忘れもの大王の努力を母が全部ぶち壊す朝
朝、目が覚めた瞬間に気づいた。
外は土砂降り。
こういう日は必ず、渋滞が倍増する。
いつもの時間に家を出たら、確実に遅刻だ。
■ 息子は昨日、めずらしく“準備万端”だった
昨夜の息子は、いつもと違った。
スマホのアラームをセット
めざまし時計もセット
さらにAlexaまで部屋に持ち込むという徹底ぶり
「明日は自分で起きる」
何も言わなかったけど、
そんな静かな決意が、確かにあった。
それを、私は知っていた。
■ それでも私は、起こしてしまった
雨と渋滞。
「遅刻させたくない」という焦り。
その二つに押されて、
つい、朝、早い時間に起こしてしまった。彼の成果が出る前に。
やりたいことしかやれない息子だ。
結果は、分かりやすかった。
■ そして息子は布団にくるまった
起こされた息子は、布団に潜り込み、
小さく「今日は休む」と言った。
もちろん、粘った。
なんとか行かせようとした。
でも、ダメだった。
結局、学校に欠席連絡して、
私は静かに出勤の準備をした。
■ 徒歩25分の“自己嫌悪ウォーク”
息子が行かないなら、節約のため徒歩通勤。
雨の中、片道25分。
歩きながら、ずっと考えていた。
「なんで私は、あの一瞬で手を出してしまったんだろう」
「息子の努力を、信じきれなかったな」
胸のあたりが、ずっと重かった。
自己嫌悪にまみれて、会社まで雨の中歩く。
■ あ!?
会社に着き、鍵を開け、
スーツの上着を脱ごうとした瞬間——
手が止まった。
スーツの下に、エプロンつけたまま!!
いや、でも、雨の日だし、
シンプルなデザインだし、
ワンチャン、ジャンパースカート風……
……いや、無理がある。
ひとり、静かに赤面。
■ やらかしの朝でした
息子の前進を、信じきれなかった朝。
自分の焦りに負けた朝。
そして、エプロンで出勤した朝。
でも——
こういう日があるからこそ、
次の小さな成功が、ちゃんと沁みる。
今日の失敗は、
たぶん明日の“ちょっと我慢できる私”の材料になる。
そう思うことにした。
<忘れもの大王は朝が起きられない⑧ >
