【寄稿】トンボを撮りにいこう!〜トンボを被写体にした作品づくりの楽しさ〜(トンボ写真家・夏樹 螢石)
本記事は「虫の撮影機材ガイド」の寄稿編です。
一年を通してトンボを追い続け、都市公園から渓流、湿地まで。多様なフィールドで作品制作に挑むトンボ写真家・夏樹 螢石さん。
今回は「どこに行けば出会えるのか」、「どんな機材/設定で狙えばいいのか」、「どうすれば写真作品として仕上げられるのか」までを実体験をもとに完全網羅。これからトンボを撮り始めたい人から、もっと踏み込んで表現したい経験者まで必読です!
夏樹 螢石[Kseki Natsuki]

学生の頃より、独学で写真を学ぶ。
主な被写体は昆虫…特にトンボ。滋賀県、八重山諸島を中心に活動。
幼き頃からの生きもの好きが高じ、昆虫をはじめとする生き物、彼らが住まう自然を題材とした作品作りを行う。2019年から個展をひらき、2023年と2025年には、トンボをテーマにした写真展『蜻蛉の国~あきつのくに~』を開催。
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■主な撮影機材
【BODY】OM SYSTEM OM-1
【ACCESSORY】OM SYSTEM FL-700WR , STF-8
【LENS】OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO
【LENS】OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
【LENS】OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
■Ⅰ-はじめに
トンボという生き物は、とてもカッコよくて美しい。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
飛ぶことに特化したシャープなボディ、薄く頑丈なその翅、宝石のように極彩色に輝く身体。戦闘機のように鋭く、鳥のように自由に大空を駆け回るその姿は、思わず見惚れてしまいます。
そんな美しい生き物を写真に収めたい…このページを開いたあなたは、そんなことを考えていることと思います。
数いる昆虫の中でも特にすばしこい生き物なため、撮影が難しい被写体と思われがちですが、ポイントを押さえれば、必ず思い通りに撮影できるようになります。
この記事では、筆者がトンボの撮影に使用している機材や撮影方法について、そして写真作品に仕上げるために気を付けているポイントについてお話しできたらと思います。
少しでもたくさんの方々に、トンボ撮影の楽しさが伝われば…そしてなにより、トンボという生き物をより深く知ってもらうきっかけになれば幸いです。
■Ⅱ-トンボを探しに行こう
(1)トンボはどこにいる?いつ見られる?
結論は、トンボは春夏秋冬一年中、都市公園や自然公園で見ることができる!
ホント…?と思った方。実はホントなんです。
ここから少し、筆者がフィールドとしている、関西のある地域のトンボ相をご紹介。
早春(3月、4月)の頃、池のそばにある芽吹く森の中で、越冬から目覚めた「ホソミオツネントンボ」や「ホソミイトトンボ」を見ることができます。渓流では「ムカシトンボ」が羽化を始め、田園地帯では「シオヤトンボ」が姿を現します。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
爽やかな風が吹き抜ける春から初夏(4月、5月)。山あいの湿地では「ムカシヤンマ」が羽化をはじめ、開けた湿地帯には「ハッチョウトンボ」が、林縁の小道には「サラサヤンマ」が飛び交います。

X-H2S*XF56mmF1.2 R WR

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-20
茹だる夏(6月から8月)。木陰を流れる川沿いを「オニヤンマ」が飛び、灼熱の池の上を「チョウトンボ」や「ギンヤンマ」が可憐に舞います。水辺を見晴らせる止まり木には「ウチワヤンマ」が睨みをきかせ、夕暮れの谷戸には「マルタンヤンマ」や「ヤブヤンマ」が飛び交います。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-20
風は涼しく、木々が色づき、秋の気配を感じる頃(9月から10月)。山あいの大きな池の上をオオルリボシヤンマが飛び交い、稲刈りが終わった水田では赤とんぼ(アカネ属)たちが産卵をする姿が見られます。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
冬の足音がすぐそこまでやってくる、晩秋(11月から12月)。池の近くには、寒さに強い赤とんぼたちが寒さに耐え、オオアオイトトンボが池のそばの木に産卵する姿が見られます。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
木々は葉を落とし、昆虫たちは息を潜める冬(1月から2月)。水辺から離れた日当たりのよい森の中。ホソミオツネントンボは枝に擬態し、じっと春を待ちます。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
…池に渓流、湿地帯。水辺をはなれて森の中…あまりにも多種多様な環境が登場して、あまり耳にしないトンボの名前もたくさん出てきたかもしれません。日本には約200種のトンボが生息していて、季節や環境、そして地域によって、観察できる種類は大きく変わってきます。
トンボを撮ってみたいけど、そんなに詳しくないし、あまりガッツリハードなフィールドワークはできないぞ…という方ご安心を!
一番オススメするのは『都市公園や自然公園』。
さまざまな環境が公園の中につくられており、多種多様なトンボたちが生息していることが多いのです。実は、上で紹介した写真も、都市公園や自然公園で撮影した写真ばかり。それ以外にも、公園にはこんなメリットも!
◆都市公園、自然公園で撮影するメリット
・アクセスが簡単で、近くにコンビニや飲食店など便利なスポットがたくさんある!
・遊歩道や観察スポットが整備されていて、軽装でも比較的安全に観察できる!
・生息環境が保護されており、たくさんの種類、たくさんの数のトンボたちが安定して発生している!
トンボに会うために公園に行くもよし、何かのついでにトンボを撮って帰るもよし!
思い立ったら、まずは公園に足を向けてみてはいかがでしょう!
(2)出かける前に準備をしよう!
さあ、いよいよトンボを撮りに出かけよう!
目指すはトンボがたくさん飛んでいる公園!
でも、半袖短パンにサンダル!…のような軽装で行くのは、安全な都市公園でもお勧めしません。
フィールドワークの基本は、長袖、長ズボン。整備が行き届いているとはいえ、そこは自然が広がっている場所。危険な生物や場所はそこかしこに存在します。しっかり身体を保護していきましょう!
そして靴。スニーカーでもいいですが、トンボを追いかけていると、うっかり水にドボン!沼地にズボッ!…なんて日常茶飯事。そんなときオススメなのが、防水性が高いトレッキングシューズ。足元を気にせず、撮影に集中できます。さらに深く水に入りたい場合は、長靴やウェーダーを用意する方もいます。

