介護施設サイトの問い合わせを止める「5つの摩擦」|きれいに作っても増えない理由
「サイトをきれいにしたのに、問い合わせが増えない」
介護施設のWebサイトを運用していると、そんな課題に直面することがあります。
サイトをリニューアルした。写真もきれいになった。スマートフォンでも見やすくなった。それでも、問い合わせ件数はほとんど変わらない。
こうしたとき、「アクセス数が少ないから」と広告を増やしたくなるかもしれません。
しかし、問い合わせを止めている原因がサイトの中に残っている場合、訪問者を増やしても、同じ場所で離脱する人が増えてしまいます。
介護事業者としてサイト運用に関わり、複数の施設サイトを見比べるなかで感じてきたのは、問い合わせの差を生むのは、デザインの完成度や情報量だけではないということです。
大切なのは、家族が知りたい情報が、家族の不安が減っていく順番で並んでいるかどうかです。
問い合わせは、「魅力」だけでは起きない
介護施設選びは、その場で気軽に決められるものではありません。
マーケティングでは、失敗したくない気持ちが強く、比較や検討に時間をかける意思決定を「高関与型の意思決定」と呼びます。
家族がサイトを見て「良さそうな施設だ」と感じても、次のような不安が残っていれば、問い合わせには進みません。
本当に受け入れてもらえるのか
費用はいくらかかるのか
医療や認知症への対応は可能か
入居後にどのような生活になるのか
強引な営業をされないか
まだ検討段階でも相談してよいのか
施設の魅力を伝えることは、もちろん大切です。
しかし、問い合わせという行動につなげるには、魅力を増やすだけでなく、家族の行動を止めている不安を一つずつ取り除く必要があります。
家族の頭の中では、おおむね次のような順番で検討が進みます。
「自分たちに合う施設だろうか」
「条件や費用は合っているだろうか」
「入居後の生活を想像できるだろうか」
「次に何をすればよいのだろうか」
「今、問い合わせてもよいのだろうか」
この順番の途中に不明点があると、問い合わせまで進めなくなります。
ここでは、その不明点を「5つの摩擦」として整理してみます。
問い合わせを止める「5つの摩擦」
①自分たちに合うか分からない
適合性の摩擦
家族が最初に知りたいのは、「この施設が、うちの親に合っているか」です。
ところが、トップページに施設の理念や抽象的なメッセージだけが並び、受け入れ対象や施設の特徴が伝わらないサイトもあります。
最初の数秒で確認したいのは、例えば次のような情報です。
どのような人を受け入れているのか
どのような介護や医療に対応しているのか
どのような暮らしを大切にしているのか
他の施設と何が違うのか
「どなたにも安心してご利用いただけます」と間口を広く見せるよりも、想定する入居者像を具体的にした方が、必要としている家族には伝わりやすくなります。
以前の記事では、この点を「選ばれる理由」ではなく「選べる理由」として整理しました。
②聞かなければ分からないことが多い
情報の摩擦
費用や医療対応などの重要な情報が掲載されていないと、家族は電話やメールで確認しなければなりません。
施設側から見ると「問い合わせてもらえれば説明できる」と考えがちですが、家族にとって問い合わせは、決して小さな行動ではありません。
名前や連絡先を伝えることへの抵抗や、営業されるかもしれないという不安もあります。
そのため、問い合わせ前に多くの確認が必要なサイトほど、行動が先延ばしになりやすくなります。
まずは、見学や入居相談の際によく聞かれる質問を10個ほど書き出してみます。
月額費用以外にかかる費用
医療・看護体制
認知症への対応
入居までの流れ
空室状況
面会や外出のルール
看取りへの対応
こうした質問への回答がサイト内にあるかを確認するだけでも、情報の摩擦は見つけやすくなります。
③入居後の暮らしを想像できない
具体化の摩擦
建物や居室の写真は掲載されていても、そこでどのような生活が送られているのかが分からないサイトがあります。
家族が知りたいのは、設備の新しさだけではありません。
どのようなスタッフがいるのか
入居者とどのように接しているのか
普段はどのような一日を過ごすのか
食事や行事にはどのような特徴があるのか
施設内にはどのような雰囲気があるのか
スタッフのプロフィールをきれいに作り込むことよりも、日常の写真やスタッフ自身の言葉を通じて、現場の空気を伝えることが大切です。
入居後の暮らしを具体的に想像できるほど、家族は次の行動へ進みやすくなります。
④何をすればよいか分からない
行動の摩擦
家族が施設に興味を持っても、すぐに見学を決められるとは限りません。
「空室だけ知りたい」
「まず費用について聞きたい」
「まだ比較中だけれど相談したい」
このように、検討段階によって求めている行動は異なります。
