「アレックス・ストレンジラブ」を観たかめちゃん 〜「性愛」の焦燥を越えて、辿り着く「情愛」の形〜 【感想】
どうも、かめちゃんと申します🐢
台風の週末の映画祭りは、既に5作を見終えたところ。しかし、まだあと24時間を持ち合わせている僕はまだ止まることを知りません。
ここら辺で、推しの吹き替え出演作を見ることにしましょう。
「アレックス・ストレンジラブ」
拙文ながら、感想をかいてみます。
今回の感想はネタバレもありますが、それ以上に"性"について触れるものとなっています。
その点については、閲覧に際してはご留意いただきたく存じます。
それでは、よろしくお願いします🙇
▼過去の感想noteはこちら▼
概要
高校生活、最後の年。アレックス・トゥルーラヴは素敵なガールフレンドのクレアと童貞喪失を計画。でもそこへ、同じくらい魅力的な男子エリオットが現れ....
2018年に公開されたNetflix作品です。
ジャンルとしては青春映画ということになるでしょうか。
テーマは明確に性の多様性についてであり、ティーンの軽さと、その瞬間が全てであるかのような苦悩が描かれた作品となっています。
ガールフレンド クレアの吹替を北原沙弥香さんが演じています。
【こんな人にオススメ!!】
・「性の多様性」をテーマにしつつも、重すぎない爽やかな青春映画を観たい人
・ 「愛すること」と「性的な欲求」の間で、揺れ動いたり悩んだりしたことがある人
・北原沙弥香さんが、葛藤を抱えるヒロインをどう演じているか聴きたい人
・ただのハッピーエンドに留まらない、切なくも美しい関係性の着地点に浸りたい人
【こんな人は向かないかも...】
・下ネタ多めの海外ティーン・コメディ特有のノリや、ストレートすぎる性の描写・ワードが苦手な人
・家族や親と一緒に、リビングで気まずい思いをせず映画を楽しみたい人
・性的少数者を巡る、社会派でシリアスな政治的メッセージや重厚なドラマを求めている人
感想
ティーンにおける"性愛"
本作の主人公アレックスは、性に関して多感な時期にいる学生です。彼の周りはセックスの話に夢中になっているし、異性の存在に興味津々なお年頃ですね。
故に、本作序盤では特にそうしたワードが飛び交い、若さ故のお下品さがあるコメディとなっていて、この辺りは歳を重ねるごとにカロリーを感じるような会話となっています。
推しの声でこーんな話をするんだから、ちょっぴり気まずさだって感じたのも事実。でも、ティーンの生々しさを表現するお芝居として観るとお見事!という感想です。
親とは見づらい映画ではありますけどね💦
思えば、僕は高校時代、寮生活をしていて、彼らのような会話は日常茶飯事で飛び交う環境でした。興味がなくても他人の性事情が入ってくるし、プライバシーもへったくれもない。
でも、それがどこか楽しく、今となっては帰ってこない(帰りたいかはさておき)時間だったのだとも思うものです。
しかし、僕が高校生だった頃はまだ今ほど性の多様性についてはまだ差別的な認識もあった頃かと思います。TVでは「オカマ」と呼ばれるタレントたちが活躍し、ステレオタイプ的に特異な存在として映し出されていました。
だからこそかもしれません。
日常の中で、僕は実際にそうした苦悩を抱える人に出会うことなく学生時代を終えました。
しかし、日本にはだいたい3〜10%の性的少数者がいるとも言います。
調査によるので正確なことはわからないけれど、僕が認識していなかっただけで、そういう友人がいたのかもしれないのです。
今でこそ、そうした価値観が広がってきているのでカミングアウトをする割合も増えてきているのでしょう。実際、資料を見ても、若年層ほどカミングアウトの割合が増えてきており、時代の変化の影響もあることが推察できます。
しかし、学生たちの小さな社会の中ではそのカミングアウトは、大きな爆弾のようなものなのかもしれません。
ティーンにとってはその瞬間こそが全てです。
今が未来永劫続くなんて思ってはいないけれど、遠くを見通せるほど社会を知らない。だから無謀なこともできるし、後からすれば大したことないものをも大きなこととして捉えてしまいがちなのです。
だからこそアレックスもクレアも悩みました。
その悩みによって世界は変わらないけれど、2人にとっては全てだったからです。
僕たちは、セックスすることだけが愛情ではないことを、大人になるにつれて理解していきます。
しかし、第二次性徴を迎えたティーンにとっては性愛こそ愛であると感じるのは、致し方ありません。だからこそ、アレックスはクレアに愛情を感じているのに、"性愛"を向けられない自分自身に悩んだのです。
これは、決して同性愛だけの問題ではありません。異性愛者であっても普遍的な話です。
例えばアレックスのように童貞であることは、ティーンの男子にとってはからかいの対象になり得るし、相手がいても"うまくできないのではないか"という焦りもよくあることです。
