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「今、どこにいるか」で変わる——卒論・レポートのためのAI使い分け

前回の記事では、生成AI時代に「学ぶ主体はどこに残るのか」という問いを立て、探究プロセスを4つの象限で整理する枠組みを紹介しました。

出典:田澤実 2026「学習者主導のAI伴走型探究学習:4 象限モデルによる理論的整理」
『法政大学キャリアデザイン学部紀要』23, p49-80.

今回は、その4象限と具体的なAIツールの対応について、もう少し踏み込んで考えてみたいと思います。

「AIを使う」と一口に言っても、ChatGPT、Gemini、NotebookLM、Claudeでは、それぞれ得意なことが違います。
どれでも同じ、というわけではありません。

むしろ大事なのは、今、自分が探究のどの段階にいるのかです。
その場所によって、使うべき道具は変わってきます。



1.まず、「今どこにいるか」を確かめる

道具を選ぶ前に、まず確かめたいことがあります。

自分は今、探究のどの局面にいるのか。

まだ問いがうまく言葉になっていないのか。
社会の文脈の中でテーマを広げたいのか。
集めた文献を整理して、論文の形に近づけたいのか。
それとも、最終的に「これで行く」と決める段階なのか。

この確認を飛ばしたままAIを使うと、便利さに流されやすい。
逆に言えば、今どこにいるかが見えれば、使うべきツールもかなり見えてきます。


2.ChatGPT:言葉にならないものを言葉にする

第1象限(内側×拡散)に対応するのが、ChatGPTです。

ChatGPTの強みは、特定のテーマに限られない自由な対話が続けやすいことにあります。
だからこそ、

「なんとなく気になる」
「うまく言えないけど、何かひっかかる」
「でも、何を問いにすればいいのかわからない」

そんな段階の、まだ形になっていないものを受け取るのに向いています。

断片的な体験や感情を入力すると、関連しそうな論点を返してくれることがあります。
ここで大事なのは、その返答をそのまま採用することではありません。

「そういう言い方もあるか」
「でも少し違う気がする」

そんなやりとりを続けることで、少しずつ問いが見えてきます。
問いの芽を探す段階といえます。

ただし、ChatGPTは曖昧な入力に対しても先回りして答えてしまうことがあります。
この段階では、「判断より整理を」「まず確認質問をしてほしい」と伝えておく方が、探索的な対話になりやすいと思います。


3.Gemini:個人的な問いを社会の文脈に置き直す

第2象限(外側×拡散)に対応するのが、Geminiです。

ChatGPTとの対話で問いの芽が見えてきたら、次はその問いが社会の中でどう語られているかを見に行く段階です。

ここで役に立つのがGeminiです。
ニュース、政策、実務の動向など、比較的新しい外部情報を踏まえながら、テーマの全体像を広げていくことができます。

つまり、個人的な違和感や気づきを、社会的な問いへと置き直す作業に向いているわけです。

ただ、Geminiは情報量が多くなりやすいです。
そのため、最初から広げすぎると、かえって論点がぼやけることもあります。

なのでこの段階では、
「直近1〜2年」
「日本に限る」
など、範囲を少し絞って使うこともあると思います。

ここでの目的は、深掘りよりもまず全体像をつかむことです。


4.NotebookLM:文献を根拠にしながら整理する

第3象限(外側×収束)の前半に対応するのが、NotebookLMです。

問いがある程度見えてきて、関連しそうな文献も集まってきた。
そうしたら次は、外部資料を根拠にしながら論点を整理していく段階です。

NotebookLMが強いのは、アップロードした資料の範囲内だけを根拠にして答えるところです。
資料外の推測が起きにくく、しかも出典が示されるので、「本当にそう書いてあるか」を原文で確認しやすいのが魅力です。

Google Scholarなどで集めたPDF論文を入れて、

  • 研究の目的

  • 方法

  • 結果

  • 示唆

  • 限界

といった形で整理したり、複数文献の共通点と相違点を比べたりする作業に向いています。

ただし、NotebookLMの要約をそのまま自分の理解にしてしまわないことが大切です。
要約を手がかりに原文へ戻る。
その往復によって、文献理解は深まっていきます。


5.Claude:論文の骨格を組み立てる

第3象限の後半に対応するのが、Claudeです。

文献の整理がある程度進むと、今度は「自分の論文としてどう組み立てるか」を考える段階に入ります。

ここで力を発揮するのがClaudeです。
長い文章や複数の文書を扱いながら、論点を統合したり、構成案を考えたりする作業に向いています。

文献の整理メモ、自分の問い、仮の主張、自分なりの考えをまとめて入力すると、

  • どこに何を置くか

  • 何が足りないか

  • 主張と根拠がどう対応しているか

といったことについて、有益なヒントを返してくれます。

ただし、ここでも前提は同じです。
提案をそのまま採用するのではなく、なぜこの構成にするのかを自分で考えることが必要です。


6.第4象限は、道具のない場所

ChatGPTにも役割がある。
Geminiにも役割がある。
NotebookLMにもClaudeにも、それぞれの役割がある。

でも最後に残る第4象限(内側×収束)は、どのAIにも対応しません

どの問いを選ぶのか。
この研究を本当に引き受けるのか。
何を書いて、何を書かないのか。

この判断は、本人の人生経験や価値観、倫理観に根ざしています。
AIはここまで来ることができない。
というよりも、ここは人間が手放してはいけない場所だと私は思っています。


7.AIは「何でもできる道具」ではなく、「段階ごとの伴走者」

ChatGPT、Gemini、NotebookLM、Claude。
どれも便利です。
でも、どれか一つで全部まかなえるわけではありません。

4つのツールは、それぞれの探究段階に対応する伴走者です。

今の自分はどこにいるのか。
問いを広げる段階なのか。
社会的な文脈を見に行く段階なのか。
文献を整理する段階なのか。
構造を組み立てる段階なのか。

その位置を確かめながら使う。
それが、AIを道具として使いこなすということではないでしょうか。

次の記事では、AIを使いながらも、研究の主体性と倫理をどう保つか、という問いを考えてみたいと思います。



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