つづいて、安全に撮影を行うために、あったら安心な小物たち。
まずは虫よけスプレー。水辺の草原には「カ」や「ブユ」、そして「ダニ」がわらわら。特に、マダニにも効果があると言われる、ディートやイカリジンを含むものがオススメ。
それでも!もし刺されてしまったら… すみやかに病院に行くことはもちろんですが、応急処置ができるとなお安心。マダニの口吻を残さず除去できる器具や、毒虫にさされたときに使える毒抜き(リムーバー)も、お守りがわりにカバンに入れておくのもオススメ。
最近では、都市部の公園でもクマに遭遇する危険性が高まっています。クマ鈴やクマ撃退スプレーもあった方が安心。ほかにも非常食や水分も、カバンに忍ばせておきましょう。

フィールドワークはとても楽しいものですが、自然の中に入ることは危険も伴うもの。無事、家に帰るまでがトンボ撮影!出かける前に、必ずチェック!
■Ⅲ-トンボを撮ってみよう(ビギナー編)
(1)トンボを撮影するカメラを用意しよう!
数あるカメラ・レンズの中から、トンボの撮影がしやすい機材を選ぶポイント。
それは、『遠くにあるものが大きく写せて、オートフォーカスが優秀』であるということ。
…この条件をクリアすると、トンボの撮影が格段に快適になります。
その条件を満たしていれば、一眼レフでもミラーレスでも、コンパクトデジカメやスマホでも大丈夫。もちろん、カメラのメーカーも好きに選んでOK。
しかし、その条件以外にも、人によって違う+αで気になるポイントもあるわけで。
…例えば、機材の重量や大きさ、センサーの大きさ、そして価格などなど。うーん、悩ましい。
このテーマについては、昼杉 起太氏が素晴らしい記事を公開されていますので、そちらをご参照ください。
【 虫の撮影デビュー!経験者62人に聞いた虫撮り機材ガイド 】
参考として、筆者がトンボの撮影をする機材に求めたポイント、そして私が選んだ機材をご紹介します。
◆筆者がトンボの撮影に求めるポイント
・コンパクト!:どんなフィールドにも携行しやすいこと。
・動きに強い!:AFの性能が高く、飛んでいるものが撮りやすいこと。
・シャープに撮れる!:被写界深度が深く、昆虫の造形が高い解像度で撮れること。
・ズームできる!:広角から望遠まで、様々な画角に対応できること。
・大きく撮れる!:マクロ性能が高いこと。
◆オススメのカメラ
【 OM-1 】
以上のポイントをふまえて、数あるカメラの中から私が選んだのは、OM-1。
コンパクトなボディに優秀なAFを搭載し、被写界深度が相対的に深くなるm4/3センサーを搭載。高品質でコンパクトなレンズラインナップがあり、どのレンズもマクロに強い。私にピッタリくる、最高の相棒です。現在新型のOM-1 MarkⅡが発売されていますが、お高いので、私は旧型のOM-1。これでも十分、戦えます!
◆オススメのレンズ①(トンボをメインに撮るなら最初に用意したい望遠ズームレンズ!)

…35㎜換算800㎜までズームできて、テレ端ではハーフマクロまで拡大することが可能。まさに、遠くのものを大きく写すことができるオススメレンズです。しかも小型軽量で、お値段も控えめ。今はⅡ型が販売中ですが、型落ちのⅠ型でも問題ありません。
【 M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS Ⅱ 】
◆オススメのレンズ②(近づいて大きくトンボを撮りたいならマクロレンズ!)

