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【#シロクマ文芸部3月④】最終回

シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。

上記プラス、おばあさんが読み聞かせをするというスタイルを今年は取ることにしました。そのため、シロクマ文芸部のお題から始まる部分が読み聞かせとなり、その後に会話が続く形で物語が展開します。2025年、12個のお話を上手く完成させられるか、お付き合いいただければ幸いです。
3月の物語1回目はこちら👇

3月の物語2回目はこちら👇

3月の物語3回目はこちら👇

「夜桜と一緒に記念撮影などいかがですか?」

おひつじ座駅のホームでふざけていると、車掌さんが声をかけてきます。

「記念撮影?」
「ここの夜桜は見事ですよー」

さっき、汽車はおひつじ座駅にしばらく止まるとアナウンスがありました。撮りたいけど……じょうがもじもじしていると、

「撮ります!」

行人ゆきとくんが車掌さんにすぐ返事をしました。

「でも、カメラ……」
「大丈夫!」

気づくと行人ゆきとの手には立派なカメラがあります。いつのまに、と思いましたがニコニコしている行人ゆきとを見ていると、どうでもいいことのように思えてきました。

「笑って!」

車掌さんがじょう行人ゆきとにカメラを向けます。

「いい笑顔です!もう1枚!」

見事な夜桜を行人ゆきとと見れるなんて!小学生でもこんな遠くまで旅行にいけるんだなと思った時、じょうは不思議なことに気づきました。

「あれ?ここは星空だよね?」
「そうだけど」
「なんで宇宙に夜桜があるんだろう?」

それを聞いた行人ゆきとが「なんでだろうね」と寂しそうに笑った時、じょうの視界がぐわんと大きく曲がりました。

「気づいちゃったかぁ。ごめんね。でも楽しかったよ」
行人ゆきとくん!」
「君と見た風景、忘れないからね」
行人ゆきとくん!」

うわ~んと大声で泣くじょうをおかあさんが、そっと抱きしめます。

「大丈夫だから。大丈夫だから」
「ママ!行人ゆきとくんが!」

行人ゆきとくんが春休みに汽車に乗れなくなった理由は、病気が原因でした。手術をしないといけない大きな病気が見つかったのです。急に決まってしまったので、その前に約束していた汽車に乗る約束が守れなくなりました。それを伝える前にじょうは怒って走り去ってしまい……。

じょうが本当のことを知ったのは、行人ゆきとくんの手術が終わった後でした。夜トイレに起きた時に、おかあさんとおとうさんが行人ゆきとくんの手術の話をしているのを聞いてしまったのです。

「手術って?」
行人ゆきとくんから聞いてないの?」
「けんかになって……」

涙をポロポロこぼすじょうを、おかあさんは黙って抱きしめました。しばらく泣いた後、部屋に戻りぼんやりしていると、あの不思議な小鳥がやってきて行人ゆきとくんになり、汽車の旅に出て夜桜と記念撮影をして、そして。

「ゆ……夢の中で行人ゆきとくんと旅を、し……したんだ」
「そう」
「楽しかった」
「そう」
「星空きれいだ……った」

じょうがしゃべっている間、おかあさんはポンポンと背中を叩いてくれました。

行人ゆきとくんに会いたい……」
「会いに行こうよ」
「え?行けないんじゃないの?」
「退院したってさっき連絡があったの」

じょうを起こしにきたら、わんわん泣いているから驚いちゃったよと、言いながらおかあさんはシャーっとカーテンを開けます。外の光が部屋いっぱいに入り込みました。まぶしさに顔をしかめているじょうに、おかあさんは笑ってたずねます。

「どうする?」
「行く!」

じょうは元気よくベットから飛び出しました。

「会って一番最初にすることは?」
行人ゆきとくんに謝る!」

じょうは満開の笑顔でこたえました。

📚📚📚

「よかった!仲良しに戻れるね!」
「そうだねぇ」

おばあさんがそっと布団をかけ直します。

「明日、遠くに行っちゃったお友達に電話する」
「僕も……」
「そうだね、ママに頼もうね」
「早く明日にならないか……な……」

その後はスヤスヤとした寝息が。

「おやすみなさい」

そうっとおばあさんは部屋の電気を消しました。

(おわり)

小牧幸助部長、今月もありがとうございました。来月も新しい物語、頑張ります!