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「コミック乱ツインズ」 2026年2月号(その三)

 「コミック乱ツインズ」2026年2月号の紹介も今回でラスト。今回は『前巷説百物語』と『ビジャの女王』を紹介します。

これまでの紹介記事はこちら。


『前巷説百物語』(日高建夫&京極夏彦)

 「かみなり」編も第四回となり、ついに物語は冒頭の時点に戻ることになります。そこで又市の前に現れたのは……

 立木藩留守居役・土田を懲らしめた一件によって何者かの恨みを買ってしまったゑんま屋一味。角助は半死半生、お甲は拐かされて行方知れずという状況の中、町外れのお堂に潜んでいた又市・林蔵・鳥見の旦那の前に、ついに謎の殺し屋たちが現れ――という緊迫した状況から今回は始まります。

 鳥見の旦那はともかく、又市と林蔵は戦闘力についてはほぼゼロ。それ以前にお甲が敵の手に落ちているのですから、抵抗のしようもありません。しかしこの状況で、なんと又市は相手と口八丁で渡り合ってみせるのですから、頼もしいというかやけっぱちというか……

 と、ここで大男の背負子に据わった老人というえらいキャラの立った人物が登場します。これが相手の頭目のようですが――この辺りは完全にこの漫画版のオリジナルのキャラクター。
 「○○ずら」という口調など、いかにも漫画的ではありますが、全く氏素性のわからないのが不気味であった小説版に対して、これはこれで得体のしれなさを感じさせる存在といえるかもしれません。

 いずれにせよ老人との駆け引きで五日を稼いだ又市は、その間にゑんま屋鏖殺の依頼を差し戻してみせる、それが叶わなければ自分が仲間の名前も何もかも全て語るという条件でひとまず解放されるのでした。
(ここで鳥見の旦那はもちろん、林蔵も慌てず騒がずなのが実に格好良い)

 ちなみにここで老人が焚いている線香について聞かれた際に、又市が父親が線香に煩かったとか墓守を妹がやっていると話すのですが、これは初耳なので口八丁のうちなのでしょう。

 そしてどうなったかといえば、この「かみなり」冒頭の状況になったわけなのですが――その又市の前に、何故か彼の素性を知り尽くしている謎の渋いヒゲ親父が現れます。
 それだけでなく、何故かこの一件の裏を知り尽くしているこの男が、真相を語り始めて――と、またここでかなりのオリジナル展開が入るようですが、それは次回。



『姉妹倫々裏づとめ 紅と藍』(叶精作&天沢彰)

 姉妹義賊の紅虎子と藍龍子を描く本作、これまでクライマックスで二人が悪人のところに乗り込むと、次のページではもう事が終わっているというパターンにちょっと驚いてしばらく取り上げていなかったのですが――最近はパターンから外れたエピソードも展開されています。

 さて、今回のメインとなるのは姉妹ではなく、姉妹の幼馴染の定町廻り同心・盆野倉之助。その名前から連想されるような(?)冴えない外見の昼行灯ながら、なかなかの味のあるキャラなのですが、今回はその倉之助の過去に絡んだ物語となります。

 最近倉之助が何かと目をかけている独居老人のぼろ蔵――名前も過去も忘れたこの痴呆老人は、しかしかつて凶悪な盗賊として知られた黒蝮の善九郎だったのです。
 同心となって初めての捕り物で善九郎に手も足も出ず、命乞いまでして逃げ出した過去があった倉之助。その後善九郎を捕らえるべく執念を燃やしていた倉之助が、つい善九郎を見つけた時には、相手は既にぼろ蔵になっていたのです。

 もはや奉行所にも相手にされないぼろ蔵を善九郎として捕らえるため、彼が最後の仕事で奪った金の在処と、盗賊仲間を探す倉之助ですが……

 同心と惚けてしまったかつての悪人というシチュエーションは、あるいは他の作品もあるかもしれません。しかし今回は昼行灯で人間味のある倉之助を主役にすることで、独特の味わいを生み出しています。
(姉妹は事態打開のきっかけになるものの、あくまでも倉之助のフォロー役に回るのも、いい味を出しています)
 ラストの倉之助の述懐の物悲しさが、余韻となって残ります。



 次号は表紙&巻頭カラーが『寿司銀捕物帖』、特別読切として鶴岡孝雄『夜明けの淵』が掲載予定です。

これまでの紹介記事はこちら。


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