EOS Rとレンジファインダー用レンズの組み合わせに起因するマゼンタ被りの考察
ミラーレス一眼カメラに昔のレンジファインダー用レンズ(例えばライカM型用レンズ)を装着して撮ると、いわゆる「マゼンタ被り」と呼ばれる写真の四隅にマゼンタ色(明るい赤紫色)が載ってくる現象が発生します。
この現象、愛用のキヤノンEOS Rでは「とりわけ顕著に生じる」ようで、以前から気になっており、原因を少し調べてみました。
マゼンタ被りとは
マゼンタ被りについては過去にも記事にしておりますが、画面四隅にマゼンタ色が載る現象のことです↓

※詳しくは以前に投稿した記事をご参照ください↓
マゼンタ被りの原因
マゼンタ被りを生じさせる要因は様々あり、カメラ本体側+レンズ側それぞれの要因が複雑に絡むことで被りが生じやすくなるようです。
原因1:後玉の突出したレンズ
レンジファインダー用のレンズには、レンズの後玉が飛び出しているような設計になっているものが多く見られます↓

ライカM型に代表されるように、レンジファインダー式カメラは(一眼レフカメラのようなミラーがないため)レンズ後玉をフィルム面の間近まで寄せられる構造になっています。
レンズ後玉をフィルム面(フィルムの感光層)に近接させることで、よりコンパクトで光学的に有利な設計ができることから(とりわけ焦点距離の短い広角レンズでは)積極的に用いられたレンズ設計でした。
しかし、こうした光学設計はあくまでフィルム時代の特性(=フィルムは入射角に強かった)。現在のデジタルカメラでは、イメージセンサー部分には可能な限り真っ直ぐに光が届いて欲しい訳で、レンズ後玉を突出させたレンジファインダー用のレンズでは、センサーに光が斜めに入射してしまい不向きとされています。
原因2:イメージセンサーと光の入射角
前述のように、光の入射角に強いフィルム時代に設計されたレンズと、光の入射角はできるだけ垂直に入ってきたほうが効率がよいデジタルカメラ時代のイメージセンサーでは、そもそも設計思想が大きく異なります。
つまり、デジタルカメラはイメージセンサーの特性上、光の入射角が斜めだと周辺減光が増え、四隅が甘くなり、色ずれ・色被り・像流れが出やすくなるとされています。
以前の記事でもご紹介しましたが、「カメラのナニワ」さんのサイトに記載された解説が端的で分かりやすいです ↓
・主にデジタルカメラのイメージセンサーの構造に由来する問題で、フィルムでは少なくとも不自然すぎる色被りは発生しない。
・後玉の出ているレンズをつけると、イメージセンサー周辺部が光を受け取りにくくなる。そのため、センサーが光を正常に捉えられず、不自然な色に記録されてしまうことが多い。
・デジタルカメラでも、イメージセンサーが裏面照射式になっていると集光効率が高いため色被りが発生しにくい。
とは云え、表面照射式でもマゼンタ被りの出難い機種もあれば、出やすい機種もある、表面照射式だがライカM10とBiogon T* 28mm F2.8の組み合わせは相性が良いようだ、、、等々、結局のところレンズとデジタルカメラ本体の相性の問題で、裏面照射式だからOKという単純な話でも無い様子。
原因3:EOS Rは、とくに影響が出やすい
色々調べていて特にガッカリだったのは、愛用するEOS Rでは、とりわけマゼンタ被り等の影響が出やすい傾向にあるとのこと。
もう少し正確にいうと「EOS R」、「EOS RP」、「EOS R6」がマゼンタ被り等の影響が出やすいと言われています。
「EOS R」のイメージセンサーは、一眼レフ時代の「EOS 5D Mark IV」のセンサーをベースにアップデートされたものであり、「EOS RP」のイメージセンサーは同じく一眼レフ時代の「EOS 6D Mark II」をベースに、「EOS R6」も一眼レフ時代の「EOS-1D X Mark III」をベースにアップデートがされたセンサーとなっている等、一眼レフカメラ時代のイメージセンサーを引きずっている設計となっています。
これらイメージセンサーは表面照射式である上、前世代の「オンチップマイクロレンズ」設計であり、斜めから入射する光(特にレンズ後群からリアエレメント経由で強い角度を持ってセンサー端に到達する光)を効率的に受光するのを苦手としています。
「オンチップマイクロレンズ」とは、光を効率よく受けるために画素(1つ1つの光を受ける点)の上に置かれた微小レンズのこと。

上記、池上通信機株式会社のWebサイトより図を引用させていただきましたが、画素1つ1つに超小型レンズを付けるとは、なかなかエグい技術ですね。キヤノンは独自の「デュアルピクセルCMOS AF技術」を採用していますが、ここにオンチップマイクロレンズ設計が採用されています。
EOS Rシリーズの初期ラインナップは、「EOS R」(2018年)→「EOS RP」(2019年)→「EOS Ra」(2019年)→「EOS R5」と「EOS R6」(2020年)と変遷していきますが、ミラーレス機専用のイメージセンサーが初めて搭載されたのは「EOS R5」でした(前述のように同年リリース「EOS R6」は一眼レフカメラ時代の設計)。
EOS R5以降は影響小
ミラーレス機専用のイメージセンサー「EOS R5」以降、最新式のマイクロレンズ設計となり、斜めから入射する光への耐性も強化され、マゼンタ被り等の影響も大きく低減します。
そのため、普段は最新RFレンズや、EFレンズで快適な描画を愉しみつつ、気が向いた際にオールドレンズや、レンジファインダー用の中華製レンズで遊ぶ等したいキヤノンユーザーなら「EOS R5以降を買う」(ただしR6は除く)と覚えておきましょう。
裏面照射式なら、尚良し
加えてイメージセンサーが裏面照射式であれば、更に集光効率が高いため、色被りが発生しにくい傾向にあります。
そうなると、キヤノン機なら「EOS R5 Mark II」になってきますね。
まとめ
ミラーレス一眼になり、オールドレンズや他マウントレンズを柔軟に扱えると思ったものの、複雑に要素が絡み合い、とりわけレンジファインダー用レンズでは難儀なことが分かります。
中でも愛用するEOS Rは一眼レフカメラの時代を引き摺った古いイメージセンサーの設計故に、その影響度が大きいようで個人的には残念でした。
EOS R、性能的には満足しているのですが、なかなか簡単にはいかないもので。〔了〕
※余談:
上記、EOS R等のセンサー特性などヒントが聞けないか「キヤノンフォトハウス銀座」を訪ねたのですが「カタログに書かれている以上のことは分かりませんし、答えられません」と、にべもない返事。
・・・そういうとこだぞ、キヤノン。

