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『光の感染者』第34話|信念という錬金術

あなたがたは真理を知り、
真理はあなたがたを自由にする。

— ヨハネによる福音書 8章32節

世界には二種類の人間がいる。

真理を知らずに生きる人間と、真理を知ってしまった人間だ。

後者にとって、嘘はもはや通用しない。
なぜなら、それは見えてしまうからである。


連絡は、ないほうがいいのだと思う。

人々はそれぞれ、勝手にうまくやっている。
少なくとも、そういう顔をして生きている。

今日も空は、やけに晴れている。

こんなにも空が澄んでいるのに、私の心は、どうしてこうも曇るのだろうと、少しだけ考えて、すぐにやめた。

考えたところで、どうにもならないことが、この世界にはあまりにも多い。


ただ一つ、確かなものがあるとすれば、それは私の中にある、しつこい信念のようなものだった。

何度も折られた。いや、違う。何度も、自分で折ってきた。

いっそ、最初から持っていなければ、どれほど楽に生きられただろうと、そんなことを、何度も思った。

けれど、それでも捨てられない。

それは、社会の中では不確実性という欠点であり、
同時に、どうしようもなく私そのものだった。


人間とは、不完全なものだ。だからこそ、時にひどく醜く、そして、妙に美しい。

私は、その矛盾こそが、美というものの正体なのではないかと、ぼんやり考えている。


どれほど大切にしていた信念であっても、現実というものは、平然とそれを踏み越えてくる。

抗えない出来事は、確かにある。

それでも、この世界は、どうしようもなく可能性に満ちている。

願いは、叶う。

ただしそれは、自分が思い描いた通りの形では、ないのかもしれない。


人は皆、それぞれに、勝手な「幸せの形」を持っている。

そして、少しだけ厄介なことに、それを他人に押し付けたがる。

「私は正しいことをしている」

そう信じている大人ほど、どこかで誰かを、静かに傷つけている。

私もまた、その一人なのだろう。


人は、現実そのものを見ているわけではない。自分の中にある解釈を、見ているに過ぎない。

世界とは、認識の集合体なのだ。

だからこそ、問題はそこから始まる。


人は、分離の中で生きている。比べ、奪い、優劣をつける。

だがもし、嘘が通用しない世界があるとしたら、どうなるだろう。

言葉よりも先に、その人の意図や感情が、すべて伝わってしまう世界。

取り繕うことも、隠すこともできない。

そんな場所では、きっと人は、正直に生きるしかなくなる。

なぜなら、嘘をついた瞬間に、それがすぐに暴かれてしまうからだ。


誠実であること。嘘をつかないこと。弱い者を守ろうとする、ささやかな正義。

仲間を裏切らないという、当たり前の約束。

それらはすべて、一度裏切れば、簡単に崩れてしまう。

そして結局のところ、すべては自分の認識次第なのだ。


私の考える幸せとは、人間のゴールである「悟り」のようなものだ。別の言い方をすれば、現象としては、すべて同じ場所に行き着く。

それは、聖書の中に出てくる人物なのかもしれないし、あるいは、真理という言葉そのものなのかもしれない。

なぜ自分は生まれたのか。そして、何のために生きているのか。

その問いに対して、明確な答えを持ってしまった人間に、もはや嘘は通用しない。

見えてしまうからである。


もし仮に、この社会の中に、ほんの一パーセントでも、そういう人間が現れたとしたら、

残念ながら、社会のほうが変わらざるを得ない。

嘘が通用しない以上、人間の認識に、社会の仕組みが合わせていくしかなくなる。


歴史を見れば、それは明らかだ。

常に世界は、一部の人間の認識によって壊され、そして、作り替えられてきた。

たとえば、かつて当たり前のように存在していた制度や価値観が、ある日突然「それはおかしい」と誰かに見抜かれた瞬間、それまで絶対だったものは、音もなく崩れはじめる。


私は、誰かの前を走る人間ではない。

せいぜい、隣を並んで走る、伴走者のようなものだ。

顔も、名前も、どうでもいい。

ただ、私の見ているこの世界が、誰かの道の、ほんの小さな手がかりになれば、それでいいと思っている。


私は、この世界のすべての存在に、できるだけ幸せに生きてほしいと願っている。

それが叶うかどうかは、その人自身の認識に委ねられているのだけれど。


人間は、ただの乗り物なのかもしれない。

この不器用な体も、癖のある性格も、すべて込みで一つの機体だ。

ならばまず、自分の機体の癖を知ることから始めるしかない。

若い頃は、ただ前に進むことしかできなかったものが、やがて立ち止まることも覚える。

それもまた、経験なのだろう。


人に点数など、本当は存在しない。

点数をつけているのは、いつだって自分自身だ。

だからもし、どうしても点数をつけたいのなら、最初から、百点をつけておけばいい。


他人は、他人の人生を生きている。あなたとは、まるで別の生き物のように。

時代も、性別も、経験も、何もかもが違う。

それほどまでに、人間は異なっている。


だからこそ、誰かに憧れるのと同じくらい、

自分という存在を、大切にしなければならないのだと思う。


自信を持て、などとは言わない。強くあれ、とも言わない。

ただ、あなたには、あなたとして生まれてきた意味が、きっとある。

それに気づくことは、どんな黄金よりも価値がある。


最初は、間違ってもいい。

「気のせいだったかもしれない」

それで、いい。

その繰り返しが、いつの間にか、あなたの人生になっていく。


そして、あなたにも、いずれ分かる時が来るはずだ。
正しさとは、ただの認識に過ぎなかったということを。

世界を平和にするのも、暗くするのも、世界そのものではない。
常に先にあるのは、あなたの認識なのである。

戦争とは、人間の愚かさを映し出す鏡にすぎない。

だが、愚か者とは、貧しい者のことではない。

自らに力があると思い込み、
人間を支配できると錯覚している者――

その静かな狂気こそを、私は愚かさと呼ぶ。


安心してほしい。

あなたは、他人に裏切られることはあっても、自分自身から逃げることは、できない。

だからせめて、自分の行いだけは、最後まで愛してやればいい。


私を大切にする。

そして、少しだけ余裕があるときに、この世界に、優しくしようと思う。


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