痛みは使い過ぎではなく、誤作動の結果かもしれない
──身体は、壊れる前に何度も教えてくれている
スポーツ障害の原因として、
「使い過ぎ」
という言葉はよく使われる。
いわゆるオーバーユースと呼ばれるものだ。
一般的な痛みの原因としても、よく挙げられる。
たしかに、同じ動作を繰り返せば、
身体への負担は蓄積する。
それは事実だ。
でも本当に、
それだけが原因なのだろうか。
25年以上、
人の身体を見続けてきて感じるのは、
同じ練習量でも、
故障する人としない人がいるということだ。
同じメニュー。
同じ時間。
同じ競技。
それなのに結果は違う。
そこには、
単なる個人差だけでは説明できない何かがある。
週6日激しく練習していても、
疲労や筋肉痛はあっても、
セルフケアや休養で回復していく選手がいる。
月に一度のメンテナンスだけで、
大きな故障なく競技を続けている人もいる。
その一方で、
週3回、2時間程度の練習でも、
肘や膝を痛めてしまう選手がいる。
普通に考えれば、
少し不思議な話だ。
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身体は本当に合理的に動いているだろうか
その前に、
ひとつ考えてみたい。
身体は本当に、
合理的に働いているだろうか。
イメージ通りに動けているだろうか。
呼吸は止まることなく機能しているだろうか。
重心は安定しているだろうか。
関節は、
本来の役割分担で働いているだろうか。
もしも、
動きのどこかに誤作動があるなら。
その状態での反復は、
良い動きの反復ではなく、
誤作動の反復になる。
オーバーユースというより、
「誤作動の使い過ぎ」
と言った方が近いケースも少なくない。
身体でなくても、
誤った使い方を繰り返せば、
故障の原因になる。
それは機械でも、
道具でも同じだ。
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痛みは故障ではなく、代償の請求書かもしれない
身体は賢い。
本来動くべき場所が動かなければ、
別の場所が代わりに頑張る。
股関節が働かなければ腰が頑張る。
呼吸が浅ければ首や肩が頑張る。
重心移動がうまくできなければ、
膝や足首がごまかしながら頑張る。
その代償は、
短期間ではさほど問題にならない。
むしろ、
よく頑張ってくれる。
けれど、
何千回。
何万回。
何十万回。
と繰り返されれば、
いつか限界がくる。
そのとき現れるのが痛みだ。
だから痛みは、
突然起きた故障というより、
身体から届いた請求書なのかもしれない。
そして、
代償はキッチリ請求される。
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成長期は大人と同じではない
もう一つ重要なのは、
成長期特有の問題だ。
子どもの骨には、
骨端線(成長軟骨)が存在する。
骨はまだ完成していない。
筋肉や腱が発達する一方で、
骨の成長が追いつかない時期もある。
その結果、
オスグッド病。
シーバー病。
野球肘。
腰椎分離症。
こうした障害が起きやすくなる。
この時期に必要なのは、
量や強度を増やすことより、
多様な動きを経験すること。
身体の使い方を学ぶこと。
そして、
十分な栄養補給と休養と回復だと思う。
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休養だけでは足りない
障害予防というと、
「休みなさい」
で終わることが多い。
もちろん休養は重要だ。
でもそれだけでは十分ではない。
睡眠。
栄養。
呼吸。
柔軟性。
セルフチェック。
こうした要素も同じくらい大切になる。
毎日のウォーミングアップの中で、
「今日は身体が重いな」
「右足が張っているな」
「呼吸が浅いな」
そうした変化に気づける選手は強い。
障害予防は、
痛めてから始まるものではなく、
日常の観察から始まる。
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見落とされがちな内科的問題
身体の不調は、
筋肉や関節だけではない。
貧血。
喘息。
不整脈。
脱水。
栄養不足。
女子選手であれば、
月経異常やエネルギー不足も重要な問題になる。
姿勢や動きだけを見ていても、
本当の原因を見落とすことがある。
身体は一つのシステムだ。
局所だけを見ると、
全体を見失う。
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「身体の声を聴く文化」を育てる
成長期の選手に一番必要なのは、
もっと頑張ることではない。
身体を感じることだ。
無理を隠さないこと。
痛みを我慢しないこと。
休むことを悪だと思わないこと。
自分の状態を言葉にできること。
その文化があるチームほど、
長く競技を続けられる選手が育つ。
スポーツの目的は、
故障することではない。
勝つことでもある。
でもその前に、
長く動き続けられる身体を育てること。
それが結果的に、
高いパフォーマンスにつながる。
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身体は、
ある日突然壊れるわけではない。
違和感として。
張りとして。
呼吸の浅さとして。
動きにくさとして。
何度もサインを送ってくれている。
だから障害予防とは、
身体を鍛えることだけではない。
身体の声を聴くこと。
その小さなノックに気づくこと。
身体は、
壊れる前に何度も教えてくれている。
その声に耳を傾けられる人ほど、
長く競技を楽しみ、
長く成長し続けられるのだと思う。
