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ベルギー&オランダひとり旅#13.フランス・ハルス特別展~会いたかった少年の笑顔、あとゴッホ~

 満たされた心でマウリッツハイス美術館を後にし、最終目的地のアムステルダムへやって来ました。

 旅ではメインとなる絵画を一つ掲げ、それを中心に計画を立てるようにしています。しかし、今回の旅行ではそれがふたつありました。一つはアントワープ聖母大聖堂にあるピーテル・パウル・ルーベンス作の《キリスト降架》&《キリスト昇架》

 そして、もう一つがフランス・ハルスの《笑う少年》です。

 1年前にフランス・ハルス美術館を訪れましたが、《笑う少年》はマウリッツハイス美術館所蔵。そして、この旅をしていた時期はアムステルダム国立美術館にありました。理由はフランス・ハルス特別展を開催していたためです。

 そういうことであれば、行かないわけにはいきません。


フランス・ハルス特別展

 フランス・ハルス(1582/4年~1666年)は、レンブラントとフェルメールと並んでオランダ黄金時代を代表する巨匠であり、17世紀における最も革新的な画家の一人として知られています。

 1580年代初頭にアントワープで誕生し、幼少期に家族でハーレムに移住。そこで画家としての修業を積み、1610年には芸術家組合であるハールレムのギルド・聖ルカ組合に登録されました。その後は肖像画家・風俗画家として高い評価を得て成功を収めます。

 ハルスは、人物の個性や特徴を的確に捉え、それを荒い筆致で自由自在に描き出す卓越した才能の持ち主でした。被写体の一瞬の表情と動きを美事に表現し、作品からは声や息づかいまでもが聞こえてくるようです。

 本特別展では、世界中から約50点のハルス作品が一堂に会しました。威厳ある有力者から陽気な音楽家、茶目っ気のある子どもたちまで、生き生きとした当時の人々の姿を垣間見ることができる貴重な機会でした。

◇◇

◆肖像画

左:《Portrait of a Man with a Skull》1612年頃
右:《Portrait of a Woman》1612年頃

ザ・肖像画って感じですな。

初期の頃の作品で、骸骨は人間の一生のはかなさや虚しさを表現しています。17世紀当時の美術でよく見られたテーマです。
左:《Portrait of a Man》1635年頃
右:《Portrait of a Woman》1635年頃

美事なレースと襞襟だこと。
それにしても、首周りにあんなに大きな襟を付けてさぞかし邪魔だろうに・・・。

下の絵もそうですが、当時は男性がレース、女性が幅広の襞襟というのが上流階級の定番ファッションだったのでしょうか。
《庭園の夫婦》1622年

アムステルダム国立美術館蔵の作品で、1年ぶりの再会です。
いつ見ても爽やかなカップルだなあ。

当時、結婚した夫婦がこうして一つの作品に実物大で一緒に描かれることは珍しかったそうです。また、それ以上に、このように仲睦まじく笑顔の人物が描かれることは、さらに稀だったとか。実際、上の4作品に描かれた肖像画に笑顔はありません。これが高貴さと威厳というやつだったのでしょうか。親しみや朗らかさなんてもんは要らんのでしょうね。

◆集団肖像画

Frans Hals, Pieter Codde
《Militia Company of District XI under the Command of Captain Reynier Reael》1637

フランス・ハルスといえば集団肖像画。ただし、こちらの作者名にはピーテル・コッデの名が連なっています。

解説によると、ハルスがこの絵を描くために何度も首都へ赴くも、一部の警備隊は姿を現さなかったとか。そのためハルスは彼らに自らの住むハーレムまで来るよう求めるも、それすらも拒否(なんて我がままなんだ!)。結局、ピーテル・コッデが代わりに仕上げることになったそうです。このような経緯のため、ハルスが描いた箇所とその程度は定かではないそうですが、構図と左側の7人はハルスによるものだろうと考えられています。
《1616年の聖ゲオルギウス市民警備隊士官の宴会》1616年

こちらは、ハルスが初めて描いた市民警備隊士官の集団肖像画です。ダイナミックな構図に個人の内面までをも描き出すこの画力。そして、こちらに向かって話しかけているような設定により、観る者もその場に立ち会っているかのような感覚を抱きます。
《1627年の聖ゲオルギウス市民警備隊士官の宴会》1627年頃

1616年と1627年に描かれた《聖ゲオルギウス市民警備隊士官の宴会》は、本展示における目玉の一つ。これら2作品がハーレムを離れるのは、制作後初めてだったそうです。

個人的には1616年の作品の方が好きだなあ~。

◆これもハルス?

