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【読書】ちょっと楽なくらいでやめておく~勝手に応援!『ビッグイシュー日本版』(VOL.525 2026.4.15)~

『ビッグイシュー日本版』を勝手に応援する記事、第128弾です。
そもそも「『ビッグイシュー日本版』とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号の特集は、「仕事とケア」です。


”東アジアの奇跡”と言われた1990年代までの日本の社会経済

p.7

この表現、初耳でした。


労働経済史を専門とする田中洋子さん(筑波大学名誉教授)は言う。
「(中略)日本が1990年~2000年代に進めた政策の転換が日本の社会と経済を損ない、働く人々の生活や仕事を苦しめるものとなったことが改めて認識される必要がある」

p.7

溜息が出ます。


「資本主義の市場原理がもつ問題を民主主義で修正し、社会保障制度や労働組合運動を発展させることで、人々の生活や仕事を支えるというドイツの社会民主主義に可能性を感じました」

p.8

社会民主主義とは、そういうことなのですね。


日本では、長らく女性の働き方として、若い時に働き、結婚・出産を機に仕事を辞め、30代後半か40代で仕事に復帰するという”M字カーブ”がよく知られていた。
一方、「ドイツも50~60年代にかけて日本と同じく高度成長を遂げましたが、ドイツの女性は若い時に働いて、結婚・出産を機に仕事を辞めたら、以後はずっと専業主婦のままでした。女性が働きたい時は夫の許可が必要だと法律で規定されていた時期もあるほどです。さらに専業主婦の配偶者が税制で有利になるなど、日本よりも専業主婦モデルが強力でした」。

p.8

「夫の許可が必要だと法律で規定」って……。


そんなドイツの働き方が大きく変わり始めたのは90年代。
「日本では、今でこそ、AIの出現で仕事が奪われるなどと言われていますが、この議論は欧米やドイツでは、Windows95が発売されてIT革命が起き、グローバル化が進んで経済が激変した1990年代に活発に行われていました」

pp.8-9

日本は何周遅れなのでしょう。


「この時、この経済の変化をどう乗り切るか、ドイツでは政府も含めて”労働の未来論”が活発に議論されました」
労働の量や質が変わっていく中で、「これまでは主に仕事(生業)だけを見てきたが、これからは子どもを産み育てたり、介護をしたり、ボランティアをしたりといった活動も仕事と同等の価値をもつケア労働と認め、その時々の必要性に合わせて、個人が働く時間の割合を変えていけるようにする。そのためには、働き方や社会を変えていくべきではないか」という考え方が生まれたのだという。

p.9

素晴らしい!


ベースにあるのは、自分の好みで働く時間帯や労働時間を選べる「時間主権」という考え方だ。

p.10

ほう。


「2011年にパートタイム法が施行されました」
これは「体調が悪い」(中略)などの理由があって(中略)「毎日2時間早く帰りたい」などという労働者の希望があれば、「働く時間を短くすることを企業は認めなくてはいけない」と定めた法律だという。

p.10

良いですね。


ドイツの働き方は、「専門的な能力など、その人ができることによって給与が決まる”ジョブ型”と言われるもの。これによってフルタイムの給与が決まっていて、パートタイム(時短勤務)になった場合は正社員待遇のまま、フルタイムの給与に時間割合を掛ける」のだという。

p.10

素晴らしい! ぜひ日本でも導入してほしいです。


もちろんドイツのパートタイム法も完璧ではありません。

パートタイム法ができて10年ほど経った頃、「業務量が多く、四六時中対応に追われる管理職は、パートタイムでは務まらない」として、管理職をあきらめる人が出てきた。
「その打開策として導入されたのが『ジョブシェアリング(タンデム)』という方法です。これは、本来であれば一人で担う管理職の仕事を二人でシェアするというもので、情報もアイデアも決定権もシェア。必ずどちらかが会社にいるようにして、週のうち1日は、二人で一緒に仕事をする日を設けているところが多いようです。別の分野の二人が組めば、お互いにもっている情報を出し合うことで、クリエイティブなアイデアが浮かぶと、多くの方がおっしゃっていました」

pp.10-11

良いじゃないですか!