…トンボと一定の距離を置きながら大きく拡大したいので、望遠よりのマクロレンズがオススメ。しかし、焦点距離が大きくなればなるほど被写界深度が浅くなるので、90マクロの方が扱いがよりピーキーになります。
【 M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 】
【 M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO 】
◆オススメのレンズ③(風景と一緒にトンボを撮りたいなら広角ズームレンズ!)

…トンボと距離を詰めることができれば、風景を入れた写真にもチャレンジしたいところ。ここでもポイントになるのは、大きく写せること。テレ端ではハーフマクロ相当まで大きく写すことができるこのレンズは重宝します。こちらも現在Ⅱ型が出ていますが、型落ちでも問題ありません。
【 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II 】
◆オススメのレンズ④(1本でオールマイティーにこなしたい人はこちら!)
…どうしてもレンズを1本に絞りたい!ということなら、広角から望遠までカバーしているズームレンズ。ただし、器用貧乏感が否めないのであまりおすすめはしません。荷物を減らしたいときにも。
【 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 】
【 M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 】
…ということで、今回の記事で紹介する内容は、OM-1とm4/3のレンズラインナップを使用したものになります。もちろん、他のカメラシステムでもできることがほとんど!あなたにぴったりの相棒を探してみてください。
(2)焦点距離による写真の写り方の違い
◆トンボ撮影のポイント
・トンボが逃げないように、適度に距離をおいて撮影しよう!
400mm以上の望遠レンズを使うことがオススメ!
・広角レンズは、風景と一緒にトンボを撮りたいときに有効。
トンボに近寄って使うべし!近づくときは、ゆっくりゆっくり!
トンボは非常に警戒心が強い生き物。不用意に近づくとすぐ逃げてしまいます。適度に距離をとりながら撮影することがポイント。

実際に、3mほど離れた場所にとまったトンボを、さまざまな焦点距離のレンズで写してみると…

広角域(14mm / 28mm)では、まったくトンボが見えません。トンボを認識できるようになるのは望遠域の200mmから。逃げられない程度に距離をとりつつ、はっきりとトンボを写したいなら焦点距離400㎜以上のレンズが欲しいところ。
「じゃあ、広角レンズはダメなの?」
いやいや、そんなことはありません。
400㎜以上のレンズで撮影した写真を見てみると、背景がボケた葉っぱばかりで単調です。望遠レンズを使うと背景がボケやすく、風景と一緒にトンボを撮りたいときは不向き。
そんなときに使うのが、広角レンズ!
広角レンズは背景がボケにくく、広い範囲を映すことができます。つまり、トンボと風景を一緒に撮影することができるわけです。
ただし、一つ問題が…。トンボをある程度の大きさで写すためには、トンボに全力で近づく必要があります。こんな感じ。

近いっ…!逃げないように、ゆっくり慎重に近づく必要があります。
トンボなど昆虫は、速い動きには敏感に反応してすぐ逃げてしまうので、ゆっくりじりじりと距離を詰めていくことが大切です。このウスバキトンボのように、寝ている個体だとすごく楽。
そして、撮影した写真がこれです。

