財務モデルの作り方の基礎 〜経理・管理会計から始める“武器化”の第一歩〜
「財務モデル」って聞くと、どこか“投資銀行っぽい”“外資コンサルっぽい”匂いがして、経理の自分には関係ないものに感じる人も多いと思います。
でも現実は逆で、**財務モデルは“経理が最も強くなれる領域”**です。なぜなら、モデルの土台は「会計」「数字の整合性」「現実の業務」を理解している人が圧倒的に有利だから。
そしてもう一つ。
SaaSベンチャー企業で、経理に予算・中計・IPO準備・予実管理が集中している状況だと、財務モデルは「余計な仕事」ではなく、仕事を減らすための仕組みになります。
“毎月、差異を追いかけて疲弊する”状態から抜け出すために、モデルが必要なんです。
この記事では、未経験でも作れるように、財務モデルの基礎を「目的→構造→作り方→落とし穴→運用」の順に、経理目線で解説します。
1. 財務モデルって、結局なに?
一言で言うと、財務モデルは
「事業の動き(KPI)を入力すると、PL/BS/CFが自動で出てくる仕組み」
です。
経理の仕事は「過去の数字を正しく締める」ことが多い。
一方、財務モデルは「未来の数字を再現性を持って描く」道具です。
たとえばSaaSなら
新規獲得数(New logo)
平均単価(ARPA)
解約率(Churn)
アップセル率(Expansion)
人件費(採用計画)
広告費(CAC)
こういう“現場の動き”が入ると、
ARR→売上→粗利→営業利益→キャッシュ残高 まで連動して出てくる。
つまり、「経営の意思決定」を直接支えるのが財務モデルです。
2. 財務モデルがある会社とない会社の差(経理がしんどい理由の正体)
財務モデルがない会社では、予実管理はこうなりがちです。
予算と実績の差異を毎月作業で作る
差異の原因が“感想”になる(営業が強気、開発が想定外)
結局、次月も同じズレを繰り返す
経理が「報告係」になって消耗する
財務モデルがある会社ではこうです。
KPI変化がPLにどう影響したかが説明できる
予実差異が「構造」で語れる(単価×数量×解約×原価)
先に手を打てる(採用ストップ・広告停止・価格改定)
経理が「意思決定の中心」に行ける
つまり、財務モデルは「仕事が増えるもの」ではなく、
**“ムダな説明とムダな差異分析を減らす装置”**です。
3. 財務モデルの基本構造(まずはこれだけ覚えればOK)
財務モデルは、基本的に次の5ブロックでできています。
3-1 Assumptions(前提)
期間(12ヶ月、3年など)
新規獲得数、単価、解約率
人員計画、給与水準
広告費、開発費
→ ここが「入力」になる
3-2 Drivers / KPI(ドライバー)
顧客数推移
ARR推移
MRR推移
→ ここが「事業のエンジン」
3-3 P/L(損益)
売上(MRR×12など)
売上原価
人件費、広告宣伝費、外注費
3-4 B/S(貸借)
売掛金、前受金
未払金
ソフトウェア資産(SaaS開発費を資産計上するならここが重要)
3-5 C/F(キャッシュ)
営業CF:利益+運転資本増減
投資CF:資産投資
財務CF:借入・増資
**モデルの核は「KPI→PL→CF」**です。
最初はBSまで完璧にやらなくてOK。
むしろ最初から全部やると挫折します。
4. 最短で作る手順(初心者向け)
ここから「作り方」です。最短ルートはこれ。
4-1 目的を1つだけ決める
目的がブレると、モデルは巨大化して死にます。
初心者の目的はこれで十分です:
「3年後までキャッシュが尽きないか」
「広告を増やしたらどれくらいARRが伸びるか」
「採用計画を入れたらバーンレートがどう変わるか」
4-2 KPIを3つに絞る(SaaSなら)
おすすめの最小セットはこれ。
新規獲得数(New)
解約率(Churn)
平均単価(ARPA)
ここから、顧客数→MRR→ARR→売上まで作れます。
4-3 PLを“固定費と変動費”に分ける
変動費:決済手数料、サーバー費、CS外注など
固定費:人件費、家賃、ツール費
固定費は「人員計画」で作るのが王道です。
4-4 キャッシュに落とす(ここが最重要)
経営は利益よりキャッシュで死にます。
だからモデルのゴールはここ。
現金残高の推移
月次バーンレート
Runway(あと何ヶ月生きられるか)
5. “経理がやりがち”な落とし穴5つ(ここ超重要)
5-1 数字を綺麗にしすぎる
現実はズレます。ズレる前提で作る。
大事なのは「予測精度」より「意思決定のスピード」。
5-2 前提が多すぎる
前提が増えるほど、更新が地獄になります。
最初は最小の前提で回す。
5-3 単年度で終わる
SaaSは回収が遅いので、単年度だと判断できない。
最低でも2〜3年は必要です。
5-4 PLだけで満足する
SaaSは「前受金」「開発費」「採用」でキャッシュが動きます。
PL黒字でも資金ショートするのがSaaSあるある。
5-5 モデルが“作った瞬間に死ぬ”
更新されないモデルは価値ゼロ。
更新できる設計=シンプルが正義。
6. これができると、経理の人生が変わる
財務モデルを持つと、あなたの立ち位置が変わります。
「締める人」から「未来を作る人」へ
「お願いされる人」から「提案する人」へ
「責任が重い人」から「経営を軽くする人」へ
そして何より、
仕事が集中して潰れそうな状況でも、財務モデルがあると
何を止めるべきか
何を優先すべきか
何を捨てていいか
が、数字で説明できるようになる。
責任感が強い人ほど、全部やろうとして燃え尽きます。
モデルは、あなたに「やらない選択肢」をくれる道具です。
まとめ:財務モデルは“経理の武器”であり“救い”になる
財務モデルは難しそうに見えますが、最初はこう考えてください。
KPI3つ
PLは固定費と変動費
ゴールはキャッシュ残高
更新できるシンプル設計
この4つを守れば、未経験でも作れます。
そして、苦しい状況の経理ほど、
財務モデルは 仕事を減らし、評価を上げる最短ルート になります。
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📌 はじめての方へ: https://note.com/louis_/n/n7b27184d2788
