経理採用ができない原因は属人化です|対策も解説

はじめに

経理採用ができない会社は、例外なく属人化しています。

属人化が起こると会社のバックオフィス業務が持続的に遂行できなくなる直前の状態となります。

属人化とは、仕組みが存在せず、人に依存している状態です。

問題は人ではありません。業務の仕組みの問題です。

3500社以上のバックオフィスを見てきて、この結論に辿り着きました。

経理採用の現場で実際に起きていること

求人を出しても応募がこない。応募があっても面接で会いたいと思える人がいない。やっと採用できても半年で辞めてしまう。

経理採用の現場で起きているのは、こうした表面的な「人手不足」ではありません。属人化した業務を、属人化したまま引き継ごうとして失敗する構造です。

2026年の経理職有効求人倍率は4.2倍です。実務経験5年以上の即戦力は、大手・外資系が年収800万円以上で確保しています。中小企業が年収500万円前後で募集しても、応募があるのは実務未経験層か、特定ソフトしか使えない層が中心です。

採用失敗時のコストは平均380万円とされています。内訳は紹介料、教育費、機会損失。これだけ投じても、採用した人材が数年で離職するケースが多く発生します。

採用に成功しても、別の問題が発生します。業務が属人化しているため、新人が戦力化するまでに半年以上かかります。「教える時間がない」と既存担当者が不満を持つ。新人は孤立し、退職する。さらに人手不足が深刻化する。

この循環が続くと、採用部署の疲弊と経営者の不安が同時に進行します。「また辞めたら会社が止まる」という不安が、経営判断の足を引っ張ります。新規事業の検討、システム投資の判断、組織再編の決断。すべてが「経理が回るかどうか」に縛られるようになります。経営者の頭の中の何割かが、常にバックオフィスの不安に占有されている状態です。これでは攻めの経営はできません。

採用だけに380万円を投じた結果、既存のベテラン担当者はさらに疲弊します。新人が戦力化しないため、実務は既存担当者に集中し、残業時間が増えます。結果として、既存担当者も離職します。ベテランを失った組織に残るのは、未熟な採用者と、属人化したままの業務です。この状態から立て直すには、さらに数年の時間と数千万円のコストが必要になります。

採用の失敗は、単なる人員補充の失敗ではなく、組織全体の資産を削る投資の失敗です。

原因は採用市場ではなく、業務の仕組みです

経理採用ができない原因は属人化です。

実務スキルのある優秀な人を採用しなければいけない、ということが属人化そのものです。
属人化とは、仕組みが存在せず、人に依存している状態です。
本来的には実務スキルのない人でも業務が回る状態を目指さなければいけません。

採用できない原因を「市場の需給ギャップ」として処理すると、対策は「もっと年収を上げる」「もっと求人媒体を増やす」になります。しかし、それでは解決しません。年収を上げても、応募者と業務がマッチしなければ早期離職します。求人媒体を増やしても、要件が曖昧なままでは応募者は集まりません。

仕組みが存在しない状態では、次の3つの問題がおきます。

業務がブラックボックスなので、採用要件が書けません。「うちの経理ができる人」という曖昧な要件しか出せず、求人票には「経理経験者歓迎」としか書けません。

採用要件が曖昧なので、ミスマッチが発生します。応募者は自分のスキルが合うかわからないまま面接に来ます。会社側も判断基準がないので、なんとなく「経験がありそうな人」を選びます。

ミスマッチのまま採用するので、早期離職します。入社後に「思っていた業務と違う」「ベテランから教えてもらえない」「自分の判断で進めていいかわからない」となり、3ヶ月で辞めます。そして会社側は「最近の若い人はすぐ辞める」と結論づけて、また同じパターンを繰り返します。

採用市場の問題だけを取り出して対処しても、解決には至りません。

なぜ採用しても解決しないのか

属人化している状態で採用を進めると、属人化は拡大します。縮小ではなく拡大です。

「採用すれば何とかなる」というのは幻想です。たまたま優秀な人が採用できたとしても、属人化は解消されていません。その人が辞めれば、また同じ問題が起きます。採用市場は会社側のコントロール外にあります。採用が成功しなくても回る業務の仕組みを作ることが、本当の解決策です。

そしてもう一つ、根本的な問題があります。仕事ができる人を前提にした業務の仕組みは危険です。

「任せれば正しくやってくれるはず」、「渡せば読むはず」、「伝えればわかるはず」、「マニュアルがあるから大丈夫」。この前提で設計された業務の仕組みは、優秀な人が辞めた瞬間にすべて止まります。

マニュアルがあったとしても適切に解読できなければ意味がありません。
マニュアルが誰もがわかる状態になっているかが重要です。

優秀な人がいる間は安定して見えます。しかし採用できなくなった瞬間、業務が回らなくなります。優秀な人を採用できる保証はどこにもありません。

仕事ができなくても回る業務の仕組みを作ること。新卒でもミスが起きない業務の仕組みを作ること。これが属人化を防ぐ唯一の方法です。

「できる人が作業をしている状態」は、業務の仕組みが整っているサインではありません。むしろ業務の仕組みが不在というサインです。できる人は仕組みを作る側に回るべきで、作業を抱える側にいてはいけません。

