【文学フリマ挑戦】#36-2 9月13日、文学フリマ大阪14当日|第2話「私は、フリーペーパー配布ロボットになった」|MMPP Publishing
昨日の夜、残ったご飯でおにぎり作ってたわ。今、食べよう。
ゴソゴソ……「いただきます」。
いや。用意してる間に食べとけよ。なんで今やねん。
ああ、そういえば。あの本、気になっていたんだよな。
「欲しいなぁ」
せっかく来たんだから、あとで見に行こう。
なんか、そんなこと思っていました。
第2話『私は、フリーペーパー配布ロボットになった』 作:MMP.K
最初の30分。
無。
本当に、無。
人はいる。ちらほらと、目の前を歩いている。隣も、その向こうも、人が歩いている。でも、誰も止まらない。
誰も見ない。私の本には、視線すら来ない。
立ってみる。
また座る。
本を並べ直す。
POPを見る。
立つ。
座る。
時計を見る。
「30分たったねぇ」
誰にたずねるでもなく、呟いていました。
これ、あと5時間ずっとこんなんやったら、どうしよう。そんなことを考えていると、椅子に座ったまま、背中が少しずつ丸くなっていきました。
「む、む、む、暇」
私の本は、まだ一冊も売れていない。というか、誰も見ていない。
ものすごく暇だった。
これは、さすがに何かしなければ。
とりあえず、隣のブースの人。常連様っぽいお方に、たずねてみることにしました。
開幕早々は、だいたいこんな感じで、入口あたりから徐々に人が流れてくるとのことでした。
確かに広い。会場は横幅120メートル、奥行き56メートルほどある。そして、自分のブースは端のほう。
そう聞くと、少し納得しました。
私、だいぶ端っこ。 そら30分くらいは人が通らなくても納得です。
ふと、目の前の対岸にあるブースを見る。
実は、目星をつけていた欲しい本がありました。
「今ならいける」
初めてですし、一人出展なので、ブースを空けるのは少し気が引ける。
でも、通路を渡るだけ。自分のブースは見えています。思い切って、買いに行きました。
そこで、そのブースの出展者が立ち上がり、来場者にフリーペーパーを差し出しているのを見ました。
人が来る。
向かいの人が立っている。
人が近くを通る。
フリーペーパーを差し出している。
ああ、なるほど。
「これか!」
私は、向かいのブースで本を買って、すぐに戻りました。
購入時、まぁおそらく不審者的な対応をしたことでしょう。気になるものを決め打ちだったのです。言い訳です。知っています。出展者様、ごめんなさい。
恐る恐る、真似をしました。
そして時間とともに、私は、フリーペーパーとカードを差し出すロボットになりました。
人が近づくとか関係なく、隙あらば立つ。
人が近づく。
「どうぞ」蚊の鳴くような小声で。
手を出す。
相手の目が、一瞬こっちを見る。苦笑い。手を出しかけて、引っ込める人。受け取ってくれる人。
受け取ってくれたら、
「見ていってください」
繰り返すのだ。
人が来る。
立つ。
どうぞ。
また座る。
そうしていると、ちょっと困ったような顔をする人もいてるんです。
……あれ? これ、やっちゃ駄目なやつなのでは?
周りを見る。みんながみんな、こうしているわけではない。むしろ、私がやたら立ったり座ったりしているようにも見える。
でも、もう始めてしまった。
やるしかない。
立つ。差し出す。どうぞ。その繰り返し。
隣の人、常連様なお方と話していると、大阪の人はフリーペーパーを受け取らないことが多いらしい。
もらえるもんは全部もらっとけ、みたいに思われがちだが、なんとなく自分も納得がある。
ティッシュは、もらう。
チラシは、お得な情報があればもらう。
「ちょっと時間いいですか」の場合は、いくらくれるか聞くわな。
それでいくと、あとでゴミになると思うもんは受け取らない。捨てるのもったいない。
それも大阪という土地柄なのかもしれない。知らんけど。
そんな中で、
「また、全体見てから来ます」
そう言って、去っていった人もいました。私は、あとどれくらい待っていればいいのでせうか?
ちょっと年上の男性が、立ち止まりました。私より、少し上くらいでしょうか。配布している姿を見て、本の中身をパラパラっとめくって、
「頑張ってるね」
そう言ってくれました。
買ってはいない。買ってくれたら、もっと嬉しい。差し出していた手を、少しだけ下ろしました。
「こういうの、スキですよ」
そう言ってくれる人もいました。
買わない。本当に好きなのか。気を遣って言ってくれているのかは分からない。
「ありがとうございます」
今度はちゃんと言えました。
そして。
ついに、最初のお客さんが来た。
手に取ったのは……。
次回につづく
次回、「『誰かに伝えたいショート・ショートがあるんだ』お前が最初か!」を、お送りいたします。お楽しみに!?
▶ #36-3
◀ #36-1 9月13日、文学フリマ大阪14当日|第1話「朝8時、文学フリマ会場に着いた」
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