乗る人は7000万人、歩く人は減る金沢・竪町商店街
「金沢は年間乗降520万人なのに、駅から2kmの商店街(商店街再生の参考書 ※広告)では5年で31店が閉店した」という話がSNSで回っている。
JR西日本と北陸中日新聞の公表資料を何度めくっても、この数字の出どころには辿り着けなかった。
本稿の結論を先に書く。新幹線の利用者数がどれだけ伸びても、駅から徒歩15分以上離れた旧市街の商店街には、その恩恵はほとんど及ばない。乗る人の数と、歩く人の数は、そもそも別の指標だからだ。
出回っている「衝撃の対比」は、出典があいまいなまま独り歩きしやすい。確認できる一次資料が語っているのは、もっと地味で、もっと厄介な話だった。
北陸新幹線は本当に「使われている」のか?

これは疑いようがない。開業10年目にあたる2024年3月〜2025年3月の年間利用者は990万1千人、前年比24%増。開業(2015年3月)からの累計利用者は7000万人を突破した。
北陸中日新聞が報じた数字だ。路線としての北陸新幹線は、明確に伸びている。
竪町商店街で何が起きているのか?
金沢の旧市街、竪町商店街を分析した金沢R不動産のコラムによれば、2018年時点の加盟店舗数は10年前と比べて約30店舗減っていた。
「5年で31店」ではない。「10年で約30店」だ。ペースに直すと年3店弱になる。
かりに巷で言われる「5年で31店」が事実だとすると、年6店強のペースだ。竪町の実績である年3店弱の、およそ2倍の速さになる。ただしその前提自体、一次資料では確認できていない。数字は盛られていた可能性が高い。だが、店が減っていること自体は事実として残る。
なぜ「乗る人」と「歩く人」は別集団なのか?
ここが僕は一番面白いと思うポイントだ。**同じ金沢市内でも、新幹線の利用者と商店街の来街者は、重なるとは限らない。**
駅前商圏とは、新幹線利用者が徒歩圏内で消費行動を完結させる範囲のことだ。金沢では、この範囲が概ね駅前再開発エリアに留まり、香林坊・竪町・片町といった旧中心市街地までは及びにくい。
歩いて15分から25分。数字にすれば大した距離ではない。だが人の消費行動にとっては、別の商圏を意味する。
駅の乗降数字がどれだけ伸びても、そこから徒歩20分の路面店に人が流れる保証はどこにもない。
家賃補助はなぜ商店街を焦土化するのか?
竪町の分析には、もう一つ重要な指摘がある。金沢R不動産のコラムは「家賃補助期間内での短期償却が望める業態が集まり、同じ時期に撤退するサイクルを繰り返している」と分析している。
補助金があるうちは出店が続く。補助が切れると、まとまって退店が起きる。これは個々の店の努力不足ではない。制度設計そのものが生む周期的な空洞化だ。
「補助金があれば出店が増える」という前提は、半分しか正しくない。補助が切れた瞬間に何が起きるかまで設計しないと、数年おきに同じ穴が空く。
金沢だけが特別に悪いのか?
ここは慎重になるべきところだ。中小企業庁の令和3年度商店街実態調査では、全国の平均空き店舗率は13.59%で、前回の13.77%からわずかに減っている。「今後増加する」と答えた商店街が49.9%で最多だが、全国的にはむしろ横ばいに近い。
金沢の旧市街が全国平均より深刻な状態にあるのかは、この記事の一次資料だけでは判定できない。竪町のデータも2018年時点のもので、直近の推移は自治体か商店街振興組合への追加確認が要る。
新幹線の利用者数が伸びているまちで、路面店の閉店が続く現象自体は、金沢に限った話ではないだろう。原因が観光地化による地代高騰なのか、後継者不足なのか、それとも別の外的要因なのかで、処方箋はまったく変わってくる。
よくある質問
**北陸新幹線の利用者数は本当に伸びているのか。**
伸びている。開業10年目の年間利用者は990万1千人で前年比24%増、開業からの累計は7000万人を突破した(北陸中日新聞の報道による)。ただしこれは路線全体の数字で、旧市街への波及を保証するものではない。
**竪町商店街は「5年で31店」閉店したのか。**
その数字の一次資料は確認できなかった。確認できるのは、2018年時点で加盟店舗数が10年前と比べて約30店舗減っていたという金沢R不動産の分析だ。期間もペースも、出回っている話とは一致しない。
**空き店舗率は金沢だけ悪いのか。**
断定はできない。中小企業庁の調査では全国平均は13.59%でむしろ微減傾向にある。金沢の旧市街が全国平均より深刻かどうかは、自治体側への追加確認が必要だ。
駅の乗降客数のグラフと、駅から徒歩15分圏の空き店舗率のグラフを、同じ紙の上に重ねてみたことがありますか。
空き店舗率は「商店街実態調査 中小企業庁」で検索すると出てくる。新幹線や在来線の利用者数は、各鉄道会社が「データで見る」といった名前の資料を毎年公開している。
二つを重ねたとき、駅の賑わいと商店街の実態が同じ曲線を描くまちと、そうでないまちがある。あなたの自治体はどちらですか。
※ 出典
北陸中日新聞「北陸新幹線 開業10年」 https://www.chunichi.co.jp/article/1039842
金沢R不動産「エリアを持続的に更新していくために」 https://realkanazawaestate.jp
中小企業庁「令和3年度商店街実態調査」 https://www.chusho.meti.go.jp
#まちづくり #都市計画 #商店街再生 #北陸新幹線 #金沢 #中心市街地活性化 #空き店舗対策
※ この記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。
📡 同じテーマの短い投稿は X でも更新しています → @nagi_cityedit
🍵 記事が役に立ったら、note の「サポート」で応援してもらえると嬉しいです。
**あわせて読みたい**
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

