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渋谷都心10区は着工14.6%減、1000戸消失の証拠なし

「渋谷の再開発で住宅が1000戸単位で消えている」——そう語られることがある。だが渋谷区が公式に示す桜丘口地区の住宅建設目標は、たったの155戸だ。

渋谷区・東京都いずれの公開統計にも、「再開発で住宅が消えた戸数」を集計した一次データは存在しない。渋谷で起きているのは「消失」ではなく、住宅の作られ方そのものの変質だ。




「住宅1000戸消失」に根拠はあるのか




東京都都市整備局の住宅着工統計(令和7年1月分)を見ると、渋谷区を含む「都心10区」の新設住宅着工戸数は2,682戸で、前年同月比14.6%減。一方、区部全体は9,584戸・前年同月比7.1%増と対照的に伸びている。

都心だけ着工が沈んでいるのは統計として読み取れる。ただしこれは単月データであり、再開発が原因かどうかを直接示す集計ではない。「1000戸消失」を裏付ける一次統計は、少なくとも僕が確認した範囲では見当たらなかった。

桜丘口地区はなぜ155戸なのか


渋谷区ポータルによると、桜丘口地区第一種市街地再開発事業(施行区域面積約2.6ha、3街区)の住宅建設目標は「約155戸」。

ここで独自に計算してみる。155戸÷2.6haで、面積あたり約59.6戸/ha――区公表の数字を単純に割っただけの参考値だが、この密度を他地区と突き合わせれば、渋谷の再開発が「住宅をどれだけ本気で残そうとしているか」を測る物差しになる。

市街地再開発事業とは、老朽建物が密集する区域を一体的に建て替え、土地の高度利用と公共施設整備を同時に進める都市計画法上の手法である。戸数を絞ってでも公共性の高い機能を入れる選択は、桜丘に限らず起きうる。

なぜオフィス跡地に住宅が生まれるのか


一方で、真逆の動きもある。渋谷二丁目西地区(施行:東京建物・UR都市機構、2029年度竣工予定)のC街区は、地上41階・地下2階、高さ約175m、延床約63,000㎡のタワーレジデンスになる予定だ。

内閣府の国家戦略特区資料によれば、従前の建物は「みずほ銀行渋谷事務センター」と「東建インターナショナルビル」――どちらもオフィス系の施設で、住宅ではなかった。住宅が消えたのではなく、オフィス跡地に住宅が新設される逆流が、同じ渋谷区内で同時に進んでいる。

桜丘は住宅を絞り、二丁目西はオフィス跡に住宅を積む。同じ渋谷駅圏でも、再開発ごとにロジックが違う。ここに「渋谷=タワマンで住宅が減っている」という単純な図式では説明できない構造がある。

なお2024年7月に開業した渋谷サクラステージ(A街区39階・B街区30階・C街区4階、延床約254,700㎡)も住宅を含む複合施設だが、住宅戸数の内訳は一次資料で確認できなかった。数字の精度にこだわるなら、ここは「不明」のままにしておくべきだ。

渋谷駅は「10年」でどこへ向かうのか


渋谷区は渋谷駅中心地区の概成目標を令和12(2030)年度と公式に掲げている。同駅には鉄道4社9路線が乗り入れ、1日あたりの乗車人数は約140万人。この規模の駅で進む再開発が、住宅を「量」でなく「質」で語り始めているのは自然な流れだろう。

戸数が減って見えても、延床面積や資産価値は増えている可能性がある。 桜丘の155戸は小さく見えるが、老朽建物が密集していた区画がまとまって建て替わった結果の数字でもある。「消えた」と「集約された」は、似ているようで意味が違う。

あなたのまちの再開発は、住宅を消す側か作る側か


自分の自治体の再開発案件を思い浮かべてほしい。施行区域の住宅建設目標戸数と、従前建物の用途(住宅かオフィスか)を並べるだけで、その事業が「住宅重視型」か「用途転換型」かが見えてくる。稟議で使うなら、この二つの数字をセットで出すと説得力が増すはずだ。




**Q. 渋谷の再開発で住宅は本当に減っているのか?**
A. 公開されている一次統計では確認できない。都心10区の新設住宅着工戸数が前年同月比14.6%減という数字はあるが、単月データであり再開発が原因と断定する材料にはならない。

**Q. 桜丘口地区の住宅戸数はなぜ155戸と少ないのか?**
A. 渋谷区の公式資料が示す目標値で、施行区域約2.6haに対する数字。住宅以外の公共・商業機能を優先した可能性はあるが、理由は区の資料に明記されていない。

**Q. 渋谷二丁目西地区の住宅はいつ完成するのか?**
A. 東京建物・UR都市機構の施行で、2029年度の竣工予定と国家戦略特区の資料にある。

自分のまちの再開発を調べるなら、「(自治体名) 市街地再開発事業 施行区域 住宅戸数」で検索すると、自治体ポータルや都市計画審議会の資料が出てくることが多い。従前建物の用途は、国家戦略特区や都市再生特別地区の公表資料に載っていることがある。

※ 出典
渋谷区ポータル(桜丘口地区第一種市街地再開発事業) https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kankyo/toshikeikaku/toshikeikaku-jigyo/shigaichi_saikai_04.html
内閣府
 国家戦略特区資料(渋谷二丁目西地区) https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/tokyoken/tokyotoshisaisei/dai19/siryou16.pdf
東京都庁プレスリリース(住宅着工統計
 令和7年1月分) https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/03/2025030605

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