今回は、焦点距離にスポットを当ててお話をしましたが、実際はそれ以外にも、F値、シャッタースピード、感度など、さまざまなパラメータに気を配りながら撮影をしています。大切なのは、道具が持つ特性を理解すること。そして、どんな写真を撮りたいか…それを頭に描きながら撮影すること。
それができれば、自分が使うべき道具は自ずと決まってくるはず。
この点については、たくさんの記事や動画がインターネット上に公開されているので、勉強してみると面白いと思います。
では、いよいよトンボを撮影しに行きましょう!
(3)トンボをメインに撮ってみる[標準~望遠レンズを使用した作例]
ここからは、トンボを撮るときのカメラの設定や撮影テクニック、そして構図選びについて。正直、実際にフィールドでひたすら撮影することが、思い通りに撮影するための近道です。あーでもない、こーでもないと、自分なりに試行錯誤する過程を楽しむのが一番。
ですので、今回は、自分が撮りたい…頭に思い描いた写真作品をつくるために、筆者はどのような処理を行っているのか。筆者が撮影した写真を作例にして、お話しできたらと思います。
筆者は図鑑的な写真というよりも、写真作品として撮影するタイプなため、そのような視点からの解説になります。また、作品を仕上げるために、RAW現像によるレタッチ(ノイズの処理や色味の調整、トリミング等)を行っています。
ある程度自分が撮りたい写真の構図を決め撮影し、RAW現像で調整することで追い込む…といった具合です。後半では、RAWのレタッチについてもふれます。
まず最初はシンプルに、とまっているトンボをメインに据え背景をぼかして被写体を浮き上がらせた写真。トンボの魅力をダイレクトに伝える作品に仕上がります。
★(3)での撮影のポイント
・モードは、ボケをコントロールしやすいA(絞り優先)モードがオススメ!
・ピント合わせは、AFでもMFでもOK!すぐ逃げることが多いので、手早く合わせられる方法を選ぼう!
・AF範囲を限定する機能があれば、積極的に使っていく!フォーカスが後ろや前に持っていかれることを防ぐ。
・AFを利用するときは、とまっているものにはS-AF(ピントを固定する設定)が安定。
・背景を大きくぼかしたければ、F値は小さく、焦点距離は長めに!
☆(3)での構図のポイント
・被写体が際立つような構図を意識しよう!
・背景に気を付けよう!
・ボケをうまく使おう!
※以下の作例解説では、★をカメラの設定・テクニック、☆を構図に関する解説とします。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO
★望遠レンズを使用。適度な大きさの玉ボケを出すために、またトンボのディティールがしっかり出るように、F値は少し絞る。トンボの背景に余計なボケが入らないような場所を選び、撮影する。
☆筆者が構図を考えるときまず意識するのは、“被写体の目線”。上のオオキトンボの写真であれば、被写体は右向き。その時、目線の向きの方向に余白を作ると、自然な印象を与えることができる。また、この写真では、トンボを中心に、周りに玉ボケを配置することでトンネル構図を作り、被写体が際立つように工夫。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
★撮影した場所は、葉っぱがごちゃつく木の上。ピントが迷わないようにAF設定をS-AFにし、AFターゲットを最小にして、トンボの目にピントを合わせる。風が吹くと枝が揺れてピントがずれるので、必ず連写をして複数枚撮影しておく。
☆ごちゃつく葉をシンプルにするため、F値は小さく、望遠端にしてボケを稼ぐ。手前にある葉を画面下部にあえて入れることで前ボケを作り、構図を整理する。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-20
★水面すれすれで産卵している個体。オス、メス両方にピントを合わせたい。そのために、真横から撮れるポジションにカメラを設置。地面にはいつくばって、水面すれすれで撮影する。レンズ前には写り込む位置に草があったが、これ以上近づくと逃げられるコンディションだったため、望遠端でF値を最小にし、前にある草をボカして目立たなくした。
☆水面への映り込みをアピールポイントにしたい。被写体を画面中央に配置し、上下対称になるように配置した。このとき、どうしてもトリミングすることになるが、撮影時点である程度中央に配置しておくと、最小限の処理で済む。

