バックオフィスの品質が安定しない理由|原因は属人化にある

はじめに

「うちのバックオフィス、なんか間違いがちょくちょくあって、安定しないんですよね」

3500社以上のバックオフィスを見てきて、この言葉を何度聞いたかわかりません。

そしてたいてい、こう続きます。

「担当者のスキルが低いのか」「チェックが甘いのか」「教育が足りないのか」

しかしこれはすべて間違いです。

問題は人ではありません。「仕組み」です。

この前提を間違えた瞬間、どれだけ対策を打っても同じ問題が繰り返されます。品質が安定しない会社に共通するのは、対策の方向を間違えていることです。人を変え、教育を強化し、チェックを増やす。しかし何も変わらない。なぜなら、根本にある「仕組み」が変わっていないからです。

なぜ品質は安定しないのか——属人化という構造

品質が安定しない理由はシンプルです。

属人化しているからです。

ただし、ここで重要なのは属人化の定義です。多くの人は「特定の人しかできない状態」を属人化だと考えています。しかし本質は違います。

属人化とは「仕組みが存在しない状態」です。

仕組みがない状態では何が起きるか。担当者ごとにアウトプットが変わる。判断基準が人ごとに違う。作業手順が統一されない。イレギュラー対応が個人依存になる。つまり、同じ業務なのに「別の仕事」になっています。この時点で品質は崩れています。

だから人を変えても解決しません。仕組みが変わっていないからです。優秀な人が入っても、その人が同じ構造の中で仕事を始めた瞬間から、属人化は再び加速します。

現場で起きている本当のこと

多くの会社では、次のような状態が日常になっています。

Aさんは厳しくチェックする。Bさんは問題ないと判断する。引き継ぎ後に突然ミスが増える。ベテランがいないと不安になる。チェックしているのにミスが防げない。

一見すると業務は回っています。しかし実態は違います。「安定している」のではなく「問題が見えていない」だけです。

ここに最も危険な構造があります。ベテランが業務を抱え込む。周りには見えない。表面上は回っている。この3つが重なると、経営者は安心します。しかし中身は完全なブラックボックスです。

○○さんの判断でやっている、これは完全なブラックボックス状態。これはよくある話です。
ルールがないからこうなります。

また職人気質の優秀な担当者ほど、自分でやった方が早いと仕事を抱えたがります。
説明する時間・教える時間が「ムダ」に見える。他人のミスを見ると「自分でやった方が早い」と確信する。こうして業務は自然に属人化していきます。悪意はありません。誠実さから来ています。だからこそ、設計で補うしかないのです。

そして職人気質の優秀な担当者ほど、間違いの原因を、その人のスキル不足と断定する傾向があります。「私だったらすぐできる」、「これは簡単」。その優秀な人の物差しではかれば、エラーはすべて意識の欠如から生まれるものと断定されるケースが多いです。でもそうではありません。本当にやるべきは優秀でない人でも、仮に意識が欠如していたとしても業務が回るように設計することです。

業務は回っているときこそ設計するのが鉄則です。

担当者がいなくなった後に初めて問題が表面化するのでは手遅れです。

属人化が品質を壊す3つのメカニズム

① 判断基準がバラバラになる

品質とは何か。判断基準です。この基準が人によって違う状態では、品質は絶対に統一されません。

ここで重要なのは、これは能力の問題ではないということです。判断基準が言語化・共有されていない、ただそれだけです。

バックオフィスで仕事の説明をするときに「1言ったら10わかる」という前提に立ってしまうから、基準が伝わらない。伝える側は時間がないから端折りたい。聞く側は迷惑をかけたくないから深く聞かない。双方が抽象的なまま終わらせている。この構造が判断基準の属人化を生み出しています。

説明は「1言ったら1伝わる」設計で積み上げるしかありません。

② イレギュラーが個人の頭の中に蓄積される

業務の件数でいえば通常業務が9割・イレギュラーが1割です。しかし時間の使い方は逆です。イレギュラーに9割の時間が使われます。

そしてこのイレギュラーは記録されません。得意先の例外対応は営業部と口頭調整。仕入先の条件変更は調達部と口頭調整。決算の特殊処理は税理士や社長と口頭調整。急いでいるから記録より解決を優先する。「この件だけ」と思って残さない。

口頭調整は「その場の解決」であり「組織の資産」ではありません。担当者が辞めた瞬間に、その知識は消えます。

さらに問題を複雑にするのが「3ヶ月に1度のイレギュラー」です。毎日来る業務は体が覚えます。でもたまにしか来ない業務こそ設計しなければ必ず積み残しになる。3ヶ月後に来たとき、前任者も記憶が曖昧。当時の営業担当も違う人になっています。これが品質崩壊の正体です。

③ チェックが機能しなくなる

多くの会社は「チェックを増やせば品質が上がる」と考えます。しかし現実は違います。チェック自体が属人化します。何を見るかが曖昧。どこまで見るかが人によって違う。基準が存在しない。この状態ではチェックしている「つもり」になるだけです。

