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【読書】無料とは思えない充実ぶり~『八咫烏シリーズ最新刊! 『亡霊の烏』予習BOOK』(阿部智里)~

題名にすべてが表れていますが、『亡霊の烏』発売を前に発表された、無料の宣伝本です。


とはいえこれが、無料とは思えない充実ぶりです。用語解説や人物相関図だけではなく、阿部智里のエッセイもあるし、何よりも『楽園の烏』の「第一章 逃避行」が収録されているとは、太っ腹。電子書籍だからこそ出来ることですよね。


作者のこだわりを優先させた結果、アクロバティックなシリーズ構成になってしまっている点は、何一つ弁明出来ません……。「この話っていつの話だ⁉」と混乱させてしまっている部分も多分にあるかと思います。

p.5

実は私、『亡霊の烏』の前の『望月の烏』の発売を知らず、『亡霊の烏』を先に読み進めてしまったのです。途中で「何かがおかしい」とは思ったものの、上記の通り「アクロバティックなシリーズ構成」にしてしまう作者だから、落女の話は次巻ででも書かれるのかなと勝手に思い、4分の3くらいまで読んだところでさすがに調べ、『望月の烏』の存在を知りました。その過程で、この無料本の存在を知った次第です。


八咫烏シリーズ本編は、『亡霊の烏』の次の巻、第二部六巻を以って完結の予定です。

p.7

何となくほっとしました。結構楽しんで読んだ時期もあるのですが、ついていけないなと思っていたところもあるので、先が見えて良かったなと。いや、一度シリーズものを読み始めたら、原則途中でやめるのが嫌な性分なので(栗本薫の「グイン・サーガ」など、挫折したものももちろんありますが)。


第一部三巻『黄金の烏』刊行時には打ち切りの危機がありましたし、第一部六巻『弥栄の烏』で終わりにしようと考えていた時期もありますので

pp.7-8

これは思いがけない裏事情。確かに『弥栄の烏』で終わっても良かった気もしますが、『楽園の烏』には良い意味での驚きを感じ、「何が起きたの?」と続きが気になったので、第二部にはやはり意味があったと思います。


どんでん返しを売りにしていた初期とは違い、ここまで来ると第一部から描いてきた因果があるべき形に応報していくといった感覚でして、前のようなびっくりどっきりの面白みはないかもしれません。

p.8

第一巻の『烏に単は似合わない』が代表ですが、本当にどんでん返しがすごかったですよね。でも「第一部から描いてきた因果があるべき形に応報していく」という感覚は、分かる気がします。やはり優れた良い物語だったということでしょう。



何だかんだ言って優れた物語だとは思いますが、どうしても私が違和感を感じるのが、登場人物の言葉遣いです。

「あの時は本当にびっくりした」

p.15

これは『楽園の烏』にある安原はじめの母の台詞。

ドタバタしちゃってすみません。

p.30

これは同じく『楽園の烏』から、「幽霊」の台詞。

どちらもあまりに庶民的な言葉遣いです。百歩譲って安原はじめの母は、成り上がりものの妻として、公の場はともかく家では庶民的な言葉遣いでも良いかもしれません。しかし「幽霊」は「あの人」(一応ネタバレを避けます)なのですから、身分からいって、もっときちんとした言葉遣いをしてほしいです。私なら「ドタバタしてしまって申し訳ありません」としますね。そもそも「ドタバタ」という表現自体が子どもっぽい気がしますが。


などと細かい部分で注文を付けてしまいましたが、繰り返しますが、無料とは思えない充実ぶりです。「八咫烏シリーズ」のファンの方はもちろん、そもそも「八咫烏シリーズ」を読んだことがない方にも、このシリーズを読んでみるきっかけとしてお勧めです。




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