ベテランが仕事を抱える本当の理由

ベテラン社員が仕事を抱える理由は、怠慢ではありません。責任感から来ています。

ただ忙しい。だから次のように考えます。

説明する時間が「ムダ」に見える。他人のミスを見ると「自分でやった方が早い」と確信する。完成度へのこだわりが、「任せる」ことへの不安を生む。

優秀なベテランほど、職人気質の傾向があります。仕事は自分でやりきるもの、という誇りを持っています。完成度へのこだわりは、長年の責任意識から来るものです。だから「任せる」ことに不安を感じます。任せた結果ミスが起きれば、自分の責任になる。それなら自分でやる。この判断は、本人の中では合理的なのです。

「共有してください」と指示しても通じません。世界観が違うからです。個人の意識を変えようとすると、本人の誇りを否定することになり、離職につながります。

属人化解消は「人を変える」のではなく「業務の仕組みで補う」こと。誠実さを発揮する場所を「個人で抱える」から「仕組みで残す」に変える業務の仕組みが必要です。

ここで重要なのは、ミスを意識の問題にしないことです。「もっと注意して」「気をつけて」「責任感を持って」という精神論では、属人化は解消されません。業務そのものの「わかりにくさ」「間違いやすさ」を見直し、業務の仕組みを作り直す必要があります。

採用の前にやるべき5段階の業務の仕組みづくり

採用の前にやるべき順番があります。

第一段階:業務の分解

誰が担当しているかではなく、どの業務があるかで棚卸しします。「経理」のような大きい単位ではなく、「請求書の受領」「金額の確認」「勘定科目の判定」「振込データの作成」と細かく分解します。月次の処理だけでなく、3ヶ月に1度のイレギュラー、年次のみ発生する処理、決算特有の判断業務もすべて出します。

第二段階:判断基準の整理

「なぜその処理をするのか」を、1つの業務ごとに言語化します。手順書を作るのではなく、判断基準を抽出します。たとえば「3万円以上の経費は管理部承認」「外注費は事前見積必須」といった具体的なルールに落とします。

第三段階:進捗の可視化

誰がどこまで進めているか、見える状態を作ります。見える状態になって初めて、属人化している業務が明確になります。Excelやスプレッドシートで進捗ボードを作るレベルから始めて構いません。大事なのは「誰が・何を・いつまでに・どこまで進めたか」が見える状態を作ることです。

第四段階:標準化

誰が操作しても同じ結果が出る状態を作ります。この段階でシステムや外部委託の検討に入ります。

第五段階:採用

標準化された業務がある状態で採用すれば、採用要件は明確です。新人は即戦力化しやすく、ミスマッチも減ります。離職率も下がります。

この順番を逆にすると、採用を繰り返しても属人化は解消しません。5年・10年と同じ問題を繰り返すことになります。

業務の仕組みの前提は、人は弱いという発想です。面倒を避ける。忘れる。意志は続かない。「なぜやらないんだ」ではなく「やらなくて済む仕組みがなかっただけ」と捉え、チェックリスト・アラート・進捗共有で補います。この発想で業務の仕組みを作ると、採用の成否が業務の継続性に影響しなくなります。

採用に失敗している会社は、ほぼ例外なく「優秀な人が来れば回る」という期待で業務の仕組みを作っています。しかし、毎回100%完璧な採用ができる会社はほとんど存在しません。採用が成功しなくても回る業務の仕組みを先に作ることが、経営の守りの基本です。

そして、業務の仕組みが整った後であれば、採用以外の選択肢も検討できるようになります。一部の定型処理は外部委託や自動化に切り替える、AIツールで補完する、といった判断が可能になります。業務の仕組みがない状態でこれらを導入しても、属人化が外に移るだけで何も解決しません。仕組みが先、ツールは後です。

最後に

BackofficeForceは、属人化を解消し、AI-readyなバックオフィスを構築する会社です。

14年・3500社以上のバックオフィス支援実績を持ち、公認会計士・税理士が代表を務めています。経理・財務・労務・総務を横断して業務の仕組みづくりを行い、誰が操作しても同じ結果が出る業務の仕組みを構築します。

経理採用ができない原因は属人化です。

人を1人増やす前に、まず業務が「誰でも回せる状態」になっているかを確認してください。その判断が、将来の数千万円の損失を防ぎます。

問題は人ではありません。業務の仕組みです。そして属人化は業務の仕組みでしか解決できません。

この記事を読んで「うちの会社のことだ」と感じた方は、すでに第一歩を踏み出しています。属人化は見えにくい問題です。見えた瞬間が、解決の出発点です。

これは予測ではありません。

すでに起きている現実です。

同じ問題を繰り返したくない方はフォローしてください。

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経理引き継ぎが失敗する根本的な原因についてはこちらをご覧ください。

https://note.com/lofty_canna4368/n/n266e9eca4c2a

属人化による経営損失、見えないコストの正体についてはこちらで詳述しています。

https://note.com/lofty_canna4368/n/n64ec2c801ae8

バックオフィスの仕組み化が失敗する理由はこちらです。

https://note.com/lofty_canna4368/n/n8d8362f896ae

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