クレオパトラ物語:第3話 王宮を追われた女王――砂漠から始まる逆襲
紀元前51年、父王の死によってエジプトの女王となったクレオパトラ。
しかし弟プトレマイオス13世とその側近たちとの対立は、やがて取り返しのつかないものになっていきます。紀元前48年頃、クレオパトラはアレクサンドリアを追われ、エジプト東部へ逃れることになります。そこで彼女が選んだ道は、降伏ではありませんでした。軍を集め、王座を取り戻す。
そして同じ頃、地中海の覇権をめぐって争っていたローマの二人の巨人、カエサルとポンペイウスの戦いがエジプトへ近づいていました。
一人の女王の運命と、ローマの歴史が交差する瞬間です。
王座を追われたクレオパトラ。彼女は、アレクサンドリアを離れました。
まだ20歳にも満たない若い女王でした。しかし、その目には敗北の色はありませんでした。王座を奪われたなら、自分の力で取り戻す。それがクレオパトラの決意でした。

紀元前48年頃。クレオパトラはエジプト東部へ向かいます。そして、軍を集め始めました。

一方、アレクサンドリアでは、弟プトレマイオス13世を中心とする政権が続いていました。少年王を支えていたのは、ポティヌス、アキラス、そしてテオドトス。彼らはクレオパトラの復帰を警戒していました。もし女王が戻れば、自分たちの政治的な立場が失われるからです。

やがて、二つの勢力は対峙します。王国の内部で、姉と弟による争いが、
本格的な内戦へと変わろうとしていました。
しかしその頃、エジプトの外では、さらに巨大な戦いが起きていました。
ローマです。ローマ共和国では、ユリウス・カエサルとポンペイウスが激しく対立していました。二人はかつて、ともにローマの政治を動かした人物でした。しかし、権力をめぐる争いは、ついに内戦へと発展します。カエサルはポンペイウスを追って、地中海を東へ進みます。

そして紀元前48年、ギリシャのファルサロスで、両者は決戦を迎えました。
結果は、カエサルの勝利。敗れたポンペイウスは、エジプトへ逃れます。
彼は、エジプト王家なら自分を助けてくれると考えました。

しかし、プトレマイオス13世の側近たちは、別の判断をします。ポンペイウスを殺害するのです。彼らは、勝利したカエサルに取り入ろうとしたのでした。そして、ポンペイウスを追ってきたカエサルが、アレクサンドリアへ到着します。そこでカエサルを待っていたのは、信じがたい光景でした。
かつてローマの最高権力者と争った男、ポンペイウスの首です。

カエサルは、これを喜ばなかったと伝えられています。むしろ、かつての政敵とはいえ、ローマ人であり、かつての同盟者でもあったポンペイウスの死を、悲しんだとされています。
そして、ここから歴史は大きく動きます。カエサルは、エジプト王家の争いに介入します。クレオパトラとプトレマイオス13世。二人の共同統治を、もう一度整理しようとしたのです。しかし、クレオパトラはアレクサンドリアに戻らなければなりません。問題は、どうやって戻るかでした。弟の側近たちは、クレオパトラを警戒しています。王宮へ堂々と入れば、命を狙われる可能性さえありました。

そこで、クレオパトラは大胆な行動に出ます。カエサルに直接会う。そして、自分の立場を自分の言葉で説明する。一人の女王として、ローマの最高権力者の前に立つのです。やがて、クレオパトラはアレクサンドリアへ戻ります。しかし、その方法には後世まで語り継がれる伝説が残っています。
クレオパトラは、絨毯に包まれてカエサルの前へ運び込まれたというのです。ただし、この有名な逸話には異説もあり、史実として細部まで確定しているわけではありません。確かなのは、クレオパトラが危険を承知で、カエサルとの直接交渉に踏み込んだこと。そしてここから、世界史を変える二人の関係が始まることです。
エジプトの若き女王と、ローマの英雄。
二人の出会いは、単なる恋物語ではありませんでした。
エジプトの王座。ローマの権力。そして地中海世界の未来。
すべてが、この二人の出会いに集まり始めていたのです。
次回。「カエサル、アレクサンドリアへ――運命の出会い」
若き女王クレオパトラは、ローマ最強の男カエサルを、自らの味方にできるのでしょうか。
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