結果を学びに変える ― 振り返りの問い
前回、検証の後は事実を直視することが大切だとお伝えしました。
今回は、その結果を学びに変えるための、振り返りの問いを三つに整理してご紹介します。
振り返りは、三つの問いで深まる
構造として整理すると、振り返りは次の三つの問いで深まります。順番に問うだけで、ただの感想が、次につながる学びに変わります。多くの現場では、検証が終わった直後に「よかった」「だめだった」という感想でとどまりがちです。私自身も、忙しさに紛れて、そのまま次の作業へ移ってしまうことがありました。けれど、感想は時間が経つと薄れ、手元には何も残りません。問いという形にしておくと、あとから読み返せる記録になります。三つの問いは、事実、意味、行動という順に並んでいます。この順を守るだけで、思考の飛躍が減り、根拠のある結論にたどり着けます。
① 起きた事実を並べる
一つ目は、「実際に、何が起きたか」を並べることです。数字でも、言われた言葉でも、観察したことでもかまいません。解釈を混ぜず、事実だけを書き出します。ここを丁寧にやるほど、後の学びが確かになります。たとえば「五人に声をかけ、二人が最後まで話を聞いてくれた」「一人は途中で話題を変えた」といった具合に、見えたままを書きます。「たぶん興味がなかった」と書きたくなりますが、それは解釈です。事実と解釈は、書く欄を分けると混ざりにくくなります。問いの形にするなら、「見たこと、聞いたことは何か」「その場で相手はどう動いたか」と自分に尋ねます。感情を挟まず並べるだけで、後で読み返したときの手がかりが増えます。
② 何が分かったかを言葉にする
二つ目は、その事実から「何が分かったか」を言葉にすることです。「この価値は、この人には響かなかった」のように、確かめられたことを一文にします。仮説が当たったのか、外れたのか。外れたなら、どこが違ったのか。ここで学びが形になります。ここで役立つのが、「だから何が言えるか」という問いです。並べた事実の一つひとつに、この問いを当てていきます。「二人が価格の話で止まった、だから価格の伝え方に課題がある」といった具合に、事実と結論を線でつなぎます。一度に大きな結論を出そうとせず、小さく言い切ることが大切です。断定しにくいときは、「まだ分からないこと」も併せて書き出しておきます。
③ 次の一手を決める
三つ目は、その学びをもとに、「次に何をするか」を決めることです。続けるのか、変えるのか、別の相手に試すのか。振り返りは、次の行動につながって、はじめて完結します。分かっただけで止めず、必ず一手を決めます。ここでは「では、明日から何を変えるか」と具体的に問います。「価格の伝え方を変える」では、まだ動けません。「次の三人には、価格の前に効果を先に話す」と、誰に、何を、いつまでにの粒度まで落とします。一手は一つに絞ると、次の検証で何が効いたか見分けやすくなります。決めた一手は、日付とともに書き添えておくと、次の振り返りの出発点になります。
一人でなく、仲間と問う
この三つの問いは、一人でも進められます。けれど、できれば仲間と一緒に問うことをおすすめします。一人だと、どうしても見たいように見てしまうからです。別の視点が入ると、事実の受け取り方が変わり、学びが深まります。私の場合、事実を読み上げている途中で、仲間から「それは本当に起きたこと?」と静かに問われる場面がありました。答えに詰まったとき、そこに自分の願望が混じっていたと気づきます。仲間は、答えを出す相手ではなく、問いを返してくれる相手で十分です。三つの問いを声に出し、隣で聞いてもらうだけで、独りよがりの結論はずいぶん減ります。
次回は、うまくいかない結果とどう向き合うか、その姿勢についてお伝えします。
なお、学びの得方そのものについては、過去に『検証の後で、大切にしたい学び方』でも書いています。よろしければ、あわせてご覧ください。
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さいごに
一人で振り返っていると、いつのまにか自分に都合のよい物語をつくってしまいます。私も、仲間に「それは事実? 解釈?」と問い返されて、はっとすることがあります。素直に問い返してもらえる相手がいることは、ありがたいことだと感じています。
