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カレーチェーン大手の価格設定は、どこでズレ始めたのか

時々、無性にカレーが食べたくなることはありませんか。
そのとき、皆さんはどんなお店を選ぶでしょうか。専門店でしょうか、それともチェーン店でしょうか。例えば軽く飲んだ帰り道に小腹が空いたとき。そんな場面では、個人店よりもチェーン店を思い浮かべる人の方が多いはずです。
この「ふとした選択」の積み重ねこそが、外食ビジネスの正体です。

結論から申し上げます。
専門店トップのCoCo壱番屋は、現在の価格戦略を続ける限り、業績をじわじわと落としていく可能性が高いと見ています。
理由はシンプルで、外食というB2Cビジネスにおいて極めて重要な「ポジション」「価格」「体験」が噛み合わなくなり始めているからです。


B2Cビジネスの原則:価格は“価値の結果”です

B2Cビジネスの基本は、「誰に、どんな価値を、どの利用シーンで提供するのか」を先に定めることです。価格はその結果であり、目的ではありません。
外食産業では特に、価格は味・満足感・利用頻度・代替選択肢との相対評価で決まります。「高いか安いか」ではなく、「この体験にこの金額を払う意味があるか」が常に問われます。


外食産業は“日常”か“非日常”かに分かれます

外食ビジネスは大きく二つに分かれます。
日常を支える外食と、非日常を提供する外食です。
日常型は、価格、回転率、来店頻度、習慣化が命です。一方、非日常型は、世界観や体験価値で価格を正当化します。この二つは戦略が真逆であり、中間に位置すると最も苦しくなります。


ココイチは、明確に“日常型”の外食でした

ココイチの強みは、迷わない、失敗しない、一人でも入りやすい、味が安定している、という「安心感」でした。
この価値は、気軽に払える価格帯とセットで成立していました。しかし現在は、トッピングを少し重ねるだけで会計は簡単に1,000円を超えます。これは日常型外食としては、心理的な分水嶺を越えた価格帯です。


本記事の問題意識について(出典)

なお、本記事は、Yahoo!ニュースに掲載されたココイチの価格設定に関する記事をきっかけにしています。
価格上昇や客単価に関する事実関係は同記事に基づいています。本稿はそれを前提に、外食産業・B2Cビジネス全体の構造から考察したものです。



1,000円を超えた瞬間、競争相手は一変します

カレーというジャンルだけを見ても競合は非常に多いのが現実です。
個人経営のスパイスカレー専門店、カレー専門チェーン、さらには牛丼チェーンもカレーを提供しています。特に牛丼チェーンのカレーは、価格が抑えられ、提供スピードも早く、「この値段なら十分」と感じさせる完成度を持っています。


価格差を正当化する“決定的な味の差”はあるのか

ここで冷静に考える必要があります。
現在の価格帯で、「それでもココイチでなければならない」と言わせるほどの味のアドバンテージがあるか、という点です。
味の好みは人それぞれですが、一般論として見た場合、価格差を正当化できるほどの圧倒的な優位性があるかというと、正直そこまでではない、という評価が平均値ではないでしょうか。


店舗の“空気感”が、価格への違和感を増幅させています

もう一つ見逃せないのが、店舗構造そのものです。
ココイチの店舗を見渡すと、内装やレイアウトは牛丼チェーンと非常によく似ています。回転を重視した作りで、長居を前提としない空間です。
この時点で、来店客の頭の中には「大衆チェーンの価格帯」という無意識の前提がセットされます。

その空気感のまま着席し、牛丼を食べるより倍近い金額を支払う。
このとき生まれるのは「高い」という感想以上に、「なんとなく腑に落ちない」という違和感です。
価格そのものではなく、体験と価格の不一致が、不満を強めてしまうのです。


日常型外食における客単価アップのリスク

客単価を上げること自体が悪いわけではありません。原材料費、人件費、為替を考えれば値上げは不可避です。
ただし日常型外食が客単価アップでそれを吸収しようとすると、来店頻度が静かに下がります。炎上もしませんし、クレームも出ません。ただ、「今日はやめておこう」が少しずつ増えていきます。この静かな離脱こそ、経営上もっとも厄介です。


“無難で安心”という価値は、価格が低いから成立します

ココイチの「無難で安心」という価値は、価格が抑えられているからこそ成立していました。
価格が上がると、この無難さは「物足りなさ」に転びます。これは品質の問題ではなく、ポジショニングの問題です。


これはココイチだけの話ではありません

この構造は、外食に限らず、すべてのB2Cビジネスに共通します。
売上が鈍化し、単価を上げ、客数が減り、さらに単価を上げる。このループに入ると抜け出すのは容易ではありません。本来問うべきなのは、「誰の日常を支える存在なのか」「誰の非日常を演出する存在なのか」という一点です。


最後に:中途半端が、最もコストが高い

日常か、非日常か。
客数か、単価か。
どちらにも振り切れない戦略は、最もコストが高く、最も消耗します。
これはココイチに限らず、すべてのB2C事業者が一度は向き合うテーマです。

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