★非常に暗いところでトンボを撮影することもある。ヤンマのぶらさがりなどがその例だ。そんなときはストロボを使用すると、被写体を際立たせることができる。ただし、ストロボをただ焚くだけだと、背景が黒潰れしてしまう可能性がある。それを回避するために、スローシンクロを活用するとよい。ただし、シャッタースピードが非常に遅くなり手振れが発生しやすくなる。感度やシャッタースピード、そしてストロボの強度をM(マニュアル)モードでコントロールする。
(4)近づいて大きく撮ってみる[マクロレンズを使用した作例]
続いて、トンボのドアップ写真!マクロレンズを活用した撮影。マクロ撮影の魅力は、とにかく被写体がドアップで写真全体に写っていること!ただ、でっかく撮りすぎて何を見せたいのかわからない写真になりがち。筆者がマクロ撮影をするときに気を付けているポイントは、以下の通り。
★(4)での撮影のポイント
・トンボに逃げられないように、ゆっくり距離を詰めていこう!
・モードは、ボケをコントロールしやすいA(絞り優先)モードがオススメ!
・ピント合わせは、MF。最近のカメラはAFでも問題なし!AFのモードはC-AF(ピントを合わせ続ける設定)がオススメ。
・ピントが合う範囲が非常に狭い!三脚を立てたいが、立てている間にトンボは逃げる。気合の手持ちで乗り切ろう。
・撮影中にピントがずれるのは当たり前。たくさん連写して、その中からベストなカットを選ぼう!
・被写体はシャープに写す。ボケすぎないように、F値は大きめに!
☆(4)での構図のポイント
・『見せたい所』はどこか、決めておこう!
・『見せたい所』に目が行く構図づくりを。
※以下の作例解説では、★をカメラの設定・テクニック、☆を構図に関する解説とします。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
★60mm(換算120mm)マクロでの作例。ショウジョウトンボの真っ赤な胸部や複眼を見せたい。その部分にしっかりピントを合わせるために、かなりF値を大きくし、被写界深度を深くする。このレンズは、絞ると六角形のボケになるが、そこは良し悪し。
☆鮮やかな赤色のトンボを目立たせるために、トンボの背景は寒色かつ彩度は低めに。右向きの視線の方向に余白を設け、背景を玉ボケで満たした。玉ボケは被写体より目立たないように。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
★90mm(換算180mm)マクロでの作例。このレンズのメリットは、より遠くから大きく写せることだが、同時にピントが合う範囲がとても薄くなってしまうデメリットもある。F値を大きくする必要があるが、同時にシャッタースピードも遅くなるため、手ブレには注意だ。ストロボを使用するという手もある。
☆今回、一番目立たせたいのは真っ青な複眼。複眼に目が向きやすいように、頭部周辺を明るく処理。また、背景に黄緑色の葉を置き、スポットライト的な役割をもたせた。その外側は要素を整理するため、暗い色になるようにしている。
(5)風景と一緒にトンボを撮ってみる[広角~標準レンズを使用した作例]
次は、風景とトンボを両方画面に収めた写真!広角レンズを使用すると、背景までばっちり写真に収めることができます。しかし、トンボにとても近づく必要があり、撮影が難しいシチュエーションです。また、画面に入る要素が多くなり、写真の統一感が失われやすく、構図に今まで以上に気を付ける必要があります。難しい撮影ですが、うまく撮れたときの喜びはひとしおです!
★(5)での撮影のポイント
・トンボに逃げられないように、ゆっくり距離を詰めていこう!
・モードは、ボケをコントロールしやすいA(絞り優先)モードがオススメ!
・ピント合わせは、AFでもMFでもOK!すぐ逃げることが多いので、手早く合わせられる方法を選ぼう!
・AF範囲を限定する機能があれば、積極的に使っていく!フォーカスが後ろや前に持っていかれることを防ぐ。
・AFを利用するときは、とまっているものにはS-AFが安定。
・背景をぼかしたければ、F値は小さく!背景の風景にもしっかりピントを合わせたいなら、F値は大きく!
☆(5)での構図のポイント
・写真の基本は要素の引き算!でも、広角は足し算もアリ。
・いつもより要素が多い広角写真、構図はいつもよりも気を付けて!
※以下の作例解説では、★をカメラの設定・テクニック、☆を構図に関する解説とします。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
★風景とトンボを一緒に撮影することが今回の目標。しかし、背景全てにピントが合うと、一番見せたいトンボがぼやけてしまう。そのため、日がしっかりと当たる石にトンボが止まるのを待つ。背景はある程度ぼかすため、F値は少し大きめに。
☆写真は引き算、とよく言われ、主題とするもの以外はできるだけ取り除くのが基本。ただ、広角に関してはその限りでもなく、今回はその逆をやってみる。
この写真でメインに据えたいのは、もちろんミヤマカワトンボ。それに、このトンボが住んでいる環境のようすをプラス。バランスよく、上部に森を、下半分に渓流の流れを。見せたいものは一か所に集め、右下に配置。主題が右下にあるため、左側に余計な要素は入れないように…背景の石や斜面などはある程度ぼかして、右側に集める。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
★主題を目立たせるため、今回は少しF値を小さくして背景をぼかす。被写界深度を深くすると、せっかくのトンボが石ころに紛れてしまうので注意。
☆晴れた日、大きな湖の横で羽化していることが分かるような写真をつくる。上には空を、真ん中に水面を配置。水平線を大きく見せることで、大きな湖と分かるようにする。アクセントに遠くの岬を左上に配置し、右下に主題をおき、それをつなぐように汀を配置することで、バランスの良い構図に。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
☆魚眼レンズを使用し、木と空を広く入れることで、明るい冬の林を表現。
慣れてきたら、より癖が強いレンズを試してみたり…

