第2回:介護施設のSNS「何を投稿しよう」から始めない|目的・ターゲット・KPIから考えるアカウント設計
Instagramを始めることにした。
アカウントも作った。
すると次に出てきやすいのが、
「さて、何を投稿しよう?」
という話ではないでしょうか。
行事の写真。
スタッフ紹介。
採用のお知らせ。
空室情報。
投稿できそうなものはいろいろあります。
でも、その前に一度整理しておきたいことがあります。
このSNSは、誰に何を伝え、何につなげるためのアカウントなのか。
ここが決まっていると、その後の投稿テーマも考えやすくなります。
今回は、介護施設のSNSを始めるときに考えておきたい「アカウント設計」について整理します。
投稿ネタはあるのに、「何を発信するアカウントか」が見えなくなる
介護施設には、SNSで発信できそうな情報がたくさんあります。
たとえば、
レクリエーションの様子
食事
季節の行事
スタッフ紹介
地域交流
求人情報
空室のお知らせ
どれも施設に関係する情報です。
だから、一つひとつの投稿が間違っているわけではありません。
ただ、その時々で「載せられるもの」を投稿していると、
このアカウントは誰に向けて、何を伝えようとしているのか
が見えにくくなることがあります。
問題は、投稿テーマが多いことではありません。
その投稿を通じて、
誰に、どんな施設だと知ってほしいのか。
そこに共通する軸があるかどうかです。
介護施設は、SNSの「目的」が混ざりやすい
介護施設の発信を考えると、届けたい相手は一人ではありません。
たとえば入居・利用に関する発信なら、ご本人やご家族。
採用なら求職者。
地域活動なら、地域の方や関係機関。
すでに利用されている方のご家族に、施設の日々の様子を伝えるという役割もあるでしょう。
つまり介護施設のSNSには、
入居・採用・地域との関係づくり・既存のご家族への情報発信
など、複数の目的が入りやすいのです。
だからといって、「目的は一つに絞らなければならない」ということではありません。
ただ、
このアカウントで、まず誰に届けたいのか。
何を中心に伝えるのか。
は整理しておいたほうが、その後の判断がしやすくなります。
SNSの目的は、担当者一人で決めなくていい
では、「誰に何を伝えるか」は、どうやって決めればいいのでしょうか。
ここをSNS担当者やマーケティング担当者だけで考えようとすると、意外と難しいものです。
介護施設には、ご本人やご家族とさまざまな場面で接している人がいます。
たとえば、
日々の暮らしを近くで見ている介護スタッフ
見学や来訪時に最初の接点になる受付・相談員
ご家族から相談や質問を受けるケアマネジャー
採用面接で求職者の質問を聞いている採用担当者
それぞれが見ている「施設への関心」は少しずつ違います。
「見学では、どんな質問が多いのか」
「ご家族は入居前に何を不安に感じているのか」
「入居後に『事前に知りたかった』と言われることはないか」
「求職者は面接で何を確認しているのか」
こうした声を集めていくと、SNSで伝えるべきテーマのヒントが見えてきます。
SNSのテーマは、会議室の中だけで考える必要はありません。
普段の接点にある“よく聞かれること”や“気にされていること”から探す。
そのうえで、SNS担当者が「誰に、何を届けるアカウントにするか」を整理していく。
介護施設では、この順番のほうが実際のニーズにも近づきやすいと思います。
「主目的」と「副目的」に分けると整理しやすい
複数の目的がある場合は、
主目的と副目的
に分けてみると整理しやすくなります。
たとえば、
主目的
入居を検討しているご家族に、施設の日常を知ってもらう
副目的
求職者にも、職場の雰囲気を知ってもらう
とします。
この場合、投稿の中心になるのは、
日々の暮らし
行事
食事
スタッフ
施設の考え方
などでしょう。
一方、採用を主目的にするなら、
スタッフ紹介
仕事の様子
研修
働き方
職場で大切にしていること
などの比重が高くなります。
面白いのは、同じ「スタッフの写真」でも、目的によって伝え方が変わることです。
ご家族向けなら、
「どんな人が日々の生活を支えているのか」
という安心につながる情報になるかもしれません。
求職者向けなら、
「どんな人と一緒に働くのか」
という職場理解につながる情報になります。
投稿素材そのものより、誰にどう見てほしいかが先にあるということです。
SNSの役割を、一文で書いてみる
ここまで考えたら、一度SNSの役割を一文にしてみます。
たとえば、
入居を検討しているご家族に、施設の日常やスタッフの様子を伝え、公式サイトで詳しく知ってもらう。
