【書籍紹介】顧客思考の仕事術 AI時代はお客様に会いに行く人が生き残る 田岡凌 著
こんにちは。合同会社マルセロ 代表の駒瀬です。経営者、事業責任者に対する事業及びマーケティングの伴走コンサルティング、壁打ち、月額制顧問等のサービスを提供しています。
本日は、書籍「顧客思考の仕事術 AI時代はお客様に会いに行く人が生き残る」田岡凌 著を紹介します。
AIが標準的な企画やアイデアを大量に生み出す時代において、すべてのビジネスパーソンが成果を出し続けるための原点として顧客思考を徹底的に体系化した一冊となります。
営業、マーケティング、人事、経理、システム、マネジメントなど職種を問わず使える「顧客思考 7つの大原則」を中心に、国内外のヒット事例を交えながら、一次情報と深い人間理解で差別化を図る方法を具体的に解説しています。
第1章:世界の一流が実践する顧客思考
現代のビジネス環境では、AIツールの普及により誰でも高品質な企画書や提案資料を作成できるようになりました。
しかし、そうした「標準化された出力」が溢れる中で埋もれないためには、AIには真似できない「圧倒的な一次情報」と「人間の本音を捉える理解」が不可欠です。
著者は、Amazon、Apple、Googleなどのグローバル企業が成功した背景に、徹底した顧客起点の思考があったことを指摘します。
これらの企業は、会議室の中だけでアイデアを練るのではなく、実際に顧客の生活現場に足を運び、潜在的な不満や諦めを掘り起こすことで革新的な価値を生み出しました。
一方で、多くの日本企業では社内の上司や経営層が「顧客」の代わりになってしまい、本当の顧客の声が見えにくくなっています。
AI時代に生き残るためには、こうした内向きの思考を捨て、顧客の頭の中を起点に仕事を再設計する必要があると説きます。
第2章:大ヒットの裏側にある顧客思考
本章では、Airbnb、Uber、Slack、Canva、UHA味覚糖のグミサプリ、山崎実業のtowerシリーズなど国内外のヒット事例を分析します。
これらの商品・サービスが選ばれた理由は、表面的なニーズではなく、顧客が言葉にできていなかった「深い痛み(PAIN)」や「諦め」に真正面から向き合った点にあります。
たとえばUHA味覚糖は、グミ市場で「もっと長く味わいたい」という潜在ニーズを見つけ、従来の常識を覆す食感を実現。結果として新しいカテゴリーを創出し、圧倒的なシェアを獲得しました。
こうした事例から、顧客の日常を深く観察し、誰も言語化していない課題を見つける力が、ヒットを生む鍵であることがわかります。
第3章:顧客について知っておくべき「4つの現実」
本章では、顧客の本質的な行動原理を理解するための前提知識として、「4つの現実」が解説されています。
これらは、顧客思考の解像度を上げるための基盤であり、ペルソナ作成などの従来手法の限界を超える視点を提供します。
1.情報はあふれている:顧客はほとんどの情報をスルーする
現代の顧客は情報過多の状態にあり、膨大な選択肢の中から無意識に大部分を無視しています。注意資源が限られているため、ほとんどのメッセージは届きません。
2.人は無意識で選んでいる:論理より直感・感情が優先される
顧客の選択は論理的分析よりも、直感や感情に基づくことが多く、無意識レベルの判断が大きな割合を占めています。
3.人は場面ごとに異なる顔を持つ:状況・文脈によって行動が変わる
同じ顧客でも、朝の通勤中、仕事中、休日、初回接触時、継続利用時など、場面によって抱く感情や優先事項が異なり、一貫したペルソナでは捉えきれません。
4.標準的な情報は届かない:BetterではなくDifferentだけが選ばれる
情報過多の中で「少し改善された」ものは差別化できず、「明らかに違う」ものだけが顧客の注意を引き、選択されます。
これらの現実を踏まえることで、顧客理解の前提が変わり、表面的なペルソナではなく、より本質的な洞察が可能になると強調されています。
第4章:顧客思考 7つの大原則
本書の核心部分です。以下の7原則をフレームワークとして、仕事のあらゆる場面で活用できるように整理されています。
①WHO<顧客からはじめよ>:すべての仕事は「誰のためのものか」を明確にすることから始まる。社内の誰かではなく、本当のエンドユーザーを常に意識する。
②PAIN<隠れた課題を見つけよ>:顧客が顕在的に感じているニーズではなく、言葉にできていない深い不満や諦めを探る。そこにこそ革新的な価値の種がある。
③VALUE<顧客主語で話せ>:自社や商品の特徴を並べるのではなく、「あなた(顧客)にとってこれがどう役立つか」を主語にして伝える。