さらにダブルチェックも万能ではありません。同じ前提で見れば、同じミスを見逃します。チェックの質が担当者の能力に依存してしまう。

最も有効なのは推移によるチェックです。前月・前年同月との比較でトレンドから外れた数値を検知する。「この数字は正しいか」ではなく「この数字は自然か」で判断する。少ない工数で異常を検知できる唯一の方法です。

よくある誤解——すべて間違っています

「マニュアルを作れば解決する」

機能しません。

まず、属人化している業務は言語化が難しい。ベテランほど体で覚えているから、言語化の必要性を感じていません。優秀さと言語化力は別の能力です。

さらに深刻な問題があります。マニュアルは基本的に読まれません。

今すぐ困っていないから優先順位が下がる。ページ数が多いと読む気が失せる。どこが重要かわからない。困ったときに見ればいいと思っている——これは怠惰でも悪意でもなく、人間として自然な心理です。「見てください」は指示ではなく期待。期待は設計に変える必要があります。

マニュアルは「渡すもの」ではなく「使われる仕組みとセットで設計するもの」です。文章だけのマニュアルには意味がない。画像と共に「どこを確認するか」を明示する。業務が発生したタイミングで開く導線を作る。重要箇所を対面で指さして伝える。これが設計です。

「教育すれば解決する」

解決しません。
個人の能力に依存した品質は、その人が辞めた瞬間に消えます。

「採用すれば解決する」

むしろ悪化します。優秀な人ほど「自分でやった方が早い」と判断します。仕組みがない状態で人を増やすと、業務が分散・責任が曖昧・判断がバラバラになります。属人化が拡大します。

採用前にやるべき順番があります。①業務を分解する→②判断基準を整理する→③進捗を可視化する→④標準化する→⑤その後に採用する。この順番を間違えると、採用するほど属人化が広がります。

解決策——構造を作るしかない

ではどうすればいいのか。答えは1つです。構造を作ること。そしてその前提は性弱説です。

「任せれば正しくやってくれるはず」「渡せば読むはず」「伝えればわかるはず」——この性善説の前提で設計するから属人化が繰り返されます。人は弱い。面倒を避ける。報告を怠る。自分を管理しようとしない。この前提で、それでも業務が回る仕組みを設計する。これが持続可能な仕組みの思想です。

① 業務を分解する

「なんとなく」を排除する。どの資料を見るか、どこを確認するか、何を判断するか、いつやるか——ここまで分解します。「簡単です」という言葉は使いません。前任者の「簡単」は20年の経験値に基づいています。「簡単」という言葉を使った瞬間、1割のイレギュラーの存在が隠れます。そして「簡単と言われた」後任者は困っても相談しにくくなります。

さらに、業務の説明はやり方だけでは機能しません。ファイルがどこに保存されているか、どこから入手するか、どのタイミングで必要になるか——これもセットで説明が必要です。やり方を知っていてもファイルの場所がわからなければ動けません。引き継ぎは1度では完成しません。「1回説明した」は引き継ぎの完了ではなく、引き継ぎの開始です。

② 判断基準を言語化する

特に重要なのはイレギュラーです。どんなケースがあるか、どう判断するか、なぜそう判断するか——ここを残さない限り、品質の属人化は必ず再発します。

認識齟齬は相手に期待するから起きます。「伝わっているはず」「わかっているはず」が品質崩壊の根本原因です。期待を前提にしない設計が仕組み化の出発点です。

③ 分業化して複数人で回す

人は複数のことを同時にできません。専任化する。メイン+サブの2名体制にする。「知っている人が1人しかいない」状態は最大のリスクです。

さらに、仕組みを考える人と作業する人は分ける必要があります。1人に二役をやらせない。設計と作業では求められる思考が根本的に異なります。作業に追われると設計を考える時間がなくなり、設計者が作業も担うと「自分のやりやすい方法」に最適化されて「誰でも回る設計」にならない。

④ チェックを設計する

事前チェック→処理→事後チェック、ここまでで1つの業務です。チェックを省略した仕組みは半製品です。ダブルチェックではなく推移によるチェックで異常を検知する仕組みを作る。これが品質を構造で担保する唯一の方法です。

最後に——強い会社は業務設計に依存する

品質の問題は現場の問題ではありません。経営問題です。

ベテランがいれば回る会社は、ベテランが辞めた瞬間に止まります。これは例外ではありません。必ず起きます。3500社以上のバックオフィスを見てきて、この光景を何度も見てきました。

「もっと早く仕組みを作っておけばよかった」

この後悔をなくすこと。それが私がBackofficeForceを作った理由です。

問題は人ではありません。「仕組み」です。

強い会社は人に依存しない。業務設計に依存する。

同じ問題を繰り返したくない方はフォローしてください。

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筧 智家至 公認会計士・税理士 BackofficeForce株式会社 代表(12年・3500社以上支援)

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