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Chapter8. 微小発酵体の自律性⑤

↓の続き

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これら事実を慎重に吟味した先に微小発酵体理論がその純粋かつ単純な表現型だと確信するに至れば、細胞自体が既に器官だと認識するだろう。細胞は栄養現象を通じて微小発酵体の恒常的かつ規則的な化学的、生理学的機能を維持する為の条件を常に実現している。また、(ある種の細胞、卵黄、血液の)微小発酵体分子顆粒も独自の機序によりこの恒常性と規則性の条件が実現されている。これらの条件が破綻すると、ビブリオニエンスに進化するだろう。

微小発酵体の研究史で最も議論を呼んだ事実は、まさにそのビブリオニエンス進化を特徴とする解剖学的自律性である。平時の存在条件が破綻した場合にのみ発現するこの能力は、その機能の不規則性と異質性の原因となる状態変化が生じたことを示す最適な証拠である。

実際、様々な解剖学的状況でも微小発酵体は形態学的類似性を維持している。各々の細胞、器官、解剖学的体系で本有的に機能し、化学的にも生理学的にもその独立性を保存している。同時に、アントワーヌ・グロ博士の巧妙な科学的表現を拝借すれば、微小発酵体はその協調作用で以て、分子顆粒や細胞、器官、諸々の解剖学的体系全体の有益性の為に機能し、それにより生理的健康状態が維持される。

だが、何等かの病因から器官に特定の変化が生じ、例えば聴診や打診で脾臓体積の増加が確定される場合、グロ博士曰く、生体全体や疾患には失調や機能的障害がある。特筆すべきは、博士が微小発酵体理論を理解するや否や、躊躇なく微小発酵体が失調の解剖学的因子だと認識した点である。では失調は如何にして発生するのか?

疾患の引き金となる原因のうち、寒冷刺激は最も頻繁に指摘、言及される。寒冷刺激は温度の低下であり、それ自体が印象でもある。痛覚の印象を受容するのは生物のみだと強弁する意図はないが、物理現象には固執する。だが、微小発酵体は温度変化に極めて感受性が高く、地質的微小発酵体までもが40~42℃(104~107℉)付近の温度でのみ正常に機能するほどである。実際、サンス地方の白亜微小発酵体は38℃(100.4℉)未満では澱粉糊を発酵しなくなる。また、卵は適温を極僅かに下回ると鶏を生まず、熱が均一に浸透しない場合には腐敗が始まるほか、ダレステ Daresteの怪物が誕生することになる。そして培地の中性化や酸性化など、孤立的に活動する微小発酵体の活性に作用する環境の影響は多様である。孤立した微小発酵体に生じる事象は卵や生体の微小発酵体にも生じる。空気接触を断絶しても卵は鶏に成長せず、また別の変化を起こす。何等かの理由により肺胞や肺上皮細胞が空気と接触できない、或いは不十分な接触に晒された場合、肺結核の発症と共に細胞が微小発酵体に還元され、石灰化した結節でのビブリオニエンス進化が見出せる。

解剖学的体系の部分的機能不全に起因する失調で解消されない倦怠感が生じる場合、疾患とは解剖学元素たる微小発酵体の急激な存在条件の変化が生じた帰結であり、この環境上の変化は解剖学的な微小発酵体のビブリオニエンスやバクテリア進化を招く以上は、失調を顕在化させるに十分である。従って、ダヴァインが徹底追究した「脾臓出血」(炭疽病)と名高い疾患では、病的微小発酵体が、この学識ある医師がBactéridiesと呼ぶものへの進化に収束し、血液細胞は特徴的な変化を受けることになる。Bactéridiesは病気の原因ではなく作用の一つである。だが病的微小発酵体に由来し、これを受容し得る動物へとその病的状態を伝染可能である

従って動物質の変質は自然発生的であり、ピドゥー Pidouxが簡潔に表現した古代の格言が正当化される。「疾病は内より生まれ、内にある。」

一方、本書で頑健に確立されたこの自然法則に無知なパスツール氏がこの格言にある真理を否定するのは必然であり、疾患のパンスペルミア説を想像することになる。正に氏がアプリオリに発酵のパンスペルミア説を認めた如くにである。

かつて自然発生論者であったパスツール氏がこの結論に至るのは必然でしかなく、何故なら氏は生理学者でも医師でもなく、比較科学の見識も持たぬ化学者に過ぎない。

だが驚くべきは、氏が医師達や科学界でこの偏執的な理論体系の勝利を勝ち取り、微小発酵体理論を否定させるに至ったことである。例えば、とある教養ある医師がパスツール氏の基本命題を(反論の為に)以下の通りに要約している。

病原微生物は常に体外に由来し、種を構成し、世代から世代へと遡れば、いずれ世界の起源へと到達する。

高名な外科医ヴェルヌイユ Verneuilは、”特発性破傷風”など存在しなければ、”特発性”天然痘、梅毒、鼻疽、恐水病、結核、脾血(炭疽病)、悪性膿胞なども存在しないと、これを証明済みの定理に認定し、

病原性の問題とは即ち、~ウイルスの別名もある~病原体の侵入がいつ如何なる機序により生じ得るのか、その促進ないし阻害要因の発見に帰結する

と述べている。更に、古代医学と病原微生物医学の相違は「極めて単純かつ微塵の曖昧さもなくこの一点にある」と断言している。

だが外科医ヴェルヌイユの主張は、空中胚種の正体が、かつて消滅した生命体からバクテリア進化を遂げた微小発酵体に他ならぬことを指摘すれば無に帰することになる。医学アカデミーの討論の場でも、通常の空気中から捕集した病原微生物なる存在に基づく疾病分類上の疾患の特定は不可能であり、病的状態にある生物でのみ可能だという私の主張に反論する者はなかった。フィブリン性微小発酵体が経時的に過酸化水素分解能を喪失する如く、炭疽病(脾血)で死んだ動物の血液もまた暫くすると病的状態を伝染しないと、ダヴァインが随分以前に実証済みである。これはあらゆる場合でも同様である。

従って、通常の空気中には病原微生物は存在しないのみのらず、存在し得ないのであり、故に病原微生物医学は根本的に誤謬を抱えているのである。


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