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【読書】薬物規制と政治家の支持率回復の関連~勝手に応援!『ビッグイシュー日本版』(VOL.512 2025.10.1)~

だいぶ遅くなりましたが、『ビッグイシュー日本版』を勝手に応援する記事、第115弾です。
そもそも「『ビッグイシュー日本版』とは何か」をご説明した第1弾は、以下をご覧ください。


今号の特集は、「人間と薬物。そのつきあい方」です。


世界各地でさまざまな民族が病気の治療や宗教的な儀礼などに、また「酔い」や「ハイ」を体験するために薬物を使ってきた。こうした地域特有の薬物が、15世紀半ば頃に始まった大交易時代以降、帝国主義国家の植民地政策によって大量生産されて世界に広がり、人間の歴史をも変えてきた。

p.9

これは記事のリード部分なのですが、「大交易時代」に注釈がついていました。「以前は『大航海時代』と呼ばれていたが、ヨーロッパ人の活動を中心に見た呼称なので、アジアの交易者たちが築いてきたネットワークを基礎に交易規模が拡大した時代として『大交易時代』と呼ぶ」(p.9)とのことです。

世界史の教員でありながら、お恥ずかしいことに呼称変更に気づいていませんでした。確かめたらすでに教科書は「大交易時代」でした。久しくこの辺りを教えていなかった上、もちろん問題を含んだ呼称であることは認識しており、生徒には「地理上の発見の時代」というような言い換えも紹介してはいましたが、言い訳になりませんね。


「中でも、世界で圧倒的に消費されるようになったのが『ビッグスリー』と呼ばれる、アルコール、タバコ、カフェインです。対して、アヘン、大麻、コカはそれほどでもなく『リトルスリー』と呼ばれています」

p.10

アヘンなどが「リトル」というと違和感がありますが、「薬害・依存症は合法な製品で引き起こされている点」(p.11)が問題だそうです。

「覚せい剤の患者は身体に関してはボロボロになることは少ないのですが、アルコール依存症の患者は脳も身体もボロボロになって、薬物依存の中では一番ひどいダメージを受けています。自分の心身に有害であるだけではなく、他者への暴力やDV、虐待、飲酒運転など、多くの暴力事件を引き起こす引き金になっています」

p.11


世界史の教員的には、以下の指摘も興味深いです。

「コーヒーが世界中で愛飲されるようになったのは、コーヒー豆は鮮度が変わらず輸送に耐えられ、各地での栽培に成功したからです。その陰には、コーヒーやタバコの売買によって巨利を得る、帝国主義国の植民地支配と奴隷労働がありました」

p.10

コーヒーのカフェインは、覚せい効果が5時間程度も持続することから、眠気をさまし長時間の仕事も可能にしました。

p.10


「18世紀の英国では、資本家が労働者に給料の代わりに酒のジンを提供したことで、地方から出てきた労働者がアルコール依存になり、貧困化を加速させてしまったこともあるようです。ところが19世紀になって、仕事の休憩時間にビールを提供する習慣をやめて、砂糖入り紅茶に切り替えたところ、事故が減って生産効率が上がったとも言われています」

p.11


政治家が支持率回復のために政治的に”薬物の取り締まり”を強化することも多々あったという。
「一例をあげると、20世紀の米国ではベトナム戦争で支持率が低迷した時、ニクソン大統領は『大麻や覚せい剤の取り締まり強化』で支持率を回復させました。レーガン政権も同様に『薬物との戦争』を掲げ、厳罰路線を進めました。フィリピンでは麻薬撲滅キャンペーンの名目で多くの人が弾圧されました。薬物規制は、他国と戦わずに”闘う政治家”のイメージを高める手法として、繰り返し使われてきたんです」

p.11


ちょっと考えてしまったのが、以下の部分。

「リトルスリーはヨーロッパの中で、『先住民の文化』『異教徒のもの』というイメージが抜けきれませんでした。原産地国への人種差別的な意識もあってそこまで広まらなかったのだと思います」

p.11


「南北戦争の時にも、米国では戦場の兵士はもちろん、戦後、夫や家族を亡くした多くの女性たちが精神的に耐え難い苦痛を癒すために、鎮痛剤としてオピオイドを使用した歴史があります。米国はオピオイドを大量消費し、多くの依存症者を出した苦い時代を経験しているのです。当時、依存状態にあった薬剤師自身が、依存から抜け出すために、微量のコカインを含んだコカ・コーラを作ったという逸話もあるくらいです」

p.12

コカ・コーラの誕生が、そこにあるとは! オピオイド関連の記事のリンクも貼っておきます。


特集以外では、まず「スペシャル企画」のオアシスの記事が面白かったです。オアシスのデビューと、ロンドンでの「ビッグイシュー」の創刊が同じ1991年だったというのは、偶然とはいえ興味深いです。