あるいは、
求職者に、求人票だけでは分からない職場の雰囲気や働く人を伝え、採用ページにつなげる。
ポイントは、
誰に
× 何を伝え
× どこにつなげるか
を入れることです。
難しいSNS戦略書を作る必要はありません。
まず、この一文が書けるだけでも、その後の投稿判断はかなり変わります。
KPIは、「フォロワー数」だけでは決めない
SNS運用を始めると、
「フォロワーを何人まで増やすか」
が目標になりやすいものです。
もちろん、フォロワー数も一つの指標です。
ただ、SNSの目的が違えば、見るべき数字も変わります。
たとえば、
■ 施設を知ってもらいたい
見る数字:リーチ、プロフィール閲覧
■ 施設について詳しく知ってもらいたい
見る数字:公式サイトへの遷移
■ 採用につなげたい
見る数字:採用ページへの遷移、問い合わせ
■ あとで情報を見返してもらいたい
見る数字:保存、シェア
■ 関係を深めたい
見る数字:コメント、DM
KPIとは、目的に向かって進んでいるかを見るための途中の数字です。
大切なのは、
「フォロワーが増えたか」だけではなく、「目的に近づく行動が増えているか」
を見ること。
第1回でも触れたように、SNSは公式サイトや採用ページにつながる「入口」という役割を持つこともあります。
SNSだけで成果を完結させようとしないことも大切です。
投稿テーマは、「目的」を決めたあとに考える
ここでようやく、
「何を投稿しよう?」
に戻ります。
たとえばSNSの役割が、
入居を検討しているご家族に、施設の日常を知ってもらう
なら、
日々の暮らし
食事
行事
スタッフ
施設の取り組み
といった投稿テーマが考えられます。
採用が中心なら、
スタッフ紹介
仕事の一日
研修
働き方
職場の考え方
などが候補になります。
順番としては、
目的
↓
ターゲット
↓
SNSの役割
↓
KPI
↓
投稿テーマ
です。
「投稿ネタを探してから目的を考える」のではなく、目的から投稿テーマを決める。
これがアカウント設計の基本になります。
最初から完璧な「アカウント設計書」はいらない
ここまで読むと、
「SNSを始めるだけなのに、ずいぶん決めることが多いな」
と感じるかもしれません。
でも、最初から細かな戦略書を作る必要はありません。
まずは、
主に誰に届ける?
何を知ってほしい?
その先、どこにつなぐ?
何を成果として見る?
どんなテーマを投稿する?
この5つを書き出すだけでも十分です。
A4一枚程度でも構いません。
大切なのは、SNS担当者だけが頭の中で分かっている状態ではなく、施設の中で「何のためのSNSか」を共有できる状態にすることです。
設計できても、「続ける」はまた別の問題
目的も決まった。
投稿テーマも決まった。
それでも実際に運用を始めると、
「今週はどのテーマにしよう」
「毎回文章を考えるのが大変」
「担当する人によって投稿の雰囲気が変わる」
といった悩みが出てきます。
ここから先は、アカウント設計とはまた別の「運用」の話です。
次回は、
投稿を毎回ゼロから考えないための「型」と仕組みづくり
について考えてみます。
SNS運用を始めると、つい「何を投稿するか」に目が向きます。
でも、その前に考えておきたいのは、
誰に、何を伝え、何につなげるためのアカウントなのか。
そして、それを担当者一人で決める必要もありません。
現場で日々聞いている声や、ご家族・求職者から実際に寄せられる質問の中に、SNSで伝えるべきことのヒントはたくさんあります。
まずは、
「うちのSNSは、誰のどんな疑問や関心に応えるものだろう?」
そんなところから考えてみると、
「今日は何を投稿しよう?」の見え方も少し変わってくるのではないでしょうか。
介護施設のSNSを、最初から整理したい方へ
このシリーズでは、介護施設のSNS運用を順番に考えてきました。
第1回|選ぶ
介護施設のSNS、何から始める?
Instagram・Facebook・Xを「目的」から考える
第2回|設計する
この記事
第3回|回す
介護施設のSNSは、毎回ゼロから考えない
投稿を続けるための「型」と仕組みづくり
第4回|つくる
介護施設の写真は「うまく撮る」より、「何を伝えるか」で変わる
第5回| 振り返る
介護施設のSNS「フォロワーが増えたか」だけで判断しない
数字と現場の反応から、発信を振り返る
選ぶ → 設計する → 回す → つくる → 振り返る。
全部を一度に整える必要はありません。
今のSNS運用で気になっているところから、必要な記事を参考にしてもらえればと思います。
