イラストレーターで生計をたてたい夢を実現するためにできること
鑑定依頼で、イラストレーターになりたいという人に多く出会います。
でも、現実には仕事が忙しい。
帰宅したら疲れていて、絵を描く気力なんて残っていない。
描けない自分に焦り、さらに「これからAIが進化したら、イラストレーターなんて必要なくなるのでは」と不安になっているのです。
今日は占いではなく、その夢を現実側へ少し動かす方法を考えてみます。
引き寄せだけではなく、現実的な情報も書いておきます。
1.「いつか」をやめて、未来を一度決めてみる
「イラストレーターになれたらいいな」ではなく、イラストで毎月収入を得ている、という少し先の未来をいったん置きます。
これは「絶対そうなる」と念じる話ではなく、決意みたいな感じです。
未来を決めないまま今日の選択を繰り返せば、現在はそのまま過去になっていきます。
未来を置くことで初めて、「その未来へ行くなら、今日どちらを選ぶ?」という選択ができます。
2.新しい絵を描けないなら、すでにある絵を働かせる
「毎日一枚描きましょう!」ができたら本当はいいんです。
描けば描くだけ、楽に描けるようになり、上達し、自分の世界が構築されていくから。
・・・でもそんな余裕がないから困ってるのですね。
だったら、すでに描いた作品を整理しましょう。
そして、作品によって販売先を分けましょう。
SUZURIならグッズ化。
PIXTAやAdobe StockならWEB・広告・チラシなどに使われるストック素材。
BOOTHやBASEならデジタルデータそのものの販売。
PIXTA
WEB・広告・チラシなどで使うイラスト素材/ストック収入
Adobe Stock
イラスト・ベクター素材/世界市場のストック収入
SUZURI
絵を使ったTシャツ、雑貨、デジタル作品など/作品・作家として売る
PIXTAはプロ・アマ問わず写真・イラスト・動画を販売でき、審査後に素材として販売されます。WEBサイト、広告、販促物などに使う人が買うので、今回の「すでに描いた絵を働かせる」にはかなり合っています。
Adobe Stockも同じストック型ですが世界市場。
現在、写真・ベクター・イラストの標準ロイヤリティは33%。作品の所有権はクリエイター側に残り、非独占でライセンスできます。
SUZURIは別方向。画像をアップすればグッズを作って販売でき、在庫を抱えず、制作・発送も任せられます。デジタルコンテンツ販売やコミッションもあります。
3.「イラストレーターの口座」を作る
専用口座を一つ作ります。
そして最初に3万円入金します・・・金額は自由です。
画材、ソフト、販売に必要なものなど、イラストレーターとして必要な支出はそこから出すようにします。
そして初めて500円売れたら、その500円もそこへ入金します。
すると、それまで頭の中にしかいなかった「未来のイラストレーター」が、作品を持ち、販売場所を持ち、売上を持ち、経費を持ち、銀行残高を持ち始めます。
夢だったものが、少しだけ物質化するわけです。
4.やっぱり発信は重要
時間も心の余裕もなくても、やっぱり発信は重要です。
できなくて焦るくらいなら、やらなくてもいいけれど、SNSにアップしておくことで、誰かの目には触れるから。
5.AIを怖がって描くのをやめない
相談者さんの多くが
これからはAIにイラストレーターの仕事が奪われますよね・・・って聞いてきます。
そこは違うと思っています。
「AIに描けない絵とは何でしょう?」
どんな画像生成AIが描いたものを見ても、だいたい
ああ。AIだなってわかりますよね。
しかも、どのAIが描いたかも、だいたい想像がつきます。
だから、これからは
AIでいい絵
と
本当に好きな画風
が、分かれてくるはずです。
ただ、「AIっぽくない絵を描けば勝てる」なんて単純な話ではなく、
きちんと自分の世界を構築できているかが重要です。
そして、これからはむしろ、誰が、どんな過程で作った作品なのかという来歴を作品に持たせる技術も重要になってくるでしょう。
今から、作品と自分の名前を結びつけて世の中に残していくことを心がけていきましょう。
実際にはどうすればいいのか・・・・・
5.Content Credential
以前にも記事を書いています。具体的な方法などはこちらの記事をご参照ください。
上記の記事で、画像に作者情報などのメタデータを埋め込む方法を書きましたが、通常のメタデータには弱点があります。
SNSなどへアップした際に削除されることがあるのです。
それで、その先にあるのがContent Credentialsなんです。
Content Credentials って何?
