うまくいかなくても、そこから受け取れるもの
検証の結果が思わしくないと、気持ちが沈みます。
時間をかけたぶん、なおさらです。けれど、うまくいかなかった検証にも、必ず受け取れるものがあります。その受け取り方について、お話しします。
目次
「失敗」と呼ぶ前に
一つの検証が、次の精度を上げる
受け取れる人が、続けられる
「失敗」と呼ぶ前に
ある担当者の方は、自信のあった仮説が外れて、しばらく落ち込んでいました。準備に何週間もかけ、資料も何度も作り直した検証でした。「失敗でした」と、その人は肩を落として言いました。声も小さく、目線は机の一点に落ちたままでした。
けれど、話を聞いていくと、その検証から、たくさんのことが分かっていました。私は相手の話を遮らず、何が起きたのかを順に聞いていきました。すると、落胆の言葉の合間から、いくつもの事実が出てきたのです。
想定した相手が違っていたこと。伝え方がずれていたこと。本当に困っている人は別にいたこと。どれも、机の上では見えなかった事実です。実際に人に会い、反応を受け取ったからこそ、はじめて手元に残ったものでした。それは失敗ではなく、次に進むための発見でした。
私は、その一つひとつを口に出して確かめていきました。「これは分かったことですね」と言うたびに、担当者の表情が少しずつ変わっていったのを覚えています。「失敗」と呼んでしまう前に、そこで何を受け取ったかを、一つずつ数えてみてほしいのです。数え終えたとき、残っているものは、思ったより多いはずです。
一つの検証が、次の精度を上げる
うまくいかなかった検証は、無駄になりません。一つ試すたびに、可能性の幅が狭まり、次の精度が上がります。当たらなかった選択肢が分かること自体が、前進です。手当たり次第に見えた試みも、あとから振り返ると、確かめる順番になっていました。
その担当者の方は、外れた仮説から得た学びをもとに、相手を変えて試し直しました。前の検証で「この人ではなかった」と分かっていたぶん、次の相手を選ぶ目が違っていました。伝え方も、ずれた経験があるから、言葉を選び直せました。
すると、今度は手応えがありました。相手が前のめりになって話を聞いてくれたのです。その場で、担当者は前の検証の意味を実感したと言っていました。前の検証がなければ、その一歩は踏み出せなかったのです。遠回りに見えた検証が、実は近道をつくっていました。
一度で当てようとすると、外れたときに立ち止まってしまいます。けれど、検証を精度が上がる過程だと見れば、一つの結果は次への材料になります。当たらなかった事実も、地図の空白を一つ埋める線です。そう受け取れると、次の一手が選びやすくなります。
受け取れる人が、続けられる
新規事業は、うまくいかないことのほうが多い活動です。だからこそ、結果から何かを受け取れる人が、続けていけます。落ち込むのは自然なことです。むしろ、真剣に取り組んだ人ほど、外れたときにこたえます。私はその落ち込みを、悪いものだとは思いません。
ただ、落ち込んだあとに、そこから一つでも学びを拾えるかどうか。その差が、続けられるかどうかを分けます。同じ結果を前にしても、「もうだめだ」で止まる人と、「では次はどうするか」に進む人がいます。分かれ目は、才能ではなく、受け取り方の習慣にあると感じています。
現場で長く続けている人ほど、うまくいかなかった話を淡々と語ります。落ち込みを経たうえで、そこから何を持ち帰ったかを、静かに話してくれます。その姿を見るたびに、続ける力とは、受け取る力なのだと思わされます。声を荒げることも、誰かのせいにすることもありません。起きたことを起きたこととして受け止め、そこから使えるものを選び分けているのです。
その受け取り方は、特別な素質ではなく、繰り返しのなかで身につくものだと思います。一度うまく拾えた経験があると、次の落ち込みも少し軽くなります。受け取れたという実感が、また一歩を後押ししてくれるからです。
うまくいかなかった日にも、受け取れるものは必ずあります。それを拾って、次へ持っていってください。
次回からは、続けるか変えるかを決めるステップに入ります。次回は、その分かれ道で大切にすることをお伝えします。
なお、結果から学ぶことについては、過去に『検証の後で、大切にしたい学び方』や『結果を学びに変える ― 振り返りの問い』でも書いています。よろしければ、あわせてご覧ください。
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私たち All Bridge株式会社は、新規事業構築支援・人財育成支援・仕組化支援の三つを軸に、企業の挑戦に伴走しています。大切にしているのは、構想を"カタチ(成果)"に変えること、そして一過性で終わらせず、持続性と再現性のある形にすることです。新規事業をテーマにしながらも、人が育ち、仕組みとして残るところまでを一緒に設計しています。
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さいごに
うまくいかなかった日は、私も、その事実をしばらく認めたくありません。それでも、少し時間を置いてから見返すと、そこに次のヒントが残っていることに気づきます。落ち込む時間も、必要な時間なのだと思います。そのうえで、一つだけでも拾って前に進めたら、それで十分だと感じています。
