自分のクローンAIに渡したのは、答えではなく「判断軸」でした
1人社長をやっていると、良くも悪くも、判断がぜんぶ自分のところに集まってきます。
事業をどうするのか
これはやるのかやらないのか
このクオリティで世に出していいのか
中小規模の経営者の方なら、状況は似てるかなと思います。
しかもこれ、人を増やせば楽になるという話でもないんですよね。逆に、増えた分だけ「判断待ち」が増えるだけ、ということも起こります。
そこで、自分の分身(クローン)のようなAIを作ってみました。今日はその話です。
何万回もやり取りしてきたのに、その中身が使われていなかった
弊社では普段、Claude CodeというAIに記事の執筆からバックオフィス、SNS運用までほとんどの作業を任せています。
ある時、ふと思いました。
もう何千回、何万回とやり取りしてきたし、ほとんどの業務を自動化してきたし、ツールをいくつも開発してきた。そんな中、こんな疑問がありました。
「自分がどんなレビューをして、何を承認して、何を却下してきたのか」
これらのやり取りは、ずっと積み上がっているはず。
それなのに、AIが出してくる成果物は、いつまでも
「自分の判断基準に完璧に近づいたもの」にならない。
要するに、自分の判断基準がきちんと有効活用されていないんじゃないか、と。正直、これは絶対にもったいない使い方をしている、と思いました。
これがクローンを作ることにした原点です。
「まず1つだけ試しましょう」は納得できない
先に、実際に効いた場面から書きます。
公開しているサイトの中に、「アクセスは増えているのにクリック数が出ていないページ」が何本かありました。
これをふつうにAIに相談すると、こう返ってきます。
「まず最初に1本だけ修正して、効果を確認してから広げていきましょう」
提案自体はまっとうですよね。
ただし、スピードを第一優先している自分としては、これに合意はできなかった。
理由としては上述した通りなのですが、
これまで私と「もの凄くたくさんのやり取り」をしているのだから、私が出すはずの修正指示をAIは分からないのか?
と考えたからです。
しかし、実際に作ったクローンの判断軸を通すと、AIの回答が変わりました。
AI:サイトを改善するために、「追加の作業」はするが、「何かを削る作業」をするわけじゃない。つまり、サイト改善に対するリスクは実質ゼロのはず。だから検証を待たず、今すぐ実行すべき。
これは、自分が実際に何度も下してきた判断にかなり近いものでした。
「損をする可能性がないなら、確認より先に動く」
リスクとリターンを鑑みて動くというのは自分の中では当たり前なのですが、AIにとっては当たり前ではなかった。教科書的には「まず検証」のほうが正解に見えますから。
クローンを作るために実際にやったこと~過去の自分の判断を集めただけ~
クローンの作り方は、思っているより単純です。
今までAIとやり取りしてきた履歴をさかのぼって、「自分が実際に何を承認し、何を却下し、なぜそう判断したか」を片っ端から拾い集めました。
フローにするとこうなります。
過去の判断(承認したこと・却下したこと・その理由)を、AIとのやり取りからひたすら集める
↓似たような判断をまとめて、「後藤さんならこう考える」という判断の型として整理する
↓普段の作業をするAIに、その型をいつでも使えるようにしておく
↓特に重い判断の前には、さらに別のAIに「後藤さんならどう見るか」でチェックさせる
ポイントは、自分の頭の中を想像で再現したのではない、というところです。実際の判断そのものを教材にした、ということになります。
良さそうな案を、単語ひとつで消しかけた
正直に書くと、クローンも完璧ではありません。
先日、「他社からの"紹介"や"被リンク"が増えそうなツールを公開しよう」という案を検証していたら、AIが「これは営業禁止という弊社の方針とは合わない」と、勝手に却下しかけたことがありました。
でも実際の方針は「こちらからゴリゴリとしたアウトバウンド営業はしない」であって、「ツールを公開して自然に見つけてもらうところまで禁止しているわけではない」のです。つまり、単語だけを見て、意味をはき違えていたわけです。
このズレに気づけたのは、AIに判断の理由を隠さずオープンにさせる設計にしていたからでした。
もし結論だけが「却下です」と出てきていたら、良い施策がなぜか消えていることにすら、気づけなかったと思います。
クローンを作る意味は、「間違えなくすること」ではなく、「ズレたときにその理由が分かるようになること」なのかなと。これから自分のクローン化を検討される方には、「必ず判断の根拠を提示させる設計」をおすすめします。
「人が判断すべき」ものは、今でも私に質問が来る
誤解してほしくないのですが、これは「完璧なクローンが働いてくれる」という話ではありません。
販売価格をどうするか
新規事業に手を出すか
削除・公開など、やり直しがきかない操作をするか
このあたりの判断は、今でも必ず自分のところに確認が来ます。
クローンの判断軸そのものに「重要判断は止まって聞く」という仕組みを入れているので、そこは変えていません。AIに任せる仕事と任せない仕事の線引きも、このクローンに対して適用しています。
渡しているのは、判断の答えではなく「判断軸」のほうです。
判断軸を渡した分だけ、「確認なしで動いていい範囲が少しずつ広がった」、そういう話です。
「過去の判断を拾い集めて型に整えていく作業」は、日々の実務の合間にやろうとすると、まず後回しになるテーマです。
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