1.ギターとの出会い —そして再挑戦へ—
静かに閉じた扉と、再び開かれた瞬間
小学校低学年まではピアノを習っていたが、特別に音楽が好きだったわけではなく、楽譜の読み方も今ではすっかり忘れてしまった。
小学校から中学にかけては、音楽に対して関心が薄く、自発的に触れることもなかった。
転機となったのは高校時代である。周囲の友人たちが洋楽ロックを聴いていたことに影響され、ビートルズを聴き始めた。そこから音楽の世界に深く引き込まれ、ロックンロール、ジャズ、ソウル、ブルースと、ルーツ音楽を辿るように聴き漁る日々が始まった。
初めてのギター
大学2年の頃、ローリング・ストーンズの『Stripped』に収録されていた「Wild Horses」を聴き、アコースティックギターでこの曲のように弾き語りたいという衝動に駆られた。
その熱に突き動かされ、5万円ほどのモーリスのアコースティックギターを購入し、数冊の教則本も併せて買い込んだ。しかし、独学には限界があった。思うように弾けず、理想とは程遠い演奏にすぐに熱は冷め、ギターは部屋の片隅でインテリアと化してしまった。
この挫折のあと、約8年間、ギターを手に取ることはほとんどなかった。
再挑戦:心の隙間を埋めるように
再びギターと向き合うことになったのは2006年頃である。当時、恋人との別れを経験し、空いた時間と心の隙間を埋めたくなった。
そんなとき、エリック・クラプトンのDVD『Sessions for Robert J.』と出会った。
心を込め、しかし楽しそうにアコースティックギターでブルースを奏でるクラプトンの姿。
その演奏に心を打たれ、「自分も今のこの気持ちを音で表現したい」「こんなふうに歳を重ねていきたい」と強く感じ、再挑戦を決意した。
初期投資①:憧れのギターを手に入れる
まず取り組んだのは、自分自身の決意の証を示すことだった。
大学時代に購入したモーリスは弦高が高く、ハイポジションは押さえづらく、ブルースを演奏するには無理があった。
「どうせやるなら、憧れの一本を手に入れよう!!」と思い立ち、クラプトンも愛用するMartinの000-28を購入。クラプトン・シグネチャーモデル(000-28EC)と迷った末、煌びやかな音色を好んでレギュラーモデルを選んだ。価格は当時で約28万円。
高価な買い物ではあったが、「もしやめたとしても中古である程度戻るだろう」という冷静な判断もあった。
<Martin 000-28>

実際に弾いてみると、その違いは歴然であった。ソフトVシェイプのネックは握りやすく、エボニー指板は指に吸い付くように滑らかで、音色も美しい。ギターに触れること、弾くこと自体がとても楽しい。この一本が、練習を続ける強い動機となった。
初期投資②:学びの場を得る
もう一つの大きな投資は、音楽教室への入会である。
過去の経験から、独学には限界があると判断し、週末にヤマハの体験レッスンを受けてみた。そこで、思いがけない出会いがあった。
担当講師は自分よりも若かったが、熱心なブルース愛好家で、実際にアメリカに渡って現地での修行も経験していた人物だった。音楽の趣味も合い、その場で即入会を決意した。
毎週末、レッスンを通じてギターと向き合いながら、講師との音楽談義に花を咲かせる――そんな時間が、週末の大切な楽しみとなった。
「何かに導かれているのかもしれない」――そんな直感さえ覚えるような、不思議な巡り合わせであった。
(続く)
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