伝わる人は、「言葉」より先に相手を見ている
「ちゃんと説明したのに、なぜか伝わっていない。」
仕事をしていると、こんなことがあります。
企画の背景も説明した。
やることも整理した。
資料にもきちんと書いた。
それなのに、決裁者から返ってくるのは、
「で、結局どれくらい売上につながるの?」
という一言。
あるいは、
「具体的には何をやるの?」
「どんな人に向けた施策なの?」
「それって、何をもって成功なの?」
と聞かれる。
そんなとき、つい「説明が足りなかったかな」と考えます。
でも振り返ってみると、説明の量ではなく、相手が判断しやすい順番で話せていなかったのかもしれません。
最近、「伝わる」について考えていて、ひとつ気づいたことがあります。
伝わらないのは、説明が下手だからとは限らない。
相手が判断したいことと、こちらが説明していることがズレている。
そんなことが、意外と多いのではないでしょうか。
同じ企画でも、相手によって知りたいことは違う
たとえば、あるキャンペーン企画を社内で説明するとします。
マーケティング担当としては、
「例年この時期は顧客の動きが鈍くなるので、比較検討中の層に向けてキャンペーンを実施します」
と話したくなる。
ターゲットも、実施背景も、施策の狙いも大切です。
でも、経営者や決裁者が最初に知りたいのは、
「いくら使うのか」
「何件の問い合わせを見込んでいるのか」
「結果としてどれくらい売上につながるのか」
かもしれません。
一方、制作担当なら、
「どんなLPをつくるのか」
「どんなクリエイティブが必要なのか」
「いつまでにつくるのか」
のほうが重要です。
営業担当なら、
「どんな問い合わせが来る想定なのか」
「問い合わせ後にどう対応するのか」
が気になるかもしれない。
同じ企画について話しているのに、
それぞれ知りたいことが違います。
つまり、相手によって話す内容を変えるというより、
相手が“何を判断する人なのか”によって、最初に渡す情報が変わる。
僕は、ここが「伝わる」を考えるうえでかなり大事だと思っています。
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企画そのものを「周囲が判断できる形にする」という視点については、こちらの記事でも書いています。
「何をするか」はわかっても、「何を目指すか」がわからない
もうひとつ、仕事でよくあるのが、
「やることはわかった。でも、それって何を目指しているんだっけ?」
という状態です。
たとえば、
「Instagramでキャンペーンをやります」
「広告を出します」
「LPをつくります」
ここまで聞けば、施策自体はわかります。
でも、
何のためにやるのか。
問い合わせを何件増やしたいのか。
売上をどこまで伸ばしたいのか。
何をもって「うまくいった」と判断するのか。
そこが決まっていなければ、聞く側も判断しにくい。
制作担当は「いいLPをつくる」を目指し、
広告担当は「クリック数を増やす」を目指し、
営業担当は「商談につながる問い合わせが欲しい」と考える。
みんな真面目に仕事をしているのに、見ているゴールが違う。
すると、あとから、
「思っていた成果と違う」
「そこを重視していたの?」
「それなら最初に言ってほしかった」
ということが起きます。
これも「伝わらない」のひとつだと思うのです。
言葉が足りなかったというより、
相手が判断するために必要な材料が、そもそも揃っていなかった。
伝わる人は、「何を話すか」の前に相手を見る
では、伝わる人は何をしているのか。
すごく話がうまい。
説明が簡潔。
資料づくりが上手。
もちろん、それもあると思います。
でも、その少し前に、
「この人は、何を判断しようとしているんだろう?」
と考えているのではないでしょうか。
決裁者なら、投資する価値があるかを判断したい。
制作担当なら、何をどう形にすればいいかを判断したい。
営業なら、どう顧客に対応すればいいかを判断したい。
そう考えると、自然と伝える順番も変わります。
相手が判断するために必要な情報は何か。
その判断に必要な前提は揃っているか。
どこまで詳しく話せば十分なのか。
そこから逆算して説明する。
「相手に合わせて言葉をやさしくする」という話よりも、もう少し手前の話です。
相手の立場から、必要な情報を組み立て直す。
そんな感覚に近いと思います。
Webサイトでも、AIでも、同じことが起きる
この考え方は、会議や企画説明だけの話ではありません。
Webサイトでも同じです。
企業側が伝えたい情報をたくさん載せても、ユーザーが知りたい順番になっていなければ、なかなか伝わらない。
「うちにはこんな強みがあります」と説明する前に、
その人はいま、
料金を知りたいのか。
他社との違いを知りたいのか。
問い合わせても大丈夫かを判断したいのか。
そこを考える必要があります。
マーケティングでは、これを「誰に届けたいのか」から考えると、さらに整理しやすくなります。
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「誰に届けるか」が変わると、施策や伝える情報がどう変わるのかはこちらで整理しています。
AIを使うときも似ています。
AIがきれいな文章をつくってくれても、
「誰が読むのか」
「その人に何を理解してほしいのか」
「読んだあと、何を判断してほしいのか」
が曖昧なら、きれいだけれど伝わらない文章になることがあります。
道具が変わっても、根っこはあまり変わりません。
「伝えた」と「伝わった」は、やっぱり違う
仕事ではつい、
「ちゃんと説明しました」
「資料に書いてあります」
「メールで共有しました」
と言いたくなります。
僕自身もあります。
でも、「伝える」は自分側の行為で、
「伝わる」は相手側で起きることです。
だから、
伝えた量と、伝わった量は同じではない。
情報を増やせば伝わるとも限らないし、
説明を丁寧にすれば伝わるとも限らない。
むしろ大切なのは、
「この人はいま、何を判断しようとしているんだろう」
と一度考えてみることなのだと思います。
相手が何を知っていて、
何を知らなくて、
何を不安に感じていて、
何を決めようとしているのか。
そこが見えてくると、初めて「何を伝えるべきか」が見えてきます。
言葉を選ぶ前に、相手を見る
伝わる文章の書き方。
わかりやすい資料のつくり方。
プレゼンの方法。
Webサイトの情報設計。
「伝え方」のテクニックはたくさんあります。
もちろん、どれも大切です。
でも、その前にひとつだけ確認するとしたら、
「この人は、何を判断する人なんだろう?」
なのかもしれません。
伝わる人は、言葉をたくさん知っている人というより、
相手がどこを見ているのかを想像できる人。
そして、その人が判断しやすいように、情報の順番や粒度を整えられる人。
介護でも、Webでも、AIでも、日々の仕事でも。
「伝える」を考えるとき、最初に見るのは言葉ではなく相手。
僕がこれからも考えていきたい「伝わる」の出発点は、たぶんそこにあります。