Content Credentials は、画像などのデジタル作品に付ける「制作履歴つきのデジタル署名」みたいなものです。
Adobeは「デジタルの成分表示」に近いものとして説明していて、作者情報や使用したアプリ、AI生成・編集の有無など、作品がどう作られたかの来歴を記録できます。
現在はPhotoshop、Lightroom、Adobe Stockなどにも対応が広がっています。
これの技術の土台になっているのが C2PA という業界標準。
大事なのは、これは単純な「AI判定機」ではないことです。
この画像は人間が描いた/AIが描いた、と画像だけを見て鑑定する技術ではなく、誰が・どんなツールで・どんな経路を通って作ったかを記録していく仕組みです。
一番簡単な方法:Adobe Content Authenticity を使う
現在、Adobeには Adobe Content Authenticity という無料のWebアプリがあります。Adobe Learnでも、これを使って作品へContent Credentialsを付ける方法が案内されています。
まずAdobeアカウントでログインする。
そのあと、自分のプロフィール情報を設定する。
登録できるものには、
・ 本人確認された名前
・ Behance
・ Instagram
・ LinkedIn
・ X
などがあります。SNSアカウントを接続しておくと、その情報を作品のContent Credentialsに含めることができます。
たとえば、
制作者:さとうかよこ
Instagram:@kayoko_art
Behance:kirarasha-design
みたいな情報を、作品に結びつけられるわけです。
単に画像の隅へ「©Kayoko」と書くだけではなく、その作品と作者のアカウントを技術的に関連づける方向です。
実際に作品へ付ける
Adobe Content Authenticityを開いて、Apply を選ぶ。
そこへ自分の作品ファイルをアップロードする。
現在のWebアプリでは画像など複数のファイルをまとめて処理できる仕組みになっていて、Content Credentialsへ含めたい作者情報やSNSアカウントを選べ、
そこで、
作者名
SNS
AI利用に関する情報
AI学習への利用を希望しない、という設定
などを選びます。
AI学習についてはちょっと注意が必要で、「この作品をAI学習に使わないでください」という希望を記録できます。
ただ、これを書いたら世界中のAI企業が法的に絶対使えなくなる、という魔法のDRMではありません。
現在この設定を尊重しているサービスとしてAdobe Fireflyなどがあります。
設定したらContent Credentialsを適用して、その新しいファイルを公開用として使います。
すでにSNSに載せてある画像へ、あとから遠隔でContent Credentialsをくっつけることはできません。
公開する前のファイルに付けて、そのファイルをアップロードします。 Adobeも、公開前に適用する必要があると案内しています。
付いたかどうかを確認する方法
確認するための Inspect / Verify というツールがあります。
画像をドラッグ&ドロップすると、その画像にContent Credentialsが含まれていれば、
作者
使用されたツール
いつ署名されたか
どんな編集履歴があるか
などを確認できます。
現在はJPEG、PNG、WebP、TIFF、SVG、PDF、動画・音声など幅広い形式に対応しています。
今後はむしろ、作品完成後にわざわざ証明を付けるというより、制作ソフトやカメラの段階から履歴が積み上がっていく方向になるでしょう。
たとえば写真では、すでに一部のLeicaやNikonのカメラがContent Credentials対応をしていて、
撮影
→ Photoshopで編集
→ 公開
という履歴をつなげられます。Adobeはこれを、作品が編集されるたびに新しいCredentialsを追加してバージョン履歴を形成する仕組みとして説明しています。
デジタルイラストも同じ方向へ行くと思っていいでしょう。
「人間が描いた証明」としては、どう使う?
Content Credentials単独で、この絵は100%人間が手で描きました!
を数学的に証明するわけではありません。
でも、
この人のアカウントに結びついた作品が何年も存在している
↓
制作履歴が残っている
↓
その人の署名付きContent Credentialsがある
↓
同じ画風の作品が継続して発表されている
となれば、かなり強いのです。
だから今後のイラストレーターは、完成画像だけ残すのではなくて、制作の履歴を残すことが大事になると思います。
ラフ。
線画。
レイヤー付きの元データ。
タイムラプス。
制作途中の投稿。
完成作品。
そしてContent Credentials。
これ全部が、「これは私が作ってきた作品です」という証拠の束になります。
しかもC2PA側も、作者などのIdentityを作品へ検証可能な形で結びつける仕組みを整備しています。
AIが進化するほど、
「人間が描いたっぽい絵」ではなく、「この人が描いた絵」であること
が大切になっていくのだと思います。
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたサポートは、著書特典やきらら舎にて還元していきたいと思います。