Frans Hals, Claes van Heussen《Fruit and Vegetable Seller》1630

これだけの果物と野菜を描くなんてハルス作品では珍しいなあと思っていると、人物以外はクレス・ファン・ホイセンによって描かれたそうです。にゃるほど。

ファン・ホイセンは静物画家として活躍しました。本作品は現存するハルス作品の中で唯一、他の画家と共同で描いた絵画として知られています。

◆色々な人々

《陽気な酒飲み》1629年頃

力強くも荒々しいハルスの筆遣いを美事に表わす代表作です。
《リュートを弾く道化師》1623年頃

楽しそうにリュートを弾く姿に、観ているこちらも笑顔になっちゃう。
《マッレ・バッベ》1640年頃

マッレ・バッベ(※)のニックネームを持つバルバラ・クラースは、精神病を患っていたと考えられています。ハルスが彼女と出逢ったのは街のストリートか、救貧院(ワークハウス)。バルバラは1646年から亡くなる1663年までの17年間をワークハウスで過ごし、ハルスの息子の一人もまたバルバラと同じ病にかかり、同じワークハウスで一時期療養していたそうです。ハルスは、伝統的に愚かさのシンボルとして描かれることの多いフクロウを彼女の肩に乗せました。

※マッレ(Malle)は「気が狂った、愚かな」という意味。
《Laughing Fisherboy》1630年頃

この少年の笑顔がすごく好き。
今回の展示会で一番印象に残った笑顔かもしれません。
とても自然で、彼の優しさが伝わってくるよう。
《Portrait of Pieter (?) Verdonck》1627年頃

でっかい骨を振りかざしてるー!って思ったら、本当にそういう絵らしい。

ただ、もちろん意味があって、旧約聖書に出てくる英雄のサムソン(イスラエルの民を支配していたペリシテ人をロバの顎骨で倒した)を模しているそうです。肖像画の人物と考えられている Pieter Verdonck は、攻撃的かつ口論好きだったそうで、仲間のメノナイト派(キリスト教アナバプテストの教派でメノー派とも呼ばれる)とも強烈に争ったとか。実際、当時制作された肖像画の版画には「顎骨ですべてを攻撃する遠慮のない男、フェルドンク('Verdonck that outspoken fellow whose jawbone attacks all'.)」という銘文が添えられているそうです。
《微笑む騎士》1624年

かっくぃぃ~。

イギリスのウォレス・コレクション所蔵作品で、オランダに帰還するのは150年ぶりなのだとか。
この質感よ。
ついつい近づいて見ちゃうよね。
《ロンメルポット奏者》1620年頃

みんなの笑顔が素敵すぎる。
特に、右後ろの子のてへぺろが最高。
《The Merry Lute Player》1624年-1628年頃

かんぱ~~~~~い!

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◆《笑う少年》

《笑う少年》1625年頃

この笑顔が見たかった!
かわいいなあ。
絵なんだけど、確かに生きてる。声が聞こえてきそう。

◆最後は養老院の理事たち

《養老院の男性理事たち》1664年

展示会の最後を飾るのは、養老院の理事たちの集団肖像画です。
フランスハルス美術館の建物は、本来養老院でした。
《養老院の女性理事たち》1664年

白と黒を主体とした単調な色彩ですが、実は20種近い黒色を駆使して描かれているのだそう。
これらの作品を描いた当時、ハルスはすでに80歳を超えていたというのですから驚きです。
あ~、良い展示会だった!

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最近やってきたゴッホ作品

「この後は、ゴッホの作品を観に行くのかい?」

 美術展を観終え、ショップで図録を手に取り会計をしていると、スタッフの方に言われました。てっきりゴッホ美術館のことだと思った私は(ゴッホ美術館はアムステルダム美術館と同じ公園内にあります)、フライトの時間が迫っているためゴッホの絵は観られないことを伝えると――

「それは残念だ! つい数日前に美術館にやって来たばかりで、いつまで展示しているかわからない。3点だけだから絶対に観ておいた方がいい!」

 この言葉で、ゴッホ美術館ではなくアムステルダム国立美術館の話であることに気がつきます。展示場所を確認し、駆け足で向かいました。

フィンセント・ファン・ゴッホ《Wheatfield》1888年
フィンセント・ファン・ゴッホ《Riverbank with Tree》1885年
フィンセント・ファン・ゴッホ《The Singel near the Lutheran Church in Amsterdam》1885年

 ゴッホの作品はまさにサプライズ。

 こうしてベルギー&オランダのひとり旅は幕を閉じ、訪れた街の風景、出逢った美術作品の記憶を胸に、ソウル行きの飛行機に乗り込みました。

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