「コミック乱ツインズ」2026年1月号(前編)
当たり前ではありますが、雑誌の号数の上で2026年という文字が踊っているとドキッとさせられます。「コミック乱ツインズ」も、もう2026年1月号。創刊23周年記念ということもあってか、特別読切はありません。表紙&巻頭カラーは『そば屋幻庵』です。
今回も印象に残った作品を一つずつ紹介します。
先月号の紹介記事はこちら。
『そば屋幻庵』(かどたひろし&梶研吾)
というわけで表紙&巻頭カラーの本作は、ありそうでなかったコラボ回。田舎から出てきて一生懸命働いても、要領の悪くて奉公先をしくじってばかりの若者・浩市と、最近評判の蕎麦屋・富士そばの主人・丹助を中心としたエピソードです。
内容的には、幻庵を訪れた浩市の苦境を知った玄太郎が一肌脱いで――という人情話(メインとなる蕎麦が相変わらず旨そうです)。
が、早さで評判だったり、主人の趣味が小唄(歌)だったりする富士そばと聞いて、「ん?」と思えば、なんと今回のコラボ先ははあの富士そば。
確かに表紙に「名代富士そばと幻庵が出会う!!」とありましたが――梅沢富美男さんとコラボしたこともあったから、それよりはそば同士距離が近いといえるかもしれません。
『前巷説百物語』(日高建夫&京極夏彦)
「かみなり」第三回は、前回とうって変わり、物語が大きく動き出すことになります。
ゑんま屋の諸事手伝いである縄面方の巳之八に呼び出されて、林蔵とともにゑんま屋に向かった又市。しかしゑんま屋の店の前はなにやら人だかり、そして店に近づく前に鳥見の旦那こと山崎に呼び止められ、ゑんま屋には行くなと強い口調で止められます。
町外れの庚申堂で再び山崎と落ち合った又市と林蔵が聞かされたのは、お甲と角助が昨晩何者かに拐かされ、簀巻きになった角助のみが店に戻されたという事実。
そして角助の身には、あの又市たちに恥をかかされて腹を切った立木藩留守居役・土田の一件のかわら版が置かれていたのです。
何者かによってあの一件にゑんま屋が関わったことがばれ、意趣返しをされていると推理する山崎。その時、巳之八が庚申堂に現れるのですが……
かくして最大の危機に瀕することになった又市たち。自分たちの正体がばれて――いわゆる仕事人もので、自分たちの裏の顔がばれるのは最大のピンチであることは言うまでもありません――敵の魔手が迫るというのは、ほとんど最終回のような展開です。
『巷説百物語』というシリーズの構成・展開上、又市自身が窮地に陥るというのはかなり稀であるわけで、それがここまで追い詰められるというのは、シリーズ全体を見てもかなり珍しい状況。それだけに今回の緊迫感はただならぬものがあります。
特に今回、仲間の中で一番修羅場をくぐっていそうな山崎が危機感を露わにするというのが、いよいよもって恐ろしさを感じさせます。
ちなみに今回の内容自体は原作に忠実ですが、ゑんま屋近くで又市たちを呼び止めたときの山崎の「……お主ら 死ぬには若い」という台詞や、庚申堂に向かう前に時間潰しするも落ち着かない又市の姿などは、この漫画版オリジナルのはず。こうした細かい描写の積み重ねで、緊迫感を盛り上げていくのはさすがだと感じます。
そして絶体絶命の状況の中、又市の舌先三寸が――というところで次回に続きます。
『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
自らの力を考えない浅慮が原因とはいえ、直家と小早川隆景の二人を敵に回すという、あまりにも辛い状況になってしまった三村元親。これまで散々、自分が正義、のポジティブ思考で頑張ってきた元親ですが、ついに正義が滅びる日がやって来ます。
前回も触れたように、完全に直家のアンチテーゼのためのキャラという感じでしたが、ここまで来ると、やはり哀れを催すものがあります(最期はさすがにギャグ抜きなだけに)。
そして、(互いに本音と建前がめちゃくちゃ違う状態で)別れを告げた直家と隆景。備中を平定した直家の次なる相手とは――ここは素直に、やっちゃえ!! と思える相手だけに、この先が楽しみです。
長くなりますので二回に分けます。
