くらいはやっている。
買い物に行けば、
お目当てのものだけ、きれいに買い忘れてくる。
ある意味、才能だと思う。
■ 上位互換の元夫
元夫は、忘れもの“大魔王”だった。
失くすから、という理由で
ビニール傘しか持たないような人だった。
——いや、そこじゃない。
問題はそこじゃない。
元夫は公務員で、
責任の重い仕事をしていた。
なのに、酔って、よくカバンを置き忘れた。
この時代、カバンを失くすというのは
「うっかり」で済まない。
・責任問題になる
・ネットで晒される可能性がある
・家族ごと巻き込まれる
けっこう洒落にならない。
私は何度も言った。
「酔って帰るくらいなら、泊まったほうが安全だし安い」
でも、何度言っても、
元夫は酔って帰ってきた。
そのたびに、私は心臓が縮む思いをした。
——そしてこれも、
離婚の理由のひとつになった。
■ 息子の検査結果を見て、腑に落ちた
息子の検査結果では、
言語理解と作業の数値に、40以上の差があった。
生きづらさが、きれいに数値になっていた。
医師は通いやすい病院も紹介してくれたけれど、
息子はあまり乗り気ではない。
診断結果の紙も、
ポケットに突っ込んで、そのままどこかに消えた。
——うん、知ってた。
できることは、とことんできる。
できないことは、とことんできない。
そういう特性なのだと思う。
息子を見ていて、
元夫を思い出して、
自分の過去を振り返って。
そして思う。
ああ、これはきっと——
“蛙の子は蛙”なんだな、と。
できないことは、なかなかできるようにならない。
人の倍以上、時間がかかる。
何度もつまずくし、
忘れるし、
二度寝もするし、
プリントに角があった試しはない。
でも——
ゆっくりでも、確実に前に進んでいる。
それだけは、間違いない。
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