『私という病』 第24話 世間
「群れの中で正しく生きる者ほど、
自分が何者であったかを忘れていく。」
自分を捨てて、何者かになりなさい。
そうすれば、楽しく生きられるわよ。
そう教えられてきた。
そして多くの人が、それを疑わずに受け取った。
あなたは、その才能があるタイプですか。
良い点を取れば、
便利で、快適な人生が用意される。
誰だって、痛みは避けたい。
体は清潔でも、心は泥だらけだ。
患者のためではない。
顧客のためでもない。
正義のためでもない。
すべては、自分の立場のためだ。
人間を演じることに、
慣れすぎた人間たちがいる。
彼らは、特別な能力を持っている。
何も感じないふりをする能力だ。
——それで、本当に人間と言えるのか。
私は、そう問いかけながら、
今日も席に座っている。
何も言わず、
何も壊さず、
何も変えずに。
協調性とは、
社会を円滑にする能力ではない。
壊れるべき場所で、壊れない技術だ。
そして、それを身につけた者から、
順番に、人間であることを失っていく。
最後に残るのは、
清潔な服と、
正しい言葉と、
空っぽの中身だけだ。
世間は、
この「きれいな人間」でできている。
——もし、ここまで読んでくれたあなたが、
少しでも胸に引っかかるものを感じたなら。
この文章を書いている私も、
ここまで読み進めたあなたも、
もしかしたら、
言葉より先に何かを感じてしまう側なのかもしれない。
私たちにとって、
言葉はときどき、
少し遅すぎる。
それでも今日も、私たちは
「世間」という名の椅子に、黙って座り続けている。
ここまで来たなら、
戻ることも、進むこともできる。
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