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パパになって初めてわかったこと。#8|「パパの仕事って、何のためにしてるの?」と聞かれて、一瞬、黙ってしまった。


夕食のあと、テーブルで長男が宿題を広げていました。

僕はその横で、洗い物をしていた気がします。

そのとき、ふいに聞かれました。

「パパの仕事って、何のためにしてるの?」

深い意味はなかったと思います。子どもの、いつもの「なんで?」の延長です。

だから僕も、いつものように答えようとしました。

「お金を稼ぐためだよ」

そう言いかけて、少し止まりました。

間違ってはいません。働かなければ生活はできないし、家族を養うにはお金が必要です。

でも、口に出す直前で、なぜかつっかえました。

本当に、それだけなんだろうか。


給料の数字の、向こう側

子どもが生まれる前、仕事をする理由を聞かれたら「生活するため」と答えていたと思います。それで十分でした。

でも父親になってから、給料日に見る数字の意味が変わりました。

食費。電気代。子どもの服。学校で必要になるもの。これから増えていく教育費。

同じ金額なのに、その向こう側に家族の生活が見えるようになった。

「家族のために働く」という言葉の意味が、初めて少し分かった気がします。

でも「家族のため」だけにすると、苦しくなる

一時期、僕は全部を「家族のため」で説明していました。

疲れていても、家族のためだから頑張る。嫌なことがあっても、家族のためだから我慢する。父親なんだから働かないといけない。

責任はあります。簡単に投げ出せないのも事実です。

でも「家族のため」を、何でも我慢するための理由にしてしまうと、だんだん苦しくなります。

第7話で、「一人になりたい」と思った自分を責めていた話を書きました。

仕事も、たぶん同じでした。家族を大切にすることと、自分を全部後回しにすることは、同じではない。

僕の仕事は、誰かの一番いい日の裏側にある

ここで、自分の仕事の話を少しだけ書かせてください。

僕は着物レンタルの会社で、物流の仕事をしています。注文が入った商品をそろえて発送する。返ってきた商品を一点ずつ検品して、次にまた誰かが着られる状態に戻す。

汚れはないか。傷んでいないか。数は合っているか。

正直に言えば、単純作業に見える日もあります。同じことの繰り返しに感じる日もある。

でも、あるときふと思ったんです。

僕が今日検品しているこの一着は、どこかの家族の、特別な日に着られる。

七五三かもしれない。結婚式かもしれない。成人式かもしれない。

その人にとっては、人生で数えるほどしかない日です。何ヶ月も前から予定を立てて、写真を撮って、あとで何度も見返す日。

その日の朝に、汚れた着物が届いたらどうなるか。

考えると、少しだけ背筋が伸びます。

うちの子の七五三のときも、たぶん、どこかの誰かが同じように準備してくれていたはずです。

僕の名前は、その家族に伝わりません。感謝されることもありません。

でも、誰かの一番いい日は、こういう地味な作業の上に成り立っている。

そう思えたとき、「何のために働いているのか」の答えが、一つ増えました。

子どもは、親の背中で「仕事」を覚える

もう一つ、息子の質問から考えたことがあります。

子どもたちは、僕が働く姿をどう見ているんだろう。

朝「行ってきます」と出ていって、夜「ただいま」と帰ってくる。疲れている日もあれば、「今日は大変だった」と言う日もある。

たぶん、子どもにとっての「仕事」というイメージは、僕たち親の姿から作られていきます。

だとしたら、「仕事はつらいものだよ」だけを見せたくはない。

かといって、「仕事は最高に楽しい」と無理に演じる必要もないと思っています。それは嘘になるし、子どもはたぶん気づきます。

大変なこともある。嫌になる日もある。失敗もする。

それでも、誰かの役に立つことがある。できなかったことが、できるようになることもある。

そのくらいの姿を、見せられたらいい。

だから僕は、「好きなことを仕事にしなさい」とは言えません。現実には生活があるし、やりたいことだけを選べないこともある。

一つだけ伝えられるとしたら、働き方は一つじゃない、ということかもしれません。

会社で働きながら、別のことに挑戦してもいい。途中で学び直してもいい。失敗しても、また考えればいい。

守るものがあるから挑戦しない、ではなく。

子どもがいるからこそ、大人になっても新しいことを始めていいんだと見せておきたい。

そう思うようになりました。

息子には、もう一言だけ足した

もちろん、その場でこんな長い話はしていません。話しても、たぶん途中でどこかへ行ってしまいます。

だから、簡単に答えました。

「みんなが生活するためだよ」

そのあと、少し考えて、もう一言だけ足しました。

「あと、パパもいろんなことができるようになるためかな」

息子がどこまで理解したのかは分かりません。「ふーん」くらいだった気もします。

でも、その質問だけが、僕の中にずっと残りました。

パパになって初めてわかったこと。

父親になる前、仕事は僕自身の生活のためのものでした。

父親になって、そこに家族が加わりました。

そして今、もう一つ増えています。子どもに、どんな大人の背中を見せるのか。

仕事ができる父親でなくてもいい。たくさん稼ぐ父親でなくてもいい。何でも知っている父親でなくてもいい。

でも、失敗しても、考えて、またやってみる。そのくらいの姿は見せられたらいいなと思っています。

働く理由は、一つに絞らなくていいんだと思います。

お金のため。家族のため。自分のため。誰かの一番いい日のため。

たぶん、全部です。

明日も僕は仕事へ行きます。疲れて帰ってくる日もあるし、うまくいかない日もある。

それでも玄関を開けて「ただいま」と言えば、子どもたちが「おかえり」と言う。

そんな毎日の積み重ねを、大切にしたいと思います。

いつか子どもたちが働くようになったとき、自分なりの答えを見つけてくれたらいい。

その答えが、僕と違っていても。

普通の家庭の、普通のパパの話です。

次回予告

第9話|「もっと遊んであげればよかった」と思った夜。

写真フォルダを何気なく見返していて、少し前の写真で指が止まりました。

こんなに小さかったんだ。

あの頃の自分は、何をしていたんだろう。仕事。スマホ。疲れ。「あとでね」と言った回数。

過ぎてから初めて分かる、子どもとの時間について書きます。

前回の記事はコチラ→

「パパになって初めてわかったこと。」 30代会社員・2児の父が綴る、仕事と家族のリアル。


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