それにもかかわらず、サイト上に「お問い合わせ」というボタンしかないと、自分の状況で押してよいのか迷ってしまいます。
例えば、次のように目的を具体的にすると、行動のハードルを下げられます。
空室状況を確認する
入居について相談する
見学を申し込む
電話で質問する
ただし、選択肢を増やしすぎても迷わせてしまいます。
家族が取りやすい行動を2〜3種類に整理し、「相談だけでも大丈夫です」と一言添えることがポイントです。
⑤今、問い合わせてよいか分からない
タイミングの摩擦
サイトの更新が長期間止まっていると、家族は不安になります。
「今も入居を受け付けているのだろうか」
「掲載されている情報は、現在も正しいのだろうか」
「問い合わせをしても、きちんと対応してもらえるだろうか」
毎週新しい記事を公開する必要はありません。
空室状況、受け入れ情報、見学対応の有無、情報の更新日などを分かるようにするだけでも、「今、問い合わせてよい」という安心材料になります。
大切なのは、更新本数を増やすことではなく、サイトの情報が現在も有効であると伝えることです。
では、5つの摩擦のうち、どこから改善すればよいのでしょうか。ここで必要になるのが、問い合わせの手前にある行動を見ることです。
問い合わせ件数だけを見ても、原因は分からない
問い合わせが増えないとき、最終的な件数だけを見ても、どこに問題があるのかは分かりません。
問い合わせ件数は、あくまで最終的な結果です。
改善する場所を見つけるには、その手前で家族がどこまで進んだのかを見る必要があります。
例えば、問い合わせまでの行動を次のように分けて考えます。
サイトを訪問する
↓
受け入れ条件を確認する
↓
費用ページを見る
↓
医療・介護体制を確認する
↓
見学・相談ページを見る
↓
電話番号を押す、またはフォームを開く
↓
問い合わせを完了する
このような、問い合わせに至る前の小さな行動を、マーケティングでは「マイクロコンバージョン」と呼びます。
日本語にすると、「最終的な成果につながる途中の行動」です。
例えば、次のような見方ができます。
費用ページは見られているのに、見学ページへ進んでいない
問い合わせフォームは開かれているのに、送信されていない
スマートフォンからの電話タップが少ない
受け入れ条件のページで離脱が増えている
フォームを開いた人は多いのに送信が少なければ、入力項目が多すぎる可能性があります。
費用ページから見学ページへ進んでいなければ、費用への不安が残っている、あるいは次の行動が分かりにくい可能性があります。
ただし、数字だけで原因を断定することはできません。
数字は「答え」ではなく、詳しく確認すべき場所を教えてくれる手がかりです。
アクセス解析で止まっている場所を見つけ、実際のページを確認し、改善する。
この順番で考えることで、サイト全体を感覚的に作り直すのではなく、優先順位をつけた改善ができるようになります。
今日から確認できる3つのこと
専門的な分析を始める前にも、確認できることがあります。
1.トップページを5秒だけ見る
施設名を知らない家族のつもりでトップページを開き、「どのような人のための施設か」が伝わるかを確認します。
2.家族からよく聞かれる質問を10個書き出す
その答えがサイト内にあるか、見つけやすい場所にあるかを確認します。
3.スマートフォンで見学を申し込んでみる
見学したいと思ってから、何回タップする必要があるか。電話番号は押せるか。フォームの入力項目は多すぎないかを確認します。
この3つだけでも、家族の行動を止めている摩擦が見つかることがあります。
サイト改善は、「全部作り直す」ことから始めない
問い合わせが少ないと、広告を増やす、デザインを変える、サイトをリニューアルするといった大きな施策を考えがちです。
しかし、最初に確認したいのは、家族がどこで止まっているかです。
自分たちに合うか分からないのか。
必要な情報が足りないのか。
入居後の暮らしを想像できないのか。
次の行動が分からないのか。
今、問い合わせてよいか判断できないのか。
FOURKNOTが大切にしたいのも、サイトをきれいに作ることだけではありません。
家族がどこで迷い、どのような情報があれば次の一歩を踏み出せるのか。意思決定の流れを確認し、最も大きな摩擦から取り除いていくことです。
問い合わせを増やすために必要なのは、必ずしもサイトをすべて作り直すことではありません。
まずは、止まっている場所を見つけること。
そこから、本当に必要な改善が見えてきます。
関連記事では、介護施設サイトに必要な情報を7項目に整理しています。
5つの摩擦のなかで、まず見直したいと感じたのはどれでしょうか。
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