④CONCEPT<ひと言が最強>:複雑な説明は不要。顧客が一言で理解・共感できるシンプルなコンセプトこそが強力な武器になる。
⑤IMAGE<イメージで届けよ>:言葉だけではなく、視覚的なイメージやストーリーで顧客の頭の中に鮮明な絵を描く。
⑥BARRIER<バリアを壊せ>:購入や利用を阻む心理的・物理的な障壁を一つずつ取り除く。摩擦をゼロに近づけることが重要。
⑦GO OUT<顧客に会え>:AI時代だからこそ、会議室を出て現場に行く。一次情報を直接掴む人が圧倒的に有利になる。
これら7原則は、順番に適用するだけでなく、相互に連動しながら回すことで効果が最大化されます。
章内では各原則ごとにワークシートが用意されており、読者が自分の仕事に落とし込めるよう設計されています。
第5章:AI時代こそ顧客に会え
成果を出すためには、顧客と直接対話する「GO OUT」の姿勢が欠かせません。本章では、顧客ヒアリングを実践するための具体的な手法が多数紹介されています。
顧客ヒアリングの8ステップ(準備・アポイント・対話・深掘り・記録・分析・仮説検証・次のアクション)
コーチング技術を応用した本音を引き出す4つの質問技術
コミュニティを活用した継続的な関係構築
特に重要なのは「N=1」の姿勢です。統計データに頼る前に、まずは1人の顧客を徹底的に理解する。その質的な洞察が、後々の量的な拡大につながると強調されています。
また、オンラインインタビューやSNS観察も有効ですが、最終的には「実際に会う」ことで得られる空気感や表情、非言語情報が決定的な差になると指摘します。
第6章:顧客思考の仕事術とキャリア論
顧客思考を個人のキャリアにどう組み込むかを、著者自身の経験を交えて解説。AI時代に顧客思考を武器にすることで、仕事の質と評価が変わり、キャリアの選択肢が広がることを示します。
第7章:顧客思考のアウトプット術
営業提案書、商品企画書、組織改革、人事評価など、具体的な業務シーンへの適用例が示されます。
また、チームで顧客思考を浸透させるための研修方法や、KPI設定の考え方も解説。最終的に「顧客思考」を個人のOS(オペレーティングシステム)としてインストールし、日常の仕事の判断基準に据えることが目指されます。
まとめ
「顧客思考の仕事術」は、AIが仕事を効率化する一方で、人間にしかできない「顧客の本質理解」がこれからの最大の差別化要素になると断言します。
豊富な事例とすぐに使えるフレームワーク、ワークシートにより、読了後すぐに実務へ取り入れられる構成になっています。
特に「顧客に会いに行く」習慣を身につけることで、企画の質が劇的に変わり、成果が非連続に伸びていく。そんな実感を、多くのビジネスパーソンが得られる一冊です。
AI時代を生き抜くための、普遍的かつ最先端の仕事術がここに詰まっています。
ポッドキャスト「グロースの裏側」で、本書をご本人が解説されています。
#8 2冊目出版でたどり着いた答えは「顧客に会え」だった
<駒瀬考察>
田岡さんはキャリアのスタートがネスレ。そこで、ホームビジットを筆頭に顧客志向を徹底的に叩き込まれたことが田岡さんの仕事観のベースになっていると改めて感じました。
私自身も前職で、ベトナム向け調味料開発をリードした際、計10回以上、現地を出張訪問。ホームビジットで買い物に同行、料理の支度を観察し、食卓を共にすることで現地の実態を把握。
別の日には、繁盛している食堂の前で3時間ほど、どんな料理が人気があるのかを観察。まずは現地の消費者感覚を疑似体験した後に、グループインタビューやデプスインタビューを通じて解像度を上げる。
こうしたプロセスを経て、当時(1990年代後半)、ホーチミンを中心とした南部エリアでは液体調味料であるニョクマム(魚醤)が普及していた中、「顆粒状の出汁」の可能性を見出し、ヒット商品に繋げた経験があります。
もし、現地の調査会社を使って、東京から遠隔でアンケート調査を実施しただけでは、「ニョクマムに対する不満と顆粒だしの可能性」を見出すことは困難であったと思います。
昨年7月に独立起業し、BtoB企業を対象にコンサルティングを行っている中で、BtoBマーケターの顧客解像度の低さに驚かされます。
顧客を「リード」という数字に置き換え、「リード獲得数」という自身のKPIにしか関心がない。
リードとカウントしている数字の裏には「実在の人間としての顧客」が居て、彼ら/彼女らがどのように考え、施策に触れてどのように感じ、どのように行動するのかという解像度が極めて低い。
そんなパソコンを通じてしか世界と接続していないBtoBマーケターこそ、本書を読んで、顧客に会いまくって欲しいと切に願います。
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