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
☆雨上がりの熱帯のジャングルを表現するため、レンズの曇りを使ってハレーションを出し、湿気感を演出。
構図が乱れたとしても、欲しい要素をプラスするのも楽しいですよ。
■Ⅳ-トンボを撮ってみよう(ステップアップ編)
(1)飛翔写真にチャレンジしてみよう!
ここからは応用編!トンボ撮影の花形、飛翔撮影について。トンボの飛翔する速度は、だいたい時速60km。瞬間的には時速100km近くに達することもあります。しかも、あの小ささ。捉えるのは至難の業…と思われがちです。もちろん、縦横無尽、ランダムに空を飛びまわるトンボを捕らえるのは困難ですが、必ずチャンスは訪れるもの。
そのチャンスとは、飛び出しの瞬間やとまる直前、目の前でホバリングをしているとき、そして同じルートを周回するとき!
トンボの種類によってそのチャンスは異なるため、種類に応じて使い分けるといいでしょう。では、ここから実践的なテクニックについて書いていきます。
①プロキャプチャーを使用した撮影
プロキャプチャー(OM SYSTEM)とは、シャッターボタンを押すちょっと前までさかのぼって記録してくれる、タイムマシンのような反則機能!各社、名前が異なっていますが搭載されるケースが増えています。
◆各社の機能とその名称
・OMデジタルソリューションズ…プロキャプチャーモード
・パナソニック…プリ連写
・キヤノン…RAWバーストモード
・ニコン…プリキャプチャ
・ソニー…プリ撮影
・富士フィルム…プリ撮影ES
搭載されているカメラが高額だったり、メモリーへの書き込みに時間がかかったりするのがネックですが、非常に便利な機能です。もし、お手持ちのカメラに搭載されていれば、ぜひ使ってみましょう。
普通に飛翔写真を撮るときも、この機能を使えばチャンスが大きくなるわけですが、プロキャプチャーが最も威力を発揮するのは、飛び出しの瞬間やとまる直前!
とまっているトンボにピントを合わせ、あとは待機。飛んだ!と思った瞬間にシャッターボタンを押せば、その少し前までさかのぼって、飛ぶ瞬間を記録してくれます。
設定・撮影のポイントは、大きく3つ。
A , シャッタースピードを速くしておくこと!
トンボの動きはとにかく速く、シャッタースピードが遅いとブレた写真になってしまいます。シャッタースピード優先モードにして、1/4000よりも小さい値にしておくといいでしょう。ただし、その分感度が上がってノイズが増えるため、画質とのバランスを考えて設定するとよいでしょう。
B , MFを使うならピントを少し前後にずらしておく!AFを使うならC-AFに!
トンボがまっすぐ上に跳びあがることは、めったにありません。だいたい、前後にずれてジャンプをします。そのため、止まっている場所にピントを合わせておいても、だいたいズレます。運任せになりますが、MFなら前か後ろに少しずらしておくのもよいでしょう。AFの打率は低いですが、使う場合はC-AFなどピントを合わせ続ける設定を使用するとよいです。被写体を追尾する設定などもあれば使用するとよいでしょう。
C , F値は大きく、被写界深度は深めに!
これも②で説明した通り、被写界深度を深くすることで、前後にずれた時のピントを確保するために必要な設定です。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
…飛び出す直前の跳びあがりのシーン

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-20
…後ろの細枝で羽化をし、そこから飛び立った瞬間をとらえたシーン

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
…慣れてくれば、背景や一緒に撮影したいものを合わせて撮ったりすることもできる!
この写真は、カキツバタにとまるのを狙っていたときに撮影できた。
②AFを使用した撮影
目の前でホバリングをしたり、ゆったり飛んでいるトンボを見かけたらチャンス!もし、高性能なオートフォーカスを売りにしているカメラを持っているのなら、AFに頼ってみるのもいいかもしれません。もちろん、筆者も頼り切っております笑 設定・撮影のポイントは、A~Gの大きく6つ。
A , シャッタースピードを速くしておくこと!
これはすべての飛翔写真で同じです。できるだけ速いシャッタースピードにしておくと、失敗が減ります。ただ、翅が少しブレてる方がカッコいいなー…と思ってしまったあなた、勇気を出してシャッタースピードを落としてみましょう。翅だけがブレた、躍動感ある写真が撮れるかもしれません。
B , 必ず、フォーカスモードはAF-Cなど、ピントを合わせ続けるものを使うこと!
AFを使用するということは、ピント合わせをカメラにすべて任せるということ。そのためには、ピントを合わせ続けてもらわなければ困ります。その設定こそが、C-AF(コンティニュアスAF)や、ターゲット追尾AFなどです。S-AFは、一度ピントを合わせたら、そこから動かない設定なので絶対に使用しないようにしましょう。
C , 背景に何もない場所(水面や草原など)がねらい目!
オートフォーカス(AF)を迷わせないように配慮をする!これでずいぶん打率が上がります。AFが苦手なのは、木や草などでごちゃごちゃしている場所。どうしてもピントがそちらに持っていかれがちです。できるだけ撮りたいものが目立つ場所で撮影できたらベストです。撮れた写真も、背景がすっきりして一石二鳥です。
D , ズームレンズは、なるべく広角側で使おう!
ズームレンズの望遠側は、どうもAFが合いにくいことが多いです。なので、一番AFの駆動がよい場所を使うとよいです。今までの経験上、広角側の方がよく合わせてくれます。
E , トンボの動きを予測して、先にピントを合わせておこう!
トンボの動きをよく観察すると、ある程度規則性が見えてきます。決まった場所でホバリングをしたり、同じルートを周回したり…その習性を利用して、先回りでピントを合わせておきましょう!例えば、撮影場所から1mほど先でよくホバリングをするなら、その近くにある葉や枝などにピントを合わせておく…といった感じ。ピント合わせの時間が短縮され、歩留まりが格段に向上します!
F , 被写体検出機能を使用してみよう!
カメラによっては、昆虫を検出してくれる機能を備えているものがあります。積極的に使っていくとよいです。…しかし、精度がイマイチな場合もあるので、付けたり切ったりするのがベスト。筆者は、ボタンに割り当てて、適宜ON/OFFできるようにしています。
G , AFリミッターを使用してみよう!
カメラやレンズによっては、ピントを合わせる範囲を設定できるものがあります。例えば、「カメラから50cmから1mまでの範囲だけピントを合わせて」みたいな感じです。これも、状況に応じて使うとよい機能。Fと同じく、筆者はボタンに割り当てて、適宜ON/OFFできるようにしています。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
…背景が抜けているパターン。開けた水辺をホバリングするキトンボ。こういうシーンは撮影しやすい。キトンボなどよくホバリングをする種は狙い目。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
…はじめはレンズのワイド端で撮影をはじめ、徐々にズームをしていく。うまくいけば、画面いっぱいに飛翔するトンボが撮影できる!

