はじめに経理の人手不足が解消しない原因は属人化です

はじめに

経理の人手不足が解消しない会社は、例外なく現場は属人化しています。

そしてこの状態は、担当者が変わった瞬間に業務が持続的に回らない仕組みになっています。

これは、会社の業務が持続的に遂行できなくなる直前の状態です。

3500社以上のバックオフィスを見てきて、この結論に辿り着きました。

問題は人ではありません。業務の仕組みの問題です。

人手不足が原因で業務が回らないのではない。

人手不足を感じている経理現場では、次の状態が同時に起きています。

ベテラン担当者が朝から晩まで業務を抱えている

周りには何をしているか見えない

見えないから手伝えない

新人を入れても戦力にならず、ベテランの負担が変わらない

月次・年次決算の時期に休みが取れない

月末の経理現場を想像してください。Aさんは深夜まで仕訳を入力しています。隣の席の新人Bさんは、定時で帰っていきます。Aさんは新人に手伝ってもらいたい。けれど、何をどう頼めばいいかわからない。説明する時間がもったいない。だから自分でやる。これが毎月、毎年、続いていきます。

経営者は「人が足りない」と感じます。求人を出し、面接をし、採用します。しかし採用しても、ベテランの負担が減らない現象が起きます。

理由はシンプルです。新人に渡せる業務が、そもそも整理されていないからです。

新人が入った初日から、ベテランは「何を渡せばいいか」を考え始めます。しかし渡せる業務が整理されていないと、結局「請求書のファイリング」「振込データの入力」といった周辺業務だけが新人の仕事になります。本丸の判断業務は、ベテランが抱えたままです。

またベテランであればあるほど次のことを考えます
「私がやった方が早い」
「ミスを私がフォローしている」
この発言が出ると人が育ちません。
そもそもミスを許容できない仕組みや設計にも問題があります。

これがあると新人に仕事をやらせるのではなくベテランが仕事を抱える構図となります。

結果、採用コストだけが増えて、業務の負荷配分は変わりません。「人を増やしても解決しなかった」という結論にたどり着き、経営者は「うちの経理は特殊だから」と諦めます。この諦めが、属人化をさらに固定化させます。

採用ループ——人を増やすほど、解決から遠ざかります

人手不足の対策として採用を進めると、次の現象が発生します。

新人が入る → 既存担当者は「教える時間がない」と判断 → 周辺業務だけ渡す → 本丸の判断業務はベテランが抱えたまま → ベテランの負担は変わらない → 新人は戦力にならず「また人が足りない」と感じる → さらに採用。

このループは、業務の仕組みを変えない限り止まりません。

人を2人に増やせば、属人化リスクは2倍になります。3人なら3倍です。人を増やすほど、解決から遠ざかります。採用しても回りません。次の人が業務を再現できないからです。

人材紹介料は、即戦力の経理ポジションだと年収の30〜50%が相場です。年収500万円のポジションであれば、紹介料だけで150〜250万円。これに加えて、採用後の教育期間中はベテランが手取り足取り教える時間が発生します。この時間は、本来の仕訳・支払・決算業務から削り取られます。

採用がうまくいかなかった場合、あるいは採用した人がすぐに離脱した場合、状況はさらに悪化します。ベテランは新人の教育に使った時間を取り戻せず、本来の業務はさらに遅れます。これが「採用しても回らない」の実態です。

「採用すれば何とかなる」というのは幻想です。たまたま優秀な人が採用できたとしても、属人化は解消されていません。その人が辞めれば、また同じ問題が起きます。採用市場は会社側のコントロール外にあります。採用が成功しなくても回る業務の仕組みを作ること。これが本当の解決策です。

なぜ属人化が起きるのか——ベテランの誠実さが原因

ベテラン社員が仕事を抱える理由は、怠慢ではありません。一生懸命、自分の業務・責任を果たそうとしています。

ただ忙しいから、説明する時間が「ムダ」に見える

他人のミスを見ると「自分でやった方が早い」と確信する

完成度へのこだわりが、「任せる」ことへの不安を生む

優秀なベテランほど、職人気質の傾向があります。仕事は自分でやりきるもの、という誇りを持っています。完成度へのこだわりは、長年の責任意識から来るものです。だから「任せる」ことに不安を感じます。任せた結果ミスが起きれば、自分の責任になる。それなら自分でやる。この判断は、本人の中では合理的なのです。

これらは優秀さの裏返しです。知識やノウハウを「共有してください」と指示しても通じません。世界観が違うからです。個人の意識を変えようとすると、組織がぎくしゃくし、ベテランが離職する方向に進みます。

さらに、経営と現場の認識のズレが人手不足を固定化します。

経営は言います。「そこまで細かくやらなくていい」。現場は違います。ミスすれば責任を問われるため、細かく確認し、自分で抱え込み、他人に任せません。

たとえば月次の処理で、経営は「だいたいの数字でいいから早く出してほしい」と言います。現場は「正確に出さないと、後で間違いを指摘される」と思います。経営者は効率を求めます。現場は安全を求めます。両者の言う「正しい仕事の仕方」が根本的に違います。どちらも正しい主張をしています。どちらかが譲歩する問題ではありません。解決するのは業務の仕組みだけです。

3ヶ月に1度のイレギュラー処理も、人手不足感を増幅させます。たとえば外貨取引の特殊処理、決算月特有の引当金計上、滅多に来ない取引先からの請求書。毎回ベテランに確認して処理し、記録は残りません。「前回どう処理したか」はベテランの記憶の中にしかありません。

