予算策定の全体像を10分で解説 〜経理・管理会計・FP&Aが「しんどい」を抜け出すための地図〜
「予算って、結局なにをどこまで作れば正解なの?」
「現場が数字を出してくれない。集めても“根拠が薄い”と言われる」
「予算会議で詰められるのはいつも経理。なのに裁量はない」
――これ、SaaSベンチャーの経理/FP&Aあるあるです。
そして厄介なのは、予算策定は“作業”ではなく“意思決定の設計” だということ。だから、Excelのスキルだけでは解決しません。
今日は、忙しい人向けに「10分で全体像が掴める」ように、予算策定を 1枚の地図 として整理します。
(読み終えるころには、あなたの予算づくりが「毎年苦行」から「武器」に変わるはずです)
1. 予算策定の目的は「数字を当てること」ではない
いきなり核心ですが、予算策定の目的は “当てる” ことではありません。
目的はこの3つです。
会社の優先順位を決める(配分の意思決定)
実行できる状態に落とす(責任と手段を決める)
予実で学習し続ける(早くズレに気づく)
ここがズレていると、予算は毎年こうなります。
数字は出たけど、誰も守らない
作った瞬間から陳腐化
予実差異が出ても「想定外」で終わる
だから最初に言いたい。
予算は“正解の数字”ではなく、“前に進むための仕組み” です。
2. 予算策定の全体像は「5ステップ」
全体はこの5つに分けると一気に楽になります。
2-1. 方針を決める(前提条件)
成長優先?黒字化優先?
どこに投資する?どこは絞る?
今年は「勝ち筋」を何に置く?
ここが曖昧だと、各部門の数字がバラバラになります。
予算が揉める会社は、だいたい方針が曖昧です。
経理/FP&Aが最初にやるべき仕事は、数字を集めることじゃなく、
「会社の方向性を言語化すること」。
2-2 ドライバーを決める(数字の“エンジン”)
予算は「売上−費用」ですが、予算の本体は実はここです。
売上のドライバー(例:新規獲得数、単価、解約率、稼働率)
コストのドライバー(例:採用人数、広告投資、外注比率)
特にSaaSなら、ここが王道。
新規MRR / Expansion / Churn
CAC / Payback / NRR
人件費(採用計画)と開発費(体制計画)
ドライバーが決まれば、数字は勝手に積み上がります。
逆にドライバーが決まっていないと、Excelでいくら整えても“占い”になります。
2-3 部門に落とす(責任を置く)
予算は「経理が作るもの」ではありません。
でも現実は、人が少なくて全部経理に集中しがち。
だからこそ、ここで設計します。
どの数字を誰が持つか
どこまでを部門、どこからを経理/FP&Aが支援するか
おすすめは、予算項目ごとに責任を明確化すること。
売上(営業責任者)
採用計画(人事責任者)
マーケ投資(マーケ責任者)
開発体制(CTO/開発責任者)
経理/FP&Aは “統合と検証” に徹する
言い方はこうです。
「数字を作るのは各部門。私たちは、会社として整合が取れているかを検証して、意思決定に使える形にします」
これができると、経理の孤独が減り、責任が分散します。
2-4 予算会議で決める(意思決定の場)
予算会議は、“詰める場”ではなく “選ぶ場”です。
よくある失敗は、「全部を完璧にしてから出す」こと。
そうすると会議はこうなります。
細部の指摘大会
部門の言い訳大会
最後は「気合でやる」に収束
おすすめは、会議に持ち込む資料を 2種類に分けること。
決める資料(A案/B案/トレードオフ)
説明資料(前提、計算根拠、仮説)
そして会議では必ずこう問いかける。
「どこに投資するか?」
「何を捨てるか?」
「この数字が崩れたら、どこから手を打つか?」
予算会議で“本当に決めるべきこと”は、数字ではなく優先順位です。
2-5 運用する(予実の仕組み化)
予算は「作った瞬間」から劣化します。
だから運用が本番です。
最低限、これだけは仕組みにしてください。
月次でドライバーKPIを確認
予実差異は「原因」ではなく「次の打ち手」に変換
3ヶ月ごとにローリング(見直し)
SaaSなら特に、営業・解約・採用が少しズレるだけでPLが崩れます。
予算を“守る”ではなく、“更新する”感覚が必要です。
3. 「予算策定がしんどい会社」の共通点
ここ、刺さると思うので言います。
方針がないのに数字を集め始める
ドライバーがないので “各部門の気分” で数字が出てくる
予算会議が「詰める場」になっている
運用がなく、作りっぱなし
結果、責任感の強い経理が背負う
でも逆に言うと、改善ポイントが明確です。
一個ずつ整えるだけで、体感は劇的に変わります。
4. 10分でできる「明日からの改善アクション」
最後に、忙しいあなた向けに “最小の一手” を置いておきます。
✅ アクション1:前提条件を1枚で定義する
成長率
採用枠
投資上限
黒字化タイミング
これを「会社として決める」。
✅ アクション2:ドライバーを3つに絞る
SaaSならまずはこの3つでOK。
新規獲得(件数 or MRR)
解約(Churn)
採用(人員計画)
✅ アクション3:予算会議を「選ぶ会」にする
A案/B案を用意して、トレードオフを明確化する。
「売上を取りに行くなら採用を増やす。
黒字化を優先するなら投資を絞る。どっちを選びますか?」
これが言えると、経理の立場は一段上がります。
まとめ:予算は“経理の罰ゲーム”ではなく“武器”になる
予算策定がしんどいのは、あなたの能力不足ではありません。
仕組みがないのに、重要な意思決定を回そうとしているからです。
そして、責任感が強い人ほど「全部自分でやり切ろう」として潰れます。
でも本当は、あなたがやるべきは作業ではなく、
意思決定を前に進める設計です。
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