EM-1 MarkⅢ*M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
…はじめは、広角で飛翔するトンボを撮影すると成功率が高い。トンボは小さく写ってしまうが、背景を一緒に入れて撮影するもの乙なもの。
③MF、ストロボを活用した撮影
こちらは、筆者がほとんど使わない撮影方法ですが、追加で二つ紹介します。手法のご紹介のみにとどめますが、テクニックとしては非常に有用なものですので、是非チャレンジしてみてください。
A , 置きピンによるMF撮影
被写体が通りそうな場所にピントをマニュアル(MF)で固定し、被写体が近づいてきたら連写をするという撮影方法。鉄道写真やモータースポーツでもよくつかわれるこの手法。昨今のAF性能の進化で使われなくなったと思われがちですが、昆虫写真ではバリバリ現役。というより、AFが役に立たない特殊なシーンが多いのです。
例えば軌道が一切読めない、ランダムに高速で飛び交うトンボの撮影などで、威力を発揮します。
B , 置きピンによるMF撮影とストロボを併用した撮影方法
Aの応用で、ストロボの短い閃光時間で、暗闇を飛ぶトンボの動きを止めて撮影する手法です。AFが一切効かない暗闇の中で撮影する場合などに使われる方法。
日がどっぷり暮れてから飛びはじめる、「コシボソヤンマ」や「ミルンヤンマ」などの撮影にはもってこいです。
こちらの撮影手法は、「虫撮り機材ガイド」インタビュー編の Puchi ʚïɞ さんの記事で触れられていますので、ご参照ください。また、ストロボの基本はたくさんの方が紹介されていますので、そちらも是非!
【 【インタビュー】トンボの魅力を切りとる(トンボ写真家・Puchi ʚïɞ) 】

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
…置きピンで撮影する場合、トンボの軌道が読み切れない場合も多いため、広角寄りで撮影すると打率が高くなる。

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
…OM-1など、AFが強力なカメラにおいては、MFとAFの両方を使いながら撮影することをオススメする。MFでトンボが飛んできそうな場所にピントを合わせておいて、飛んで来たらC-AFでトンボを追わせる…という手法だと打率が高い。この写真もその手法で撮影したもの。
(2)ドラマチックなシーンを狙ってみよう!

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS

OM-1*M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + MC-20
こうしてトンボを撮影を続けていると…
「このトンボの産卵しているシーンが撮りたいな…」
「今はめっきり減ってしまったあのトンボをフレームに収めたい」
「このトンボの羽化はいつフィールドに行けば撮れるのだろう?」
…こんなことを考え始めるのではないでしょうか。
ここまでくれば、どっぷり「トンボ沼」にはまっています。実はこの記事のテーマは、「トンボ沼へのハマり方」だったのですが、気付いたでしょうか?(笑)
トンボの事が気になってきたら、きっと役に立つ、カメラ以外のもの。
それは、「図鑑」や「報告書」。先人がトンボの事をとことん調べてまとめた、貴重な情報の塊です。そこには、種類ごとの生態や発生時期や場所などの情報が事細かに書かれています。手元にあって損はないので、さっそく書店や博物館、電子書籍でゲットしましょう。