このパターンが積み重なると、「ベテランがいないと何も進まない」状態が恒常化します。そして、業務スケジュールがタイトであればあるほど、ベテランの離脱リスクが高まります。プレッシャーで疲弊し、休めない状態が続き、ある日突然辞める。離脱した瞬間、業務が止まります。

これは例外ではありません。

必ず発生します。

クラウド会計を入れても、属人化は解消されません

「クラウド会計ソフトを入れたから経理は楽になった」と感じている会社も多いはずです。しかし、月次が締まらない状態は変わっていないのではないでしょうか。

AIやクラウド会計を使うと、仕訳がどんどん進みます。これは効率化に見えますが、最も気づきにくい属人化を生みます。

たとえば「この交際費は接待か会議費か」「この経費は資産計上か費用計上か」。判断が分かれる仕訳は、毎月の取引の中に何件もあります。ベテランは経験で判断しています。しかしその判断基準は、ベテランの頭の中にしかありません。

AIがそもそもこの勘定科目でいい、と予め選択されています。ただその選択された勘定科目は本当に正しいでしょうか?間違えたら税務調査で指摘をされます。場合によっては追徴課税となります。その時、責任を取る人は誰でしょうか?Open AIやGoogleは責任を取ってくれません。責任を取るのは仕訳を入力した自分、AIが出した選択肢を選択・登録した自分、ひいてはその会社です。

クラウド会計を入れて変わるのは入力速度だけです。判断が必要な仕訳は、結局ベテランが行うか、ベテランの判断基準を真似るしかありません。基準が言語化されていない以上、新人がクラウド会計を使っても、ベテランと同じ仕訳は作れません。

AIが自動仕訳を出してくる速度が速く、人がチェックする間がありません。「AIが出した結果だから正しい」という思い込みが生まれます。これは非常に危険なことです。新しい担当者はあまり理解をせず承認をして、次にすすめてしまいます。ここで担当者が判断基準を言語化していなければ、間違いは見抜けません。結果、間違ったまま月次が締まります。

担当者が変わると、同じ取引でも違う仕訳が起票されます。なぜならルールが担当者の頭の中にあるからです。ツールが速くなるほど、チェックの仕組みの重要性が上がります。「自動化=チェック不要」ではなく、「自動化=チェックの仕組みが前提」と考える必要があります。

解決策|業務の仕組みづくりの順番

第一段階:棚卸し

「誰が担当しているか」ではなく「誰でも回せるか」の視点で業務を一覧化します。月次の処理だけでなく、3ヶ月に1度のイレギュラー、年次のみ発生する処理、決算特有の判断業務もすべて出します。「請求書発行」のような大きい単位ではなく、「取引先マスタの登録」「請求金額の計算」「請求書の発送」「入金消込」と細かく分解します。

第二段階:分類

判断が必要な業務:社内に残す

定型処理:標準化して外部委託・自動化する

例外処理:ルール化して誰でも対応可能にする

判断が必要な業務とは、たとえば「この支払いを月次で計上するか、翌月に回すか」といった経営判断に関わるもの。定型処理は、たとえば「請求書を受け取って勘定科目を振り、振込データを作成する」といった、ルール化できるもの。例外処理は、年に数回しか発生しない特殊取引です。

第三段階:標準化

定型処理を外に出すには、出せる状態にする事前の準備が必要です。誰が見ても同じ結果になる手順、判断基準、使う資料の場所、保存先のルールまで言語化します。たとえば「3万円以上の経費は管理部承認」「外注費は事前見積必須」といった具体的なルールに落とします。この準備なしに丸投げすると、属人化が外部に移るだけで何も解決しません。

第四段階:可視化

進捗・残件・ミス件数が見える状態を作ります。見えれば助け合えます。見えないから孤立します。Excelやスプレッドシートで進捗ボードを作るレベルから始めて構いません。大事なのは「誰が・何を・いつまでに・どこまで進めたか」が見える状態を作ることです。

業務の仕組みの前提は、人は弱いという発想です。面倒を避ける。忘れる。意志は続かない。「なぜやらないんだ」ではなく「やらなくて済む仕組みがなかっただけ」と捉え、チェックリスト・アラート・進捗共有で補います。

そして、変更があれば必ず合意形成を取ります。「もっと効率的なやり方があったら修正しておいて」という指示は、属人化の温床です。個人の判断で勝手に手順が変わると、マニュアルと実態が乖離していきます。変更には合意のプロセスを必ず入れる必要があります。

AI時代には、AI-readyなバックオフィスの構築が必要です。

属人化されていない業務だけがAI化できます。

最後に

BackofficeForceは、属人化を解消し、AI-readyなバックオフィスを構築する会社です。

BackofficeForceは、このような問題を業務の仕組みから解決します。

人手不足は属人化の結果です。人を増やす前に、業務の仕組みを増やしてください。

問題は人ではありません。業務の仕組みです。そして属人化は業務の仕組みでしか解決できません。

この記事を読んで「うちの会社のことだ」と感じた方は、すでに第一歩を踏み出しています。属人化は見えにくい問題です。見えた瞬間が、解決の出発点です。

これは予想ではありません。

すでに起きている現実です。

関連記事

採用してもバックオフィスの問題が解決しない理由はこちらに詳しく書いています。

https://note.com/lofty_canna4368/n/n9021163cdbbb

経理の引き継ぎが失敗する根本的な原因についてはこちらをご覧ください。

https://note.com/lofty_canna4368/n/n266e9eca4c2a

属人化による経営損失、見えないコストの正体についてはこちらで詳述しています。

https://note.com/lofty_canna4368/n/n64ec2c801ae8

バックオフィスの仕組み化が失敗する理由はこちらです。

https://note.com/lofty_canna4368/n/n8d8362f896ae

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