もともと、ドイツにも育児休暇の制度はあったが、日本と同様、取得するのはほぼ女性に限られていて、男性の取得率は長く2~3%にとどまっていたという。
「そこで、育児は休暇ではなく、雇用労働と同じ価値をもつ労働だと考えて、『親時間』と名称を変え、親時間を取っても生活が保障されるように、国が2007年から『親手当』を支給することになりました」と田中さん。
(中略)
「これによって、2~3%だった父親の取得率は09年に24%、20年には44%まで増えました」

p.11

名称って、大事ですね。


ドイツで特徴的なのが「労働時間口座」という時間ポイント制の仕組みだ。
「ドイツでは1日10時間まで働けるのですが、本来なら8時間のところを10時間働いたら、余分に働いた2時間分を時間ポイントとして時間口座に貯めることができます。逆に、歯医者に行くから早く帰りたいといった時には、貯めていたポイントを使うことができます。ドイツはもともと有休休暇が30日と長いのですが、貯まった時間ポイントは、ある程度まとまったら休日に換えることもできますし、現金に換えることも可能です」

p.11

これも日本で導入してほしいですね。そうすれば結果的に時間外労働も減る気がします。


「ドイツは日本の7割ほどの人口にもかかわらず、23年にドル建ての名目国内総生産(GDP)で日本を追い抜き、日本より2割も短い労働時間で、一人あたり労働生産性や時間あたり労働生産性は日本を上回っているんです」

p.12

「ドイツにはもともと、何かの事情で一定水準より低い所得になった時に、誰もが使える”ベーシックセキュリティ”という基礎保障制度があります。住宅費・暖房費・生活費・生活保険料を給付しながら、学校に通う費用を国が負担する『継続教育』など、よりよい仕事を得られるようなキャリア支援をしてくれる」

p.12

「日本は働く人たちの力を生かさない、それどころか痛めつけるような社会になりました。特に女性の力を伸ばそうとせず、生かそうとしない。そういうシステムを至るところでつくってきたんですね。その辺がもうドイツと正反対です。だから労働生産性にもGDPにも差がつく。企業は経営のためにコストダウンをしていると考えているのでしょうが、これを30年以上続けてきたために、結果的に自らの首をしめることになりました。というのも、ただでさえ国土も狭いし、資源もなくて、人の力を生かさなくてはいけない国であるにもかかわらず、人の力を生かさず、とりわけ女性の能力をわざわざ限定するようなやり方をしてきたからです」

p.12

日本、いろいろ残念です。もともとは「労働者の改善や工夫が企業の成長力を支えるという考え方が主流」(p.9)だったはずなのに。
でも日本にも、希望の芽はあります


じつは日本にもすでに、ドイツのような短時間正社員制度を導入している企業はある。

p.13

イケア・ジャパンや広島電鉄です。

「まずはできる企業から導入し、これをトレンド(流行)にしていくことが重要でしょう。日本は横並び意識が強いので、一気に広がっていく可能性もあるかもしれません」

p.13


特集以外では、「スペシャルインタビュー」の寺尾紗穂さんの記事にあった指摘に目を開かされました。

歴史を振り返ると、日本は国策で海外に移民を送り出した国だった。(中略)
「『移民』へのマイナスイメージが広がるなか、多くの人が歴史を知る必要を感じていると思います」

p.6

ハワイやブラジル、満州など、移民を送り出す側だったことを忘れてはいけません。


ウィスット・ポンニミットの「マムアンちゃん」はいつもちょっと哲学的なメッセージを含んでいますが、今回はシンプルかつ心を動かされました。前半だけ引用します。

自分の「好き」を信じよう
自分の道を信じよう

p.15


南アフリカ出身のダンサー、ヨハネス・ラデベの言葉も良かったです。

「心を変えれば、世界も変えられる――それが、このショー(引用者註:ミュージカル『キンキーブーツ』)が伝える最大のメッセージです。ありのままの自分も他人も受け入れること。まさに、今の世界に必要なものだと思います」

p.17


「池内了の市民科学メガネ」も面白かったです。

指紋は、すでに紀元前6000年頃に粘土板上に拇印を押し付けて個人認証を行い、紀元前3000年頃には職人が自らの作品だと主張するために署名代わりに使っていたそうです。

p.18

粘土板は英語でタブレットですが、現代人はiPadなどのタブレットで指紋認証をしますよね。同じことを6000年前の人がやっていたとは!


