海や空の安全な航行に欠かせないGPS|宇宙一わかりやすく解説|GPSの基礎の基礎#7
GPSが使われる用途についての解説、第二回は船と飛行機のGPSについてです。
前回GPSと言えばカーナビ、と言いましたが実は最もGPSの恩恵を受けているのはこの二つの用途と言っていいでしょう。
車は誰もが運転するのに対して、船や飛行機は限られた人しか操らないのでなじみが無いのも当然ですよね。
ナビゲーションは日本語で航法
”Navigation”ってそのままナビゲーションで通じるので日本語訳することももないですが、日本語で言うと「航法」になります。
航法は、辞書で引くと、
船舶または航空機が、所定の二地点間を、所定の時間内に正確かつ安全に航行するための技術・方法
となっています。
そう、ナビゲーションという言葉は元々、船(船舶)とか飛行機(航空機)に関する用語だったんです。
特に船で大洋を渡る時、海上で自分の位置を把握することは、大昔からとても重要なことでした。陸上であれば、そこに道があることは見れば明白ですし、地図や道標さえあれば誰でも目的地に着くことはできました。でも海上ではどうでしょう。陸から離れてしまうと、周囲は海面しか見えないわけで、目印になるものなんてほとんど無いわけですから、それこそ命がけだったわけですね。
海上で自分の位置を知る技術の発達
そういうわけで、海上で自分の位置を知るためにいろいろな方法が編み出されました。
船がどっちの方角に向かって進んでいるかを調べるために、方位磁石が発明されました。
さらに星の配置から位置を調べる方法も考えだされました。
時代が進むと、地上から発する電波を受信して位置を計測する技術が開発されました。ここまでくるともう現代(第二次世界大戦以降)のことです。
そんな中で、宇宙開発競争の時代に突入すると人工衛星を使って位置を計測する技術も研究が進み、GPSが登場したわけです。
世界中どこに居ても自分の位置がわかっちゃうわけですから、正に最強アイテム。
今や、船舶の航行ではGPSは欠かせないものになっているのです。
空でもGPSは欠かせない
以前の記事でも書きましたが、GPSが民間利用できるようになったきっかけは1983年の大韓航空機撃墜事件でした。
正に航空機での利用が、GPSを誰もが利用できるようにした目的だったわけです。
以前も、地上からの電波などで航空機の位置を計測する技術はいろいろありましたが、冷戦によって一部の国との国交が途絶えている影響などもあって、航空機の飛んでいる場所によっては位置を把握することが困難でした。
実際に大韓航空機撃墜事件では、後にパイロットのミスで航路を外れた可能性があることが分かっていますが、地上で監視している管制からは、航空機がどこを飛んでいるかも分からなかったので警告を発することもできませんでした。
それがGPSや通信衛星の登場によって、どこを飛んでいても位置がわかるようになったのです。
カーナビとの違いは?
海、空で使うGPSと、陸でカーナビとして使うGPS。目的は同じようでも根本的に違う点があります。
そのあたりについて少し触れておきたいと思います。
周りに高い建物がない
GPSは高層ビルが苦手という話を以前の記事で書きました。もちろん、海上でも空でも周りに高い建物は無いですから、障害物の影響で位置がズレる心配をする必要はないです。
トンネルや地下道もない
これも当然ですね。衛星からの信号を遮るものは何もない環境なので、電波が受信できなくて位置が計測できない、という事態になることはまずないです。
道がない
船舶や航空機には航路という”路”がありますが、実際に目で見てわかるような”道”があるわけではないです。
そのため、陸上ではカーナビが目で見える”道”を選ぶ手段であるのに対して、海上、空でのGPSは”路”を外れないために手段ということになります。
要約すると、海上や空ではGPSの能力をフルに発揮できる反面、GPSへの依存度が非常に高いということですね。
カーナビの場合は、突然使えなくなったとしても運転すること事態に支障はないですが、船舶や航空機にとってGPSが使えないことは死活問題になってしまう。それくらい重要ということなのです。
GPSに頼りすぎて問題に
今現在でも、船舶と航空機の航行においてGPSは不可欠ですが、そのために大きなトラブルに発展したという事例は一つや二つではありません。
実際にGPSに依存し過ぎているんじゃないか?ということで、アメリカ以外の国でも同じような衛星航法システムが運用されているという話は以前の記事でも書きました。
しかし、どの国の衛星航法システムも基本原理は同じ。GPSが機能しないような状態になったら他の航法システムの使えなくなる可能性だってあるんです。
ということで、GPSとはまったく違う補完システムの研究なんかも進んでいますが、そのあたりについては追々解説していきたいと思いますね。
前回の記事で、カーナビの歴史はGPSの歴史そのもの、ということを書きましたが、人類の発展の歴史の影にはGPSを含む航法の歴史があったんですね。
GPSについて解説するのに、船舶や航空機の話は外せませんが一般の人にはあまりなじみのないところかと思います。次回からは、もっと最近のなじみのある用途の話を中心に解説していきたいと思います。
