『プリンとシロップの旅』第3話「きっと大丈夫」

「ねぇ、僕たちどこへ行くの?」
「秘密!」
「でも、どこへ行くのかくらいは知っておきたいよ。
心の準備もしなきゃ」
「実はね……
私もまだ、どこへ行けばいいのか分からないんだ」
「えっ?」
「急に決まった旅だし……
どこへ行けば新しい味に出会えるのか、私にもまだ分からないの。
だからね。
最初から行き先は決めないで、
足の向くままに旅をしてみよう?
列車に乗って、
『ここなら新しい味に出会えそう』
そんなふうに思えた場所で降りるの」
「大丈夫かな……
変な場所で降りちゃったり、
道に迷ったりしたらどうするの?」
「ふふ。
それもきっと、新しい味との出会いじゃないかな」
その時、遠くから列車がゆっくりと近づいてきた。
やがて列車は、
二人の前で静かに止まった。
「プリン、行こう!」
「待って。
せめて、どこへ行くのかくらい決めてから……」
「時間がないよ。
このままだと出発しちゃう」
「お願い……
もう少しだけ、時間をちょうだい」
プリンは黙ったまま、深く考え込んでいた。
頭の中には、
不安ばかりが浮かんでくる。
道に迷ったらどうしよう。
間違った選択だったらどうしよう。
……また、シロップを失ってしまったらどうしよう。
その時、発車を知らせるアナウンスが駅に響いた。
「まもなくドアが閉まります」
「プリン?」
プリンは列車とシロップを交互に見つめる。
一歩踏み出そうとしても、
足は動かなかった。
やがて列車のドアは、
静かに閉まった。
「あぁ……ごめん。
結局、乗れなかったんだね……」
「大丈夫。
今回は、この列車を見送っただけだよ」
「でも……
今ここで出発できなかったら、
次もきっと、出発できない気がする。
この瞬間が、ずっと繰り返されるような……
そんな気がするんだ」
プリンは静かにうつむいた。
そんなプリンを、
シロップはそっと抱きしめる。
冷たい鋼鉄のヘルメットの奥まで、
シロップの温もりが静かに伝わっていった。
「プリン」
「うん?」
「こうしていると……
私たちが初めて出会った日のこと、思い出さない?
あの日も、
私がこうして君を抱きしめたよね」
「そうだったね……
あの時だけは、
本当に何もかも、不安が消えていった」
「あの日の私たちも、
大丈夫になれたでしょう?
だから……
今の私たちも、きっと大丈夫」
シロップはしばらくの間、
プリンをぎゅっと抱きしめていた。
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