(3)写真を編集して、作品に仕上げてみよう!
さて、トンボの写真を無事撮影することができました。
カメラやパソコン、スマートフォンで撮った写真を見返すと…「あれ、なんか暗い…」「画像が傾いている…」…などなど、もうちょっとこうしたらよかったのに…!と思ったこと、ありませんか?
そんなとき、RAW撮影を行っていれば、あとから、「自分の思った通りの写真」に仕上げることができるかもしれません!
①RAW現像とは?
デジタルカメラは本来、カメラが撮影したデータを処理し、「jpg」などの圧縮された画像データとして記録します。
RAW現像とは、カメラがまだ処理をしていない生のデータ…つまり「RAWデータ」を使って、本来はカメラが行う画像処理を人間があとから行うことです。
基本的に、現像をするためには「RAW現像ソフト」を用意する必要があります。「Adobe Lightroom」や「SILKYPIX」などさまざまあり、無料のものから有料のもの、パソコンで動くものやスマホで動くものなど様々です。
◆RAW現像ソフトの例
【 Adobe Lightroom 】
【 SILKYPIX 】
カメラの機種によっては、機能として、カメラを使ってRAW現像ができるものもあります。
②RAW現像のメリット
RAW現像のメリットは、なんといっても、あとから思い通りに写真を編集することができること!
筆者はRAW現像によるレタッチを積極的に行っています。理由は、撮影モデルが昆虫だから、ということ。当たり前ですが、全くいうことを聞いてくれません。
撮影時に完璧な状態に持っていくのが理想ではあるものの、満足に撮影する前に逃してしまったり、そもそも撮影すらままならないことも多いのです。
撮影に余裕がある場合は、まずある程度写真の色味や明るさ、構図を思い描き、それに近い形でカメラを設定し、撮影を行います。
しかし、難易度の高い飛翔シーンの撮影や、なかなか出会えない貴重なシーンなどは、じっくり構える暇がありません。その場合、まずは確実にその現場を抑えることを優先します。
最も大切なのは、リカバリー不可能なミスをしないこと。手振れ、被写体ブレ、ピンボケ、フレームアウトは、あとでカバーできない大きなミスです。まずは確実に被写体を捉えることに集中します。
そんなとき、RAW現像が威力を発揮します。
写真の色味、明るさ、ノイズ処理、画角の変更…これらはRAW現像であとから処理が可能な項目。これらを気にせず撮影に集中することで、シャッターチャンスをモノにできる確率が大きくアップします!
「普通にjpgで撮ったら編集できないの?」
もちろん、できます!普通、カメラが記録する写真の形式は『jpg(ジェイペグ)』という圧縮されたデータです。しかし、jpgはあとから編集することには不向きで、どうしても画像が劣化したり、編集できる幅が狭かったりします。
RAWデータは、これから編集しやすいように、たくさんの情報が残った状態です。そのぶんデータの容量は大きいですが、画像を劣化させることなく、自由度が高い編集ができます。
もし、PCやスマートフォンで、RAWファイルを扱うことができるソフトを持っていれば、チャレンジしてみるとよいでしょう。自分の思い通りに写真を作品に仕上げるための近道になります。
RAWで撮影するのは簡単。カメラの記録方式で、「RAW」または「RAW+(jpgとRAWの両方を記録する設定)」を選ぶだけ。普通の写真と同じように、メモリーカードに記録されるので、それを「RAW現像ソフト」に読み込ませることで、編集することができます。
③筆者のRAW現像ワークフロー
RAW現像ソフトはさまざまありますが、筆者は「Adobe Photoshop Camera Raw」を使用しています。筆者が現像する際の、基本のワークフローは以下の通り。

A , ノイズ除去、色収差の除去
…気になるノイズや、画像のずれや光のにじみ(色収差)をまずは除去し、下地を作ります。最近は多くのソフトに「AIノイズ処理」が搭載されているため、それを利用すると簡単にノイズを軽減することができます。
B , 構図の調整
必要に応じて、トリミングや傾きの調整を行います。
C , 被写体や背景をマスクし、部分調整
特定の場所だけを編集することができる「マスク機能」を使用し、細かい調整を行います。
例)写っているトンボの解像感をアップ
「被写体選択→シャープネス調整+テクスチャ調整+明瞭度調整」
D , 色味(ホワイトバランスや彩度)、明度、シャープネスなどの調整
最後に、色味や明るさを調整し、全体のバランスを整えます。

RAW現像は画像の編集・加工とは異なるものですが、とても自由度が高いため、もともとのデータから大きく印象を変えることができます。そのため、やりすぎると、写真全体のバランスが崩れ、破綻してしまうことも。
筆者が現像で気を付けていることは、「できるだけ、実際に自分が生で見て、感じた情景を表現する」こと。実際の色味から大きく乖離しているものは避けるようにしています。ただ、ステキなシーンに出会えた時の感動や、その場の温度感や湿度感などを表現するために、少しオーバーな現像をすることもあります。
写真の現像に正解はありません。色々と試行錯誤をしながら、「自分の作品」に仕上げていく過程を楽しんでください。
■Ⅴ-おわりに
長い記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
トンボを撮影すること、トンボを題材として作品作りをする楽しさが少しでも伝わっていれば、嬉しく思います。
まずはカメラを持って、外に飛び出しましょう!
習うより慣れろ!数打ちゃ当たる!の精神で、撮って撮って、撮りまくりましょう!
いつか舞い降りるかもしれない、奇跡の1枚を目指して。
夏樹 螢石[Kseki Natsuki]

学生の頃より、独学で写真を学ぶ。
主な被写体は昆虫…特にトンボ。滋賀県、八重山諸島を中心に活動。
幼き頃からの生きもの好きが高じ、昆虫をはじめとする生き物、彼らが住まう自然を題材とした作品作りを行う。2019年から個展をひらき、2023年と2025年には、トンボをテーマにした写真展『蜻蛉の国~あきつのくに~』を開催。
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