牧場・搾乳・畜産は、なぜ「守られていても苦しい」のか
みなさま、おはようございます。東城です。
【2,107字】
気候変動は、補助金で下支えされる産業の弱点をさらに拡大する
補助金、助成金で守られる産業なのに、なぜこんなに苦しいのか。。。
酪農・畜産の現場では、気候変動が売上と利益率の両方を静かに削り始めています。
本当に問われているのは、守られるかどうかではなく、守られながら利益を残せる構造へ変われるか、キャッシュを残せるか、どうかです。
守られることと、儲かることは別だ
酪農や畜産は、長く「人手不足で厳しい産業」として語られてきました。たしかに、毎日の搾乳、給餌、牛舎清掃、分娩対応、疾病管理、糞尿処理、機械の維持管理まで、仕事は止まりませし、本当に大変です。
地方では、また、北海道では、担い手不足も深く、日本人だけでは支え切れない現場が増えています。
ただ、この産業の本当の苦しさは、もちろん単なる人手不足だけではありません。
むしろ核心は、政策的に守られやすい産業であるにもかかわらず、個々の経営は疲弊しやすいという矛盾にあります。業界の経営者の中には、その政府の政策、制度が経営の成長を妨げて続けて来たという意見も多くあります。
酪農・畜産は、食料安全保障や地域維持の観点から、補助金、交付金、設備支援、価格安定策などで下支えされやすい産業です。
そのため、「厳しくても最後は守られる」という見方には現実味があります。けれども、ここで見落としてはならないのは、守られることと、儲かることは別だという点です。
補助金は崩壊を防いでも、個々の牧場の利益率や経営者の余裕まで保証するわけではありません。倒れにくくはする。けれど、楽にはしない。この「守られているのに苦しい」構造こそが、この産業の厳しさの核心です。
気候変動は売上を静かに削る
そこへ気候変動が重なると、弱点はさらに拡大します。
まず売上面では、暑熱ストレスによって乳牛の採食量が落ち、乳量が下がり、乳質にも影響が出ます。繁殖面でも受胎率の低下や分娩間隔の長期化が起き、中長期の生産基盤そのものが傷みます。肉牛でも増体効率が落ち、予定通りの出荷が難しくなります。
さらに、乳房炎、蹄病、脱水、繁殖障害などが増えると、牛群全体の成績が崩れ、売上は表面の数字以上に傷みます。
気候変動の打撃とは、単に大災害だけではありません。本来積み上がるはずだった収入が、静かに削られていくことです。
利益率を削る費目は増え続ける
一方、経営者の体感としてさらに重いのは、利益率を削る費目です。
飼料費は、価格上昇だけでなく、暑熱による飼料効率の悪化で回収力そのものが落ちます。電気代や燃料費も、換気扇、送風機、冷却装置、搾乳設備、給水設備を止められない以上、削れない必要経費として本当に重くのしかかります。
そこに修繕費、設備維持費、獣医費、衛生費、医薬品費が重なります。補助金が入っても、こうした日々の費用増までは消せません。
つまり、売上が鈍る一方で、利益率を削る費目が増え続けるのです。
外国人雇用の本質は受け入れ設計にある
ここで外国人雇用の問題が入ります。酪農・畜産は、日本人だけで人を確保するのが難しく、外国人材への依存度が高まりやすい分野です。
しかし、問題は外国人雇用そのものではありません。利益を傷めるのは、受け入れ設計が弱いまま人だけを入れることです。
牧場や搾乳の現場は、時間帯が特殊で、地域的にも孤立しやすく、夏の暑さと冬の寒さの落差も大きい。住居、移動、母語での安全教育、暑熱対策、休日設計、相談体制が弱ければ、事故、ミス、疲弊、離職が起きやすくなります。離職が出れば、再採用費、再教育費、現場の混乱コストが増え、利益率はさらに削られます。
つまり、外国人材が利益を圧迫しているのではなく、現場の受け入れ設計の弱さが利益を傷めているのです。
これから残るのは、利益を残せる牧場だ
逆に、換気や冷却への投資ができ、搾乳効率を高め、疾病を減らし、人が定着し、連続稼働を無理なく回せる牧場は強くなります。さらに乳質管理、加工、直販、ブランド化までつなげられる経営は、価格競争だけに巻き込まれにくくなります。
これから残るのは、単に守られる牧場ではありません。守られながらも利益を残せる牧場です。だからこそ、私たちは地域社会のために経営を下支えしたいのです。
本当の分岐点は、補助金があるかどうかではありません。
牛のコンディションと人のコンディションを同時に守りながら、利益を残せる構造へ転換できるかどうかです。
実務での指針
牧場、搾乳、畜産への提案は、売上を鈍らせる生産性低下と、飼料費、光熱費、修繕費、獣医費、人件費、再採用費といった利益率を削る費目を可視化したうえで、牛舎環境、搾乳シフト、住居、移動、母語教育、暑熱対策、定着支援までを一体で示すこと、目指すことです。
そこまで踏み込めれば、守られているのに苦しい産業を、守られながらも利益を残せる産業へ変える支援になります。私たちはそこに挑戦しています。
本日も最後までお読みいただき誠にありがとうございます!
今日も一日、良い一日になりますように!
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