AIの事業計画が薄いとき。「生産性向上」を「誰の何時間」まで書く
「検品機を導入し、生産性の向上と売上拡大を図ります。」
AIに事業計画を頼むと、こうした整った文章が出てきます。読んでいておかしくはない。でも、設備名を変えれば別の会社でも使えてしまう。
この記事では、4人時を2人時にする架空のメモから、「誰の仕事がどう変わるか」を書いてみます。人件費削減や売上増へ勝手につなげず、AIに渡す材料と未確認事項を分けます。
書き始める前に、公募の版をそろえる
参照する制度名、年度、公募回を決め、公募要領と申請様式を同じ回でそろえます。AIが示した候補について、対象者、経費、契約・発注の時期などを公式資料で確認してから進めます。
要件に合うか分からない箇所は、「確認待ち」として手元に残してください。分からないまま文章だけを制度に寄せると、前提が違ったときに大きく書き直すことになります。
設問や文字数制限も、今使う様式を見て確認します。たとえば省力化投資補助金・一般型の公式資料ダウンロードページでは、公募回を示して要領や様式が案内されています。以前使った様式を、そのまま使えるとは考えないほうが安心です。(2026年9月5日確認)
「生産性」を、現場の一日に戻す
ここからは、従業員8人の部品加工会社が検品機の導入を検討する架空の例です。数字も説明のための仮定で、実際の支援事例や導入効果ではありません。
先に用意するメモ
現状:検品に2人がそれぞれ1日2時間かかる。合計4人時。夕方に作業が集中し、出荷準備が遅れる。
導入後の目標:機械で一次判定を行い、1人・1日2時間で検品と再確認を終えたい。実機での検証はまだ。
空いた時間の使い道:もう1人は出荷準備を担当する。従業員数は変えない。
これから確かめること:自社の部品を判定できるか。再確認や段取り替えを含めても、目標の時間に収まるか。
これなら、設備を入れた後の仕事が見えます。元の「生産性を高めます」に足りなかったのは、難しい経営用語ではなく、誰の作業がどう変わるかという情報です。
メモを文章にすると
たとえば、下書きはこのくらい具体的にできます。
現在、検品には2人で合計4人時/日を要し、夕方の出荷準備と重なっている。検品機による一次判定を導入し、検品と再確認を1人・2時間/日で終えることを目指す。もう1人を出荷準備に回し、検品後の滞留を減らす。実機テストは未実施のため、判定精度と再確認を含む作業時間を検証し、導入後の見込みを見直す。
「実機テストは未実施」と書くと弱く見えるかもしれません。でも、この段階で確かめていないことを、できると書くほうが困ります。私は、下書きには確認事項が残っていてよいと思っています。
月20日稼働と仮定すれば、空く時間の試算は(4−2)人時×20日=月40人時です。これは人の作業時間の試算であって、人件費がその分減るという意味ではありません。人数や給与が変わらないなら、そのまま費用削減額にはできません。
売上増加についても、出荷余力が増えるだけで売れるとは限りません。追加の注文が見込めるのか、別の工程が詰まらないか。そこは、検品時間とは分けて材料を集めます。
AIには、一つの設問から頼む
メモができたら、今使う様式の設問と一緒に渡します。最初は一つの項目だけで十分です。長い計画書を一度に作るより、どの材料がどう文章になったかを追いやすくなります。
下の入力文に、設問と自社のメモを足して使えます。機密情報や個人情報は外し、社内で利用を認められた環境で試してください。
次の設問について、事業計画の下書きを作ってください。
対象の制度・年度・公募回:ここに記入
設問・文字数制限:今使う様式から転記
材料:現状、投資内容、導入後の目標、根拠をここに記入
材料には「確認済み」「試算・仮説」「未確認」の印を付けます。
その区別を保ち、私が示していない事実や数値を足さないでください。
目標は目標として書き、達成した実績のように書かないでください。
出力は、下書き、使った材料、不足情報への質問の順に。
根拠が足りない部分は未確認としてください。
数値は計算式と前提も示し、勝手に目標へ合わせないでください。文章が戻ってきたら、元のメモにない情報が増えていないかを見ます。「大幅に削減」「確実に拡大」といった表現があれば、それを言える根拠があるかも確認します。計算は、元資料と表計算などで別に確かめてください。
画面を閉じて、仕事の変化を説明できるか
最後に、検品担当の人へ説明するつもりで話してみます。
「この機械が入ったら、あなたの一日はどう変わるのか」。今回の例なら、検品から外れた人が、いつ、どの出荷作業に入るのかまで話せるかどうかです。
ここで詰まったら、AIに文章を長くしてもらう前に、現場のメモへ戻ります。再確認の作業が抜けていたのか、担当の割り振りが決まっていないのか。次に考えることが見つかります。
手元の計画書に「生産性を高める」という一文があれば、まずその一文の下に、誰の何時間をどう変えるのかを書き足してみてください。
※事業計画を整理する一般的な方法です。例文は提出用の完成文ではありません。個別制度の要件や審査項目は、最新の公募要領・様式で確認してください。採択を保証するものではありません。
空いた時間を売上につなげる計画なら、「売上は月50万円増える」の根拠を単価×数量で考えるも合わせてどうぞ。本文と収支計画を照合するときは、事業計画で数字がズレる5か所を点検できます。
AIに渡す材料の整理や、事業計画を自分の言葉に直す話は、X(@kawaguchi_keiei)でも発信しています。短い投稿もあるので、よければのぞいてみてください。
