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「コミック乱ツインズ」2025年4月号(その二)

 「コミック乱ツインズ」2025年4月号の紹介の続きです。

その一はこちら。


『江戸の不倫は死の香り』(山口譲司)

 どちらかというと町場が主人公となることが多い本作ですが、今回は大須藩(伊予)の(おそらくは勘定方の)武士・香川という、武家社会真っ只中の人間が主人公。国元に残してきた二回り以上も年若い妻が、幼馴染の百姓と駆け落ちしたことを知らされた香川は、周囲の声もあり、弟を助太刀に女敵討ちに出ることになります。
 これまで刀など握ったこともなさそうな、しかも妻には多分に情を残している香川。しかし武家社会の「きまり」「法度」を何よりも重んじる彼は、武士の一分のために妻を追い、ついに捕えるのですが……

 エロは最小限に、熟年の武士の姿を追う異色の内容ですが、それだけに作中で描かれる「人間」と「武士」の間で揺れる香川の姿が印象に残る今回。そしてラストに香川を突き動かしたものがなんであったかを――そしてその先に彼を待っていたものを見れば、索莫たる想いはさらに強まるのです。
 正直なところ苦手な内容ながらついつい読んでしまう作品ですが、今回のようなエピソードを見ると、本作の持つ幅広さというものに感心せざるを得ません。

『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)

 勢力伸長を恐れた主君・浦上宗景の謀で、大国・毛利家と対峙することになった直家。かつて破った三村元親と共に現れた毛利第四の矢・元清との攻防はまさに一進一退――この二人、どちらもなんか暗そうなところも含めて(言い方!)好敵手というべきでしょう。
 そしてこの戦いを経ての元清の発案とそれを受けての小早川隆景の答えも、実に意外かつ戦国的でおもしろい(あと、この結果を受けての宗景のリアクションもさらにおもしろい)。
 ラストにはきっちりとオチもついて、戦国大名の階段をまた一歩上がった感がありますが……

『前巷説百物語』(日高建男&京極夏彦)

 第三話「二口女」の第二回は、前妻の子を虐め殺してしまったという武家の後妻・縫からの依頼に、いよいよ又市が本腰を入れて挑むことになります。しかし依頼者本人もどうしたいのか、どうしてほしいのかがよくわからない依頼に、落とし所を見つけられずに又市は悩むことになります。 いつもの仲蔵・林蔵とのやり取りに続き、又市は知恵を拝借すべく、えんま屋子飼いの本草学者・久瀬棠庵のもとを訪れるのですが……

 という中で、徐々に依頼を巡る状況と、その厄介さ、そして不可解さが明らかになっていく今回。原作の時点で非常に会話が多いのは相変わらずですが、それをうまくさばいて漫画として成立させているのも相変わらず――ながら、実は今回はオリジナル要素がかなり多いのがおもしろいところです。

 上で述べたように、又市が仲蔵&林蔵そして棠庵と言葉を交わす自体は原作通り、そして会話の内容の大筋も原作通りながら、そのディテールは大きく異なります。仲蔵&林蔵とのわちゃわちゃ感の高いやり取りを通じた会話の膨らませ方もさることながら、驚かされるのは棠庵との会話のくだりです。
 意外と冗談をいう棠庵――はともかく、そもそもなんだか棠庵先生、キャラが、というかビジュアルがかなり違いませんか!? なんだか意外とワイルドな感じのイケメンに――と思いきや、ここで明らかになる意外すぎる真実。

 結構な大ネタ(?)なので、原作にあったかと思わず読み返してしまいましたが、やはりオリジナルのこの要素、実はこの先の仕掛けの伏線となっているのがおもしろいところです。
 原作ではこの伏線は仲蔵&林蔵のところで描かれていたものの、いささか直球だったのが、ここに移すことで、なかなかユニークな捻りが入ったかと思います。なお、本作では仲蔵&林蔵のところでも形を変えてこの辺りは描かれているので、正確には分割したというべきでしょうか。
(そしてこれだったら棠庵先生、やっぱり無事なんではないかなあ――というのは後々の話)

 しかしラストではさらにオリジナル展開が入って――さて、この先どうなるか、いよいよ目が離せません。


 次号は新連載で――青木雄二プロダクション!? 『エドゼニ』のタイトルで金融コメディが描かれるというのですから、どうなるかまったく予想できません。乱ツインズは、結構な頻度で意外な作家が登板するのですが、さすがにこれは意外すぎます。
 と思いきや、「コミック乱」の方では、伊藤尋也の『土下座奉行』をRIN(笠原倫)が漫画化するという直球にも程がある組み合わせがあったりして、こちらもひっくり返りましたが……
 今月は「コミック乱」の方も要チェックです。

その一はこちら。

前月号の紹介記事はこちら。


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