【REVIEW:】#03 寄附から共創の投資へ:企業版ふるさと納税が変える官民連携 前半
行政と民間が社会課題解決をめざす「官民共創」の可能性に迫る【REVIEW:】シリーズ。
第三弾は、近畿大学・保本先生の視点から、官民連携事業研究所と楽天グループ株式会社の提携による、企業版ふるさと納税の新たな展開について紐解いていきます。
はじめに
もし企業が、税金の使い道を自ら選べるとしたら、
それは単なる寄附でしょうか、それとも未来への投資でしょうか。
いま日本の地方自治体は、かつてない転換点に立たされています。
「消滅可能性自治体」という言葉が現実味を帯びるように、少子高齢化と都市部への人口一極集中は、地域の経済基盤を根底から揺るがしています。道路の維持、教育環境の整備、伝統文化の継承といった、これまで当たり前に行われてきた行政サービスも、財源不足によって維持が困難になりつつあります。
このような状況下、2016年に創設された「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」は、地方創生における大きな転換点となりました。それまでの地方支援は、国からの交付金や、個人による「返礼品目的」のふるさと納税が中心でした。しかし、それだけでは持続的な産業振興や構造的課題の解決には十分とは言えませんでした。
企業版ふるさと納税の目的は、単なる「寄附金の確保」ではありません。企業の持つ「資金」「知見」「ネットワーク」を地域に呼び込み、行政単独では実現困難であったイノベーションを創出することにあります。
特に2020年度の税制改正により企業の税負担が大幅に軽減され、企業の地方進出や社会貢献(CSR/ESG)のあり方は大きく変わりました。
ここでは、楽天グループ株式会社(以下、楽天)と官民連携事業研究所の提携による、企業版ふるさと納税の新たな展開について紹介します。
未来を共に創る応援の形
企業版ふるさと納税は、企業が自治体の「地方創生プロジェクト」に寄附を行う仕組みです。2008年に始まった個人版ふるさと納税と異なり、経済的な見返り(返礼品)を受け取ることは禁止されています(図1参照)。
その名称から「単なる金銭的な社会貢献」と捉えられがちですが、実際には、企業と地域が深く関わり合いながら、より良い未来を築いていくための制度です。言い換えれば、「地域と企業が手を取り合い、未来を共に創る応援の形」と言えます。
この制度の核となる3つのポイント:
応援の心:企業が「この街を応援したい」という想いを、寄附という形で表します。
地域の挑戦:自治体は寄附を活用し、スポーツ施設整備や子育て支援などの事業を進めます。
共創の未来:企業と地域がパートナーとなり、双方にとって価値ある関係を築きます。

寄附が届くまでの「4つのステップ」
この制度は、国(内閣府)の認定のもと、次の手順で進められます。
計画(自治体が構想を立てる):自治体が「地域を元気にする事業」として「地域再生計画」を策定します。
認定(国が審査する):内閣府が計画を審査し、適切と認めた事業を認定します(図2参照)。
寄附(企業が応援する):認定事業に対し、企業が寄附を行います。ここには重要なルールがあります。
・1回あたりの寄附は10万円以上
・本社所在地の自治体への寄附は対象外
・東京都や、一部の大都市(地方交付税を受け取っていない自治体)には寄附不可完了(税控除):寄附を行った企業は、税制優遇を受けます。

実質負担は1割?「税制優遇」の仕組み
この制度の最大の特徴は、2020年度税制改正で拡充された強力な税優遇措置です。従来の損金算入(約3割)に加え、最大6割の税額控除が上乗せされ、合計で寄附額の最大約9割が軽減されます(表1参照)。
たとえば、企業が地域のために1000万円を寄附した場合、
まず通常で、「法人税」などの約300万円分が軽減
この制度の特例で、さらに最大600万円分(法人住民税、法人税、法人事業税)が追加で軽減
合計で約900万円相当の税負担軽減
結果として、企業が実際に負担するのは、約100万円(1割)となります。企業は実質1割の負担で、10倍規模の地方創生プロジェクトに参画できるのです。

業版ふるさと納税の「返礼品の提供禁止」というルールは、一部では制度の制約と捉える向きもありますが、戦略的な観点からは、むしろ強力な「フィルター」として機能しています。返礼品という目先の対価が存在しないからこそ、企業は
「そのプロジェクトが自社の存在意義・目的と合致するか」
「地域にどのような社会的価値を生むか」
という本質的な意義を問われます。
これにより、単なる消費型寄附ではなく、「社会変革への参画」へと質が転換します。結果として、ミッションを共有する自治体と企業が深く繋がり、中長期的なパートナーシップが生まれやすくなるのです。
次なる課題は、1700を超える自治体の膨大なニーズと、数百万社に及ぶ企業の専門性をいかに最適にマッチングさせるかです。ここで重要なのが、楽天のようなプラットフォーマーの存在です。
後半では、楽天と官民連携事業研究所が描く「企業版ふるさと納税」の新たな形を紹介します。
※本記事は、株式会社官民連携事業研究所の取材・資料提供に基づき構成しています。
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