わたしは、普通になりたかった。
できないことは、なかった。
やろうと思えば、なんでもできた。
それでも、ふつうに笑うことが、いちばん難しかった。
「ふつう」ってなんだったんだろう。
今でも、ときどき、思い出す。
————
わたしは、
ただ、普通になりたかったんだと思う。
特別じゃなくていい。
すごいって言われたいわけじゃない。
うまくやれることも、できないことも、
どっちでもよかった。
ただ──
ふつうに笑って、
ふつうに話して、
ふつうに、そこにいたかった。
でも、それがなぜか、
わたしにはいちばん難しかった。
朝、起きること。
みんなと同じように
流行りの話で盛り上がって
テンポに合わせること。
笑うタイミングを見逃さないこと。
できなくはなかった。
頑張れば、なんとかできた。
でも「“普通”は何にも考えずにできる」ことが、わたしにはいちばんできなかった。
そうして、頑張ったわたしは、いつしか
「できる子」になっていった。
そしてまた、
「ふつう」から遠ざかってしまった。
みんなが無意識にできることを、
わたしは頭で考え、心で翻訳して、
ようやく形にしていた。
誰もそのことには気づかなくて、
わたしも、それを説明する言葉を持たなかった。
でも、ほんとはずっと思ってたんだ。
「普通って、どこで配ってたのかな」
「わたし、もらいそこねたのかな」って。
最近、少しだけわかった気がする。
わたしが欲しかったのは、
「普通」じゃなくて、
たぶん──安心だったんだ。
なにもしなくても、
そこにいていいって思えること。
いつも一生懸命に頑張らなくても、
それでも、
「わかってもらえるかもしれない」
と思えること。
わたしは、
安心のない世界で、
「ふつう」を真似して、生きてきたのかもしれない。
だから今も、ときどき思う。
──「普通が、いいなぁ」って。
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still.
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