指紋は赤ん坊の時期にすでにできていて、大人になるにつれて指が大きくなって形が変わっても、子どもの頃のまま一生変わらないので「終生不変」と呼ばれています。また、すべての人の諮問は異なっていて、同じ指紋を持つ人は他にいないので「万人不同」であり、一つの指紋から特定の人物を同定できることがよく知られています。他にも、指先が傷ついても同じ模様が再生すること(原型再生)や、線と線の間隔は常に等しい(均一走行)、といった特性があります。

p.18

ふむふむ。


人間以外に指紋があるのはゴリラやオランウータンやチンパンジーのサルの仲間と、もっぱら樹上生活をするコアラなのです。(中略)イヌやネコの足指の肉球には指紋はありません。

p.18

そうなんだ!


今号から始まった「布施祐仁の点滅する平和のシグナル」も勉強になりました。

在日米軍基地は今も昔も中東の戦場と直結している。日本は、米軍に基地を提供することによって、米国が中東で行う戦争に加担してきたと言える。
日本では、在日米軍は日本の防衛のためにいると捉えている人が多いが、実は米国はそうは考えていない。「米軍が日本にいるのは日本を防衛するためではない。米軍にとって日本駐留の利点は、必要とあればいつでも出撃できる前方基地として使用できることである」――これは、1992年3月5日の米下院軍事委員会で、当時のディック・チェイニー国防長官が述べたことだ。
米軍は、日本の防衛のためではなく、いつでも素早くアジアや中東に出撃できるようにするため、距離的に近い日本に基地を置いているというのだ。

p.19

心に留めておくべき事実です。


建築家の岡啓輔さんの「蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)」は、実物を見てみたいです。


「もともと建築の世界では設計者と職人は対等でした。ですがモダニズム建築以降、多くの作り手がかかわっているのに、現場の職人たちの考えや手の跡は消されるなど、建築は建築家の思想を体現することで評価されるようになりました。でも、そうやってつくられた今の建築はどれも同じで素っ気なく、職人も軽んじられています」

p.20

そうですね。


「産業革命を批判し、手仕事を重視した評論家ジョン・ラスキンは”楽しんでつくったものは美しく、嫌々つくったものは醜い”と考えました。自分だけでなくみんながそう感じることで、蟻鱒鳶ルも美しい建築にしたかった。奴隷のように働いては、良い建築はできません」
建築はもっと豊かであらなければ――。つくる喜びを体現し、それを共有すること。これが世界をおもしろく、良くしていくと岡さんは考えている。

p.21


「人類を賢くしたのはつくることでした。だから、ここからは”つくりたいものをつくる”時代に向かうべきだと思います」

p.21


「この建築は23世紀まで建っている予定ですから、僕が死んだ後も長く大切にしてくれる方に引き継がないといけません。博物館になるのもいいなと思っています。そして、ガウディのサグラダ・ファミリアを引き継いだ弟子たちのように、次の世代の人たちに維持していってほしいですね」

p.21

上記の引用したネット記事によれば、使われているコンクリートは、岡さんの独自調合の200年持つものだそうです。公共の建築物にも、ぜひそのコンクリートを使ってほしいものです。蟻鱒鳶ルが、23世紀まで残りますように。


「無理せず働き、ちょっと楽なくらいでやめておく」ことが大切だと話す岡さん。

p.21

これ、心に留めておきたいです。


映画『ホールディング・リアット』の監督のブランドン・クレーマーさんの言葉も良かったです。

「一般の市民はどうすればいいのか。まず、知ることだと思います。僕たちは誰もが、自分の生活、自分の見えている世界というそれぞれの『レーン』=区切られた世界にいます。そのレーンから一歩踏み出してみる。この紛争を、この壁の向こう側から見たら?という別の視点をもつんです。僕たちが、それぞれ別のレーンに閉じ込められているかぎり、他者の痛みはわからない。政府や指導者や独裁者は、他者への怒りを利用して暴力を正当化します。もしも、すべての人が別のレーンの視点をもてば、そこから共感と理解が生まれるはず」

p.23

家族がハマスの人質となったイスラエル人の家庭を描いた『ホールディング・リアット』は、米国では配給されていないそうです。

あるコミュニティからの反発を恐れて、伝えることを躊躇する社会は剣禅でしょうか。

p.23

日本社会にも突きつけられている、鋭い指摘です。



今号も、多くの学びを与えてくれました。


『ビッグイシュー日本版』のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。


コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。


もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。


見出し画像は、今号の封筒に貼られていたシールです。「小商い」で発送作業をしてくださった杉浦さん、いつもありがとうございます。




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