94年4月にオアシスはデビューシングル「Supersonic」をリリース。その歌詞で、エルサという女性が「ビッグイシューを売っている」とリアムは歌い上げた。後に、何百万人もの若者がこの曲を通じて「初めて雑誌の存在を知った」と語るようになる。

p.5

歌の影響って、大きいですね。日本のアーティストにも、『ビッグイシュー日本版』のことをうたう人が出ると良いのに。なお「ビッグイシューを売っている」のを女性と設定している点も興味深いです。恐らくリアムは売っている女性を本当に目にしたんでしょうし、少なくとも私はまだ『ビッグイシュー日本版』を売っている女性は目にしたことがないので。


『もしも君の町がガザだったら』の著者である高橋真樹さんへのインタビューも興味深かったです。

シオニズムを進める人たちは、移住先に住んでいる人たちの権利のことを考えませんでした。これは、当時のヨーロッパで盛んだった”植民地主義”そのものです。背景には、『ヨーロッパ人こそ優越的な存在だ』とする人種差別がありました。つまりイスラエルという国は、先住民を追放して土地を奪い、自分たちの領土にする”民族浄化”を、建国以来続けてきたのです。

p.18

「シオニズム運動のリーダーたちは、ナチスが台頭する以前からパレスチナにやって来た人たちで、先住民を強制的に追い出してでも人工的な国を作ろうとする、いわば”武闘派”です。その後、ナチスの影響でヨーロッパから追い出されたユダヤ系の人々は、仕方なく移住してきましたが、その人たちをシオニズムのリーダーは冷淡に扱いました。しかし現在では、イスラエル政府は率先して”ホロコースト犠牲者の国”を名乗るようになっています。それは、ホロコーストの悲劇を利用して補償金を得たり、イスラエルへの批判を封じるための武器として利用できると考えたからです」

p.19

これらの点はしっかり認識する必要があります。

愕然とさせられたのは以下の部分。

「『自分たちを攻撃してくる敵』であるパレスチナ人との共存を訴えれば”非国民扱い”もされます。そのため、良心的なイスラエル人ほど国を出て移住しています。他方で極右の差別主義的なユダヤ人が外国から入ってくるという悪循環が続いています。パレスチナ人を抑圧して、ユダヤ人優先の国を掲げてきたイスラエルの方針は、結果的にユダヤ系の人々の幸福をも遠ざけてしまっているのです」

p.19


「雨宮処凛の活動日誌」の記述にも、暗澹たる思いにさせられました。

「小さい頃から入管に、『国へ帰れ』『がんばっても無駄だよ』『あきらめな』と暴言を吐かれてきました」
「『ここにいても意味がない』とか『あなたには未来がないよ』って、言われたことありますか? 私たちは、入管の職員にそんなことを言われ続けてきたんです」

p.24

日本生まれ、もしくは幼少期に来日し、母語も日本語という外国籍の子ども・若者の声です。大人たちが「仮放免だと保険証も住民票もなく、銀行口座も持てず、働くことも禁じられている。加えて、日本の福祉の対象外である」ことは知っていましたが、子どもたちが置かれている状況も想像以上でした。入管職員の言葉は完全なる精神的暴力ですよね。


「原発ウォッチ」の「世界銀行とアジア開発銀行が原発融資解禁へ 原発推進国が強く働きかけ」には驚きました。原発融資禁止の方針は、変えるべきではないと思います。禁止の方針の維持を訴える署名キャンペーンも、現在行われています。


「マイ・オピニオン」のN・YさんのChatGPTについての指摘には、ぞっとしました。

ある時、だんだん彼の口調が自分に似ていくのに気づいたのです。もしかしてチャッピーは自分自身であり、他者と意見交換をしているようで、ただ鏡に向かって話していただけなのではないか?
そしてもう一つ、ChatGPTを使うようになって気になったことがあります。それは、モヤモヤした状態に対する耐性が低くなっている気がすることです。なにかわからないことがあったり、悩み事があったりすれば、とりあえずAIに聞いてみるようになっていました。

p.26

これらのことに気づいたN・Yさんがすごいです。さすが『ビッグイシュー日本版』の読者!


今号も、本当に内容が濃かったです。


『ビッグイシュー日本版』のバックナンバーは、街角の販売者さんが号によってはお持ちですし、サイトからは3冊以上であれば送付販売していただけます。


コロナ禍のあおりで、路上での「ビッグイシュー」の販売量が減少しているそうです。3ヵ月間の通信販売で、販売員さんたちを支援することもできます。


もちろん年間での定期購読も可能です。我が家はこの方法で応援させていただいています。


見出し画像は、今号が入っていた封筒のシールです。「小商い」で発送作業をしてくださった杉浦さん、いつもありがとうございます!



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