事業計画の作り方(中級) 〜それっぽい計画」から“意思決定できる計画”へ〜
「事業計画は作った。でも、結局“絵に描いた餅”で終わる」
「予算や中計が、現場にとって“他人事”になってしまう」
「経理・FP&Aが頑張って作っても、意思決定の材料になっていない」
これ、SaaSベンチャーでよく起きます。
そして負担はだいたい経理・FP&Aに集中します。さらに予算・中計・IPO準備・予実管理…まで抱えていると、事業計画が“重い割に報われない仕事”になりがちです。
でも中級の事業計画は、ここから変わります。
目的は「作ること」ではなく、経営が迷ったときに“次の一手”を決められる状態にすること。
そのために必要なのは、数字の正確さよりも 構造化(ロジック)・前提の透明性・打ち手への接続 です。
1. 中級の事業計画が「初級」と違う点
初級は、ざっくり言うとこうでした。
売上の作り方(単価×数量)
コストの分解
PLがつながる
最低限の整合性(売上と人員の矛盾がない等)
中級はここに“現場と経営を動かす仕掛け”を加えます。具体的には:
売上は“KPIツリー”で説明できる
コストは“固定費/変動費”だけでなく“ドライバー”で動く
計画が“優先順位とリスク”を内包している
予実差異が出たときに“次の打ち手”が自動的に出る
つまり、計画が 意思決定ツール になります。
2. 売上は「KPIツリー」に落として初めて“動く”
SaaSの事業計画が刺さるかどうかは、ほぼここで決まります。
売上を「前年比○%」みたいに置いてしまうと、現場は動けない。経営も決められない。
中級では、売上をこう分解します。
例)ARRの分解(超基本の型)
ARR = 新規ARR + Expansion(アップセル) - Churn(解約)
新規ARR = 新規獲得社数 × 平均契約単価 × 12
新規獲得社数 = リード数 × 商談化率 × 受注率
リード数 = 広告 / SEO / 紹介 などのチャネル別
ここまで落とすと、営業・マーケの会話が変わります。
「売上が足りない」ではなく、
「リードが足りないのか?受注率が落ちているのか?単価が下がっているのか?」
という**“原因の議論”**に進めるからです。
そして経理・FP&A側も、こう言えるようになります。
「売上目標はこのKPI前提が必要です。どれを取りにいきますか?」
これができると、経理は“数字屋”から“経営の共犯者”になります。
3. コストは「ドライバー」で設計する(中級の必須)
SaaSベンチャーでよくある事故:
売上だけ気合いで伸ばし、コストは「ざっくり去年+α」。
これだと、利益もキャッシュも崩壊します。
中級は、コストを「科目」ではなく、**“何が増えると、何が増えるか”**で捉えます。
例)コストドライバーの型
人件費:ヘッドカウント計画(採用時期・平均単価・昇給)
広告宣伝費:CAC目標 × 必要新規獲得数
インフラ費:ユーザー数 / 利用量(MAUなど)に連動
CS費用:顧客数 × 1社あたり対応工数(サポート負荷)
開発費:ロードマップ × 体制 × 外注比率
ここまでやると、
「売上を伸ばすと、どの費用がどう動くか」が説明できる。
つまり、経営が判断しやすくなる。
さらに重要なのは、“やめられるコスト”と“やめられないコスト”を分けることで計画上から「優先順位」を作る必要があります。
4. “3つのシナリオ”で計画を強くする(Base / Upside / Downside)
中級の事業計画で強いのは、1本の数字ではなく シナリオです。
Base:今の戦略が順当に進んだ場合
Upside:KPIの改善がうまくいった場合(施策が当たった)
Downside:想定どおりいかない場合(受注率低下/解約増/採用遅れ等)
これを作っておくと、経営会議で「もし失速したら?」が出たときに、
あなたが“胃が痛い人”から“頼られる人”になります。
そして資金繰り・バーンレートも一気に見通せます。
IPO準備が絡むなら、なおさら「Downsideで資金が何ヶ月持つか」は必須です。
5. 「計画が破綻する瞬間」を先に書いておく
計画が壊れるのは、たいてい“数字”ではなく“前提”です。
中級では、前提を「見える化」します。
典型的な破綻ポイント
受注率が落ちる(競合増・営業疲弊・単価下落)
解約が増える(CS負荷、プロダクト不満、オンボーディング不全)
採用が遅れる(計画より人が増えない)
開発が遅れる(ロードマップ遅延で売上前提が崩れる)
ここを最初から事業計画に織り込む。
「この数字はこの前提。崩れたら次はこの打ち手」まで書く。
これが“意思決定できる計画”です。
6. 予実差異が出たとき、打ち手が出ない計画は弱い
計画は、作った瞬間からズレます。
重要なのはズレたときに「誰が何をするか」が決まっていること。
中級では、予実差異をこう読みます。
売上差異 → 数量差異 × 単価差異 に分解
さらに数量差異 → KPI差異(リード/商談/受注/継続) に落とす
コスト差異 → 固定費の上振れ / 変動費の想定ズレ / タイミングズレ に分ける
差異分析が「説明」で終わると、経理は消耗します。
「次の一手」に繋がると、経理は評価されます。
7. 経理・FP&Aがしんどい会社ほど、“計画の作り方”が救いになる
責任感が強い人ほど「自分がやらねば」と抱えます。
でも、ここに落とし穴があります。
**“頑張るほど、属人化が進み、会社が強くならない”**んです。
だから中級の事業計画では、仕事を減らす仕組みを入れます。
KPI定義と算出ロジックを固定する(誰でも見られる)
テンプレ化して、更新作業に落とす
部門に“前提の責任”を持たせる(数字は経理、前提は現場)
会議体を整えて、意思決定の型を作る
この設計ができると、あなたの責任感は「苦しさ」ではなく「強み」になります。
“全部抱える人”から、“仕組みで回す人”へ変われるからです。
まとめ:中級の事業計画は「経営の迷いを消す道具」
中級に上がると、事業計画は“資料”ではなく“武器”になります。
売上をKPIツリーで説明する
コストをドライバーで動かす
3シナリオで意思決定を可能にする
破綻ポイントと打ち手を先に書く
予実差異を“次の一手”に繋げる
属人化を壊して、仕組みで回す
もしあなたが今「全部が経理に集まりすぎてしんどい」と感じているなら、
事業計画は“仕事を増やすもの”ではなく、仕事を減らすための設計図にできます。
次に読む(おすすめ)
✅【入門】事業計画の作り方(初級)
https://note.com/louis_/n/n76cfbe7a699f🔥【深掘り】事業計画の作り方(上級) 〜「数字が合っている」だけでは、なぜ計画は崩壊するのか?〜
https://note.com/louis_/n/n8556c7460b40🛠【実務】シミュレーションの作り方 〜不安を「数字で握る」技術〜
https://note.com/louis_/n/nea23e036721a
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📌 はじめての方へ: https://note.com/louis_/n/n7b27184d2788