これらは、愛情とは性愛であるという価値観が色濃いからなのではないかなと思います。
"情愛"を知って大人になる
しかし、愛情は性的なものだけが全てではありません。
例えば、特に親友のデルに見受けられますが、彼はアレックスがゲイであるかどうかに関わらず、アレックスを応援しようとする人物です。
性的指向のジャンルではなく、アレックスという人格に対しての尊重がなされているからこそ、彼らの友情は一つの"友愛"だったのではないかなと思えるわけです。
加えて、アレックスやクレアの母が子どもたちに向けた言葉にも、視聴者は少なからず愛を感じたはずです。それは慈しみや受容の"情愛"と呼べるでしょう。
本作では、結果的にアレックスがゲイであると自覚し、エリオットこそ想い人であると理解します。アレックスが想うエリオットへの感情は"性愛"でもあるのでしょうが、どちらかというと"情愛"的な描写であるように見えました。
性的指向性という言葉の中には、"性愛"の対象がどこに向いているのかという点も含まれています。だから、実際のゲイを含む人々の愛の営みは"情愛"ばかりではないことは確かでしょう。
本作はゲイを含む性的少数者を理解せよ!という政治的メッセージを訴える作品ではないように思っています。
性の多様性の中には、性的多数者だって含まれているわけで、そうした関係性の中にも"性愛"だけではなく、"情愛"という愛もあるのだということを伝えることが大きなテーマだったのではないかなと思うわけです。
クレアが辿り着くのもまさしくそれです。
クレアとアレックスは、単に友人に戻ったのではなく、"情愛"的な結びつきを残したまま、それぞれ別の道を歩んだのだと思います。
僕はこの結末に辿り着くのにあたって、クレアを物分かりの良い性的多数者とするのではなく、あくまでアレックスを受容した存在として描いていく過程が、切なくも爽やかな美しい青春の物語として描写されているのが素敵だなと思えました。
僕にとっての情愛
最後は、感想ではないので読み飛ばしてもらって差し支えありません。少し、エッセイを。
僕の人生で一番、尊敬した先輩がいます。
僕の高校のあった地域では弁論という、いわばスピーチ大会が盛んな地域で、僕が1年の時に先輩と共に学校で優秀賞に並んだことで関わることになった先輩。
その人は生徒会長となり、その先輩についていく形で僕も生徒会に入りました。生徒会活動では先輩に意見こそする生意気な僕でしたが、先輩は優しく僕を受容し、認めてくれました。
僕も2年になり、また弁論の原稿を書く時期がやってきました。僕は迷わず先輩のことを書きました。憧れを綴る手は止まらず、原稿はすぐに出来上がりました。
「アルプススタンドのはしの方」でも書いたのですが、僕はこの原稿で学校、地区と勝ち上がり、県大会で5位に入選。
前年より好成績となったのは、原稿と、そして読む時に込めた"想い"だったからだと、間違いなくそう思います。実際、周りからは誰に宛ててのものかわかるし、「公開ラブレター」だとか言われていましたね。
その公開ラブレターの相手、生徒会長の先輩は男性でした。
先輩は繊細で情けないところもある。
その後の人生を歩む中で、彼以上に尊敬できる人に出会ったことは沢山ありました。
僕が先輩にむけていた感情は、間違いなく他の男の友人や先輩後輩に向けていたものと違ったように思います。
単純に"尊敬"なんて言葉で片付けられる人ではないんです。
しかし、僕は間違いなく異性愛者です。
僕が高校を卒業して以降、先輩には会っていません。
大学は心理学を志したものの、半ばで心が折れて中退したと風の噂で聞きました。
僕は心理学部を卒業し、大学院で修士号と博士号をとりました。
繊細な先輩のことだから、僕の存在は先輩を傷つけてしまうかもしれない。そう思って、連絡を取れずにいます。
LINEの連絡先も変わり、今や風の便りにSNSで見かけるくらいで、直接の繋がりは残っていません。
僕にとって、先輩は"性愛"でこそなけれど、"情愛"を教えてくれた人でした。
本作を観た時、真っ先に思い浮かんだのは彼のことで。だからこそ、少し寂しくもなったんですよ。
会いたいですよ、先輩。でも、会えなくても良い。どうか、お元気で。
クレアがアレックスを見送るのと同じように、僕も密やかに先輩が幸せであることを祈ろうと思ったのでした。
さいごに
さて、深夜に書いたからか少しエモーショナルになった文章だったかなと思います。
しかし、映画そのものは爽やかな青春映画として、しかも100分程度で楽しむことができるのでライトな作品です。
色んな入り口からで良いので、ぜひ観てみてもらえると嬉しいなと思います。
さて、また寝て起きたら次の映画を観ようと思います。どんな作品が良いでしょうかね?
そのnoteでもまたお